第2回に続き、貴州省・貴陽の「ビッグデータ産業」の最新事例に迫る。第3回は肥料メーカーが生み出した農業のエコシステムに焦点を当てる。農業ビッグデータビジネスの最新事例と、農業業界に新たに生まれた職業について紹介していこう。株式会社エクサイジングジャパン/翼彩創新科技(深圳)有限公司 CEO 川ノ上和文氏に聞いた。
農業でもビッグデータ活用
――貴陽の農業について課題から教えてください。
貴州の農業における最大の課題は需給バランスのミスマッチです。日本における農協のような組織が存在しないため、各農家が独自の判断に基づき農作物を栽培し、市場への供給に偏りが出る、ニーズの低い農作物が大量に売れ残るなどの問題が発生していました。しかも売れないと、農家が政府に陳情するどころかデモまで起きる。これには政府も頭を抱えていたようです。
過剰農薬の問題も深刻でした。メーカー、サプライヤーが勧める農薬や肥料を農家が盲信して大量利用することに起因していました。こうしたなか福農宝(フーノンバオ)の取り組みには要注目です。ビッグデータを活用して既存事業の強化に成功している好事例といえます。
フーノンバオは農作物生産支援アプリを開発
――フーノンバオの農業でのビッグデータ活用状況は。
フーノンバオは農業メーカーの子会社です。核となる事業は肥料の生産販売ですが、幅広い農業データを扱っています。農家に交渉して土壌データを採取できるIoTを農地に設置し、土壌データ、気候データ、作物育成データなどのビッグデータを収集。種苗や農薬などの取引情報も集約して、「この土壌でこの作物を作るのに適した肥料配分はこちら」といった農作物生産支援を行うアプリを開発しています。最適配分の肥料を作るための機械もリース・販売しているそうです。