未来の働き方を大予測

AIが進化すると営業も「すき間労働化」する 雇用ジャーナリスト 海老原 嗣生

人材

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

基幹ホワイトカラー業務は当分の間、人が担い続ける

2030年までのAIによる雇用の変化を書いてきた。それはまず、コンピューター内で処理が可能なスペシャリスト領域の雇用を減少させる。一方、製造・建設・サービス・流通分野の単純労働はそれほど大きな雇用減少は起きない。代わりに、肝の部分を機械が担い、周辺のはすっ端な業務だけを人が担当するという「すき間労働」化が進む。そうして、AIが次のステージ「全脳アーキテクチャー型」に進化するころ、単純労働代替ロボットが出現し、製造・建設・サービス・流通分野でも雇用が消失していく。それは、2040年台のこととなるだろう。

さて、ここまでで全く触れられていなかったのが、営業や企画、管理などのいわゆる基幹ホワイトカラー業務だ。これらの仕事は、処理すべき情報が多種多量であり、簡単にAIによる習熟が難しい。さらには、創意工夫・サービス精神・対人感受性などもキー要素になる。前回説明したように「全脳アーキテクチャーAI」は単なる疑似脳だから、そこまでの人間的な感性は備えていない。ただ、AIがもう一段進歩すると、機械自体が感情を持ち、想像や奉仕なども行えるようになるという。そうしたテクノロジーを「全脳エミュレート型AI」と呼ぶ。それは、脳を神経細胞のレベルまですべて忠実に機械で再現したもの、といえばよいだろう。そのためには神経細胞の配線図=ヒト・コネクトームの解明が必要であり、それはどんなに早くても来世紀になると目されている。

それまでの間、少なくとも私たちの子供が現役を全うするくらいまでは、基幹ホワイトカラー業務については人間が担うことになる。その間、仕事はどのように変容するだろうか。

2040年代、営業もすき間労働化していく

現状の特化型AIレベルではホワイトカラー業務は全く代替できないだろうが、2040年代に全脳アーキテクチャー型AIとなれば、営業やマネジメントなどに絞って、そこそこ有用性の高いAIが出現しているだろう。それは仕事をこんな風に変える。

たとえば、営業で顧客訪問をするとしよう。現在、MVPを取るような営業スタッフは、会話の傾向から相手のニーズを把握して、最適な対応をする。製品の説明など聞きたくはなく、野球の話のみしたいような顧客には、大谷の活躍の話をしてさっさと帰る。単に飲み相手を探しているだけの経営者が相手であれば、夕刻遅くに訪問し、飲みに誘って商談に持ち込む。訪問は少なくて良いから完璧な企画書と資料を用意しろ!という顧客には、めったに訪問などせず、行くときは念入りに資料を作る。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

人材

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。