デジタルエコノミー大国としての地位を確立しつつある中国。なかでも広東省・深圳は「紅いシリコンバレー」と呼ばれ、日本から進出の動きが相次いでいることは有名だ。この深圳に続く「デジタルバレー」として、勃興の兆しを見せるのが、貴州省・貴陽だ。株式会社エクサイジングジャパン/翼彩創新科技(深圳)有限公司 CEO 川ノ上和文氏に、現地の最新事情を聞いた。
貴陽に注目すべき理由
――貴陽は、中国ではどういう位置付けの都市なのでしょうか?
中国の国家戦略「一帯一路構想」において、西北エリアの開発は急務です。貴陽はこの西北エリアに位置します。中国一山地が多いと言われ、地盤の安定性から地震が少ない地域です。標高が高く、年間を通じて冷涼な気候なため、サーバー冷却コスト削減が期待でき、データセンターの設置に適した環境です。
2015年、中国唯一の「ビッグデータ先導試験区」として認定されました。ビッグデータの試験区は内モンゴルや成都など他にもありますが、先導区は貴陽だけ。貴陽でビッグデータビジネスのモデルを作って、他の試験区へ展開する流れになると思います。
毎年5月に開催されるビッグデータエキスポは国家認定されており、李克強総理も訪れ、習近平主席も毎回メッセージを送っています。ビッグデータ都市として、中央政府からお墨付きがあるのが、貴陽です。
BATと呼ばれるバイドゥ、アリババ、テンセントの中国ビッグ3も、貴陽にデータセンターを構えています。アップルは貴州政府と戦略提携を結び、iCloudのサーバーを政府管轄のCloud下に設置しています。貴陽はデジタルバレー都市としてこれから急速に勃興すると見ています。
2年前の深圳と似た勢い
――急速に発展した都市として、広東省・深圳が有名です。類似点や相違点は?
私は北京、上海、台湾などで留学・就労を経て、2016年から深圳に拠点を置いています。2年前の深圳と、今の貴陽の勢いには規模の違いはあれ、近いものを感じています。
当時は中国が「大衆創業、万衆創新」という政策を発表し、創業ブームが巻き起こっていました。特に深圳は改革開放後「経済特区」として認定され、スマホ産業からドローン産業、そして全国に先駆け行われた公道での自動運転試験などR&Dが活発化、新興産業パークの設立も相次ぎました。さらにはBATも本社や重要拠点を構えています。日本では一部の経済メディアやブログを除いてほとんど報道はありませんでしたが、「深圳はブレークする」と確信していました。