インボイス制度特集

迫るインボイスの10月 対応検討の実質期限は7月末 サバイバル経営Q&A 辻・本郷税理士法人 菊池典明氏

中堅・中小 インボイス

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SDGs(持続可能な開発目標)にデジタルトランスフォーメーション(DX)……。ビジネスの現場には次々課題が降ってくる。あなたの職場は持続可能ですか。今回は2023年10月に導入が迫るインボイス制度の発行登録を迷う小売店経営者に、辻・本郷税理士法人の菊池典明氏が判断の基準を助言します。

文房具を中心としたオフィス用品の小売店を営んでいます。主な顧客は個人で売り上げ規模も小さいですが、学校や企業に販売することがあり、消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応が必要になりそうです。10月に向けて具体的にどのような対応をすればよいのでしょうか。

タイミングのよい質問をいただき、とてもありがたく思います。相談内容は、導入が迫るインボイス制度の重要なポイントです。

インボイスは製品やサービスの売り手が発行する消費税率や税額を示す請求書や納品書のこと。10月の制度導入により、企業や個人事業者は売り手に支払った消費税(仕入税額)を把握し、自分が商品・サービスを売った時に受け取る消費税から、仕入税額を正確に控除できるようになります。

発行登録見送れば、企業顧客が離れる恐れ

ところが、一般の消費者が主な顧客の商店などでは、「自分の店には関係ない」と認識されている方が多いようです。それは大きな間違いです。顧客の一部が企業や事業者である場合は、相談者のように対応を検討することが不可欠なのです。

なぜなら、企業が10月以降、業務に必要な商品・サービスの購入先をインボイスが発行できる店に限る可能性があるのです。発行しない商店や事業者から業務用の商品・サービスを購入すると、その際に支払った消費税(仕入税額)を控除できず、実質的に経費負担が増すためです。相談者の主力商品がオフィス用品なら、企業との取引は無視できない割合でしょうし、その顧客を失うわけにはいかないでしょう。

 

問題は、インボイスの発行登録をすると消費税の申告と納税を行わなければならないことです。小売店は年間売上高が1000万円以下で、消費税の申告が免除されているケースが少なくないと思いますが、登録後は納税することになります。もちろん登録を見送り、免税事業者のままでいる選択もありえますが、それは顧客が離れるリスクを伴いますし、将来の事業成長を考慮しない判断ともいえます。私としては納税や税務処理の負担は避けられませんが、発行登録することをお薦めします。

飲食・小売店、医療機関も発行登録が不可欠

制度導入が迫り、個人客が中心のビジネスでも、様々な業種がインボイスへの準備が進めています。たとえば、飲食店は企業の接待交際等で利用された場合、顧客からインボイスを求められる可能性が高いです。クリーニング店はホテルや病院との取引では、ほぼ確実にインボイスを求められることになるでしょう。

病院など医療機関も、健康保険の範囲の医療費は消費税非課税ですが、予防接種や健康診断などの費用にはインボイスを発行する必要があります。また、不動産業を営んでいる方も、住居用は消費税非課税ですが、駐車場や企業向けのテナントには消費税がかかりますから、インボイスを求められる。対応を検討しないわけにはいかないのです。

では、制度が始まる10月に向けて、具体的にはどのような準備をすればよいのでしょうか。10月までにインボイスの発行登録をすればよいと思いがちですが、実はそうではありません。

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