BizGateインタビュー/SDGs

三井物産→宇宙商社 教育事業も柱に高校や大学と提携 永崎将利・Space BD社長に聞く

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日本経済新聞社と日経BPは2022年12月5~10日、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みを共有・議論するイベント「日経SDGsフェス日本橋 2022 WINTER」を開催する。9日開催の「NIKKEI宇宙プロジェクトフォーラム SDGs×宇宙 ~宇宙が教えてくれる社会課題解決~」NIHONBASHI SPACE WEEK コラボセッションには、Space BD(スペースBD、東京・中央)社長の永崎将利氏が登壇。永崎氏に宇宙ビジネスとSDGsの関わりなどについて聞いた。

■宇宙ビジネス プレーヤー同士の協力不可欠

――大学卒業後、新卒では三井物産に入社されたそうですね。ご自身は文系とのことですが、スペースBDでは「宇宙の総合商社」を標榜(ひょうぼう)し、衛星打ち上げサービスや国際宇宙ステーション(ISS)での実験、関連機器の調達、損害保険ジャパンとの包括協力協定によるリフライト保証サービス(打ち上げ失敗時の再打ち上げ機会の提供の保証)など、幅広いサービスを手掛けています。宇宙ビジネスとSDGsとの関わりをどうみますか。

永崎氏(以下敬称略) ご質問に答える前に宇宙ビジネスの特色を少しお話ししたいと思います。狭い地域のデータ分析ならば、観測衛星でなくドローンで事足ります。これに対し、宇宙ビジネスはグローバル展開をしなければ成り立ちませんし、まだ「この急所を開拓すれば利益が確実に上がる」という段階にもありません。このため、米スタートアップ企業とは「ギブ&テイク」のコラボレーションが欠かせず、ISSなどの高額な利用料も他社と共同で賄うことになります。

成熟産業ならば競合他社とシェアを奪い合いますが、宇宙ビジネスはプレーヤー同士が協力し合いシナジー(相乗効果)で全体のパイを大きくする必要があります。だから、宇宙ビジネスはおのずからSDGs的であるととらえています。SDGsの本質は、私見では「『自分さえよければ』という考えを外す」というサステナブル(持続可能)中心の理念にあると考えるからです。

宇宙ビジネスに関わる人々は「地球での過ちを宇宙で繰り返してはいけない」といった共通認識を持っています。宇宙ごみを例に説明します。たとえば一定以上の高度に衛星を打ち上げると衛星自体は寿命が延びるものの、最後はごみになってしまう。だからNGです。そんな共通認識があります。

我々は衛星関連の部品調達でも、日ごろから「ごみにならないように」ということを考えて選定していきます。言い換えれば、宇宙ビジネスでは「地球人」としてどう行動するかが常に問われていると思っています。

■宇宙ビジネスに関する教育事業、経営の柱のひとつに

――新興ビジネスとして産業の育成には何が必要ですか。

永崎 宇宙ビジネスは、まだまだ未知の分野です。だから閉塞感を破ってチャレンジしていく人材が必要です。そうした考えから、当社では宇宙ビジネスに関する教育事業を経営の柱のひとつに据えています。

人材育成ということで申し上げると、私は三井物産に入社後すぐに人事部に配属され、新卒採用などを担当しました。三井物産ではその後、オーストラリアに駐在して鉄鋼資源開発なども手掛けました。そうした体験でも「人」の大切さを痛感したものです。海外ビジネスでは、知識・スキル・語学がもちろん大事です。しかし、何が一番重要かと言えば、「人として付き合えるかどうか」が大きいと思っています。

――「人」という点で、新しい産業ならではの課題はありますか。

永崎 起業家精神だけでなく、チャレンジャーを応援したり、支えたりする人々の存在も欠かせません。そうした人々も宇宙ビジネスの当事者だと考えます。

スペースBDでは「2階建て構造」による教育カリキュラムを実施しています。1階は「自分さえ良ければ」という考えを外した起業家精神の養成、2階は宇宙開発の知識、宇宙ルールに関する法律知識……とそれぞれ具体的な分野でのスキルを教えこむことを目指しています。

■高校で衛星打ち上げの実践教育も 来年度から学習院大で講座

――宇宙産業の人材育成ということでは、国内各地の高校や大学、自治体と提携しているそうですね。具体的な内容は。

永崎 岩手県の花巻北高校では、今年度から衛星打ち上げの実践教育を担当しています。同校の生徒が衛星の名称や役割を検討し、衛星開発を追体験するところまでをカリキュラム化しました。超小型衛星を24年に打ち上げることを目指しています。同校では宇宙ビジネスのキャリア相談会も実施し、今後のキャリアを描く上でのヒントを伝えました。

一方、自治体との提携についていえば、たとえば大分県とは宇宙関連ビジネスを地域として、どうもり立てていくかなどをお話ししています。成熟産業ならば、(自治体にとっても)ある程度の予見性があるものの、宇宙産業はほとんど前例がありません。皆さん最初は一様に戸惑った表情になります。実は我々もそうでした。一般的にも、宇宙ビジネスはまだ遠いところにあると考えられていると思います。それをどう地域につなげていくか、その橋渡し役となることに力点を置いています。新たな取り組みとしては来年度から学習院大学で、文理融合の宇宙利用論をスタートさせます。

■宇宙ビジネスのリアル 人と人との付き合いがビジネス左右

――高校・大学・自治体といった各提携先に対し、共通して情報発信している点はどんなことでしょうか。

永崎 宇宙ビジネスの「リアルさ」を伝えることに力を入れています。スタートアップという言葉が最近もてはやされていますが、日常は泥臭い。狙った通りの結果が出ることは少なく、思いがけない助けが得られてやろうとしたことがやっと実現できるという場合も。人と人との付き合いがないとビジネスが前へ進まないと日々、痛感しています。しかし、実例を示さないと、学生も自治体の職員さんもそのあたりを納得してくれません。そうしたビジネスのリアルを共有させていただきたいと思っています。

■女性社員比率2割強 シニアと若手の連携も特徴に 

――「人」ということでは、SDGsの目標5に「ジェンダー平等を実現しよう」が掲げられています。社内のダイバーシティ(人材の多様性)推進についてはどうですか。

永崎 業界を見渡すと、宇宙ビジネスはまだまだ男性が多いです。これは事業展開にあたり技術的な要素が大きいとあって、各社が工学部系の人材を多く採用しているのが反映されていますね。

当社は現在、50人弱の社員がいます。うち女性社員は11人で2割強です。もう少し増えたらとは思いますが、それをゴールにするのではなく、いまは(ダイバーシティ推進に向けての)スタート段階だと思っています。

人材の活用ということでいえば、当社の場合、60代のシニアと20代の若手が組んで仕事をすることが多いのが特徴です。営業とエンジニアが一緒に協力して1つの案件に関わるといったこともできていると思います。ダイバーシティを目的化するのではなく、適材適所で人材を配置していくなかで、結果的に達成できるようにしたいですね。

(聞き手は佐々木玲子、松本治人)

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