SDGs(持続可能な開発目標)にデジタルトランスフォーメーション(DX)……。ビジネスの現場には次々課題が降ってくる。先んじて対応できればよいが、時には対応が難しく右往左往することも。あなたの職場は持続可能ですか。変化の時代にビジネスパーソンが直面する悩みや疑問に専門家が答えます。第1回は取引先からのSDGs対策要請への対処。職場のSDGs研究所代表の白井旬氏が回答します。
有力企業の間では、近年、他社との取引条件のひとつとしてSDGsや「サステナビリティー」への取り組みを求めるところが増えてきています。私の顧問先もしかり。私自身も経営環境や取引条件の急激な変化に戸惑いを覚えるひとりです。
脱プラ・脱炭素・ハラスメント予防・タイバーシティー…
求められるSDGsへの対応は「脱プラスチック」や「脱炭素」などの環境対策だけでなく、「ハラスメント予防」「ダイバーシティー(多様性)推進」といった職場のあり方に関するものまで、幅広い領域に拡大しています。もちろん、多くの企業はこうした対策の必要性を認識し対応を進めているのですが、多岐にわたるテーマに一度に取り組むことは難しく、進捗に差が出てくることもあります。
その中で、残念ながら条件見直しを突然告げられて取引継続が難しくなるケースも少なくありません。取引を打ち切られた下請け企業などが「SDGs対応は名目であって、取引を打ち切りたかっただけではないのか」といった疑念にとらわれたとしても、不思議ではありません。
ここで肝心なことは、急激な条件変更に対応できなくても、その後に職場でできる対策を見つけ出し続けることで、他社に負けない仕組みを構築し、より変化に強い社内体制や取引関係を築き上げることにあります。
容器の一部にプラスチック 取引が打ち切りに
その好例として、A社の取り組みを紹介します。大手食品メーカーの販売会社のひとつであるA社は2020年、取引先のあるホテルから商品の取引中止を通達されました。ビュッフェなどで人気があった商品なのですが、ホテルがSDGs対応の一環で「脱プラスチック」の方針を打ち出し、容器の一部がその対象になってしまったのです。A社を含むグループ企業には容器の脱プラスチックに向けた数値目標がありましたが、その時点では取引中止を受け入れるしかありませんでした。
会社で対応できないことを求められた場合は、そこであきらめてしまう企業は少なくありません。でも、A社は違いました。取引中止を機に、「SDGs」や「サステナビリティー」という社会全体の大きな変化に対応すべく、情報の広い収集と新たな行動を進めたのです。