アフターコロナの地方創生

新幹線延伸を起爆剤に スポーツでにぎわい創出 日経地方創生フォーラムin福井「観光・スポーツ・連携と共創〜北陸・福井で進む持続可能なまちづくり〜」

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地方創生 採録

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 2024年3月の北陸新幹線金沢―敦賀間延伸開業を控え、北陸経済活性化への期待が高まっている。今回の「日経地方創生フォーラム」は、開業準備に沸く福井市を舞台に23年11月27日に開催した。前半は大リーグ・ボストンレッドソックスの吉田正尚選手を招いたトークセッションやBリーグのリーダーらによるパネルディスカッションなど、スポーツを起爆剤にした地域活性化を徹底討論。後半は観光・まちづくり・ビジネスなど多彩な角度から、延伸による経済効果を最大化し、持続可能なまちづくりにつなげるアイデアを共有した。

 

【ご挨拶】自見 はなこ 氏 地方創生担当大臣

日本経済を再生するためには地方創生を進め、地方が元気になることが重要だ。デジタル田園都市国家構想という地方創生の旗のもと、全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会を目指していく。

福井県は全47都道府県幸福度ランキングにおいて5回連続で総合一位になっているが、2024年3月16日に北陸新幹線が福井や敦賀まで延伸することは、地域の社会課題の解決に必要な人の流れを作ることや魅力的な地域をつくること、仕事をつくることなどの契機になる。

 

【ご挨拶】東村 新一 氏 福井市長(当時)

福井市は歴史や文化が豊かで全国に誇れる魅力的な街だ。北陸新幹線の福井開業は観光客の増加やビジネスの拡大につながる百年に一度のチャンスであり、輝く未来に向けた新たなスタートの時だ。開業効果を最大化し、持続させることが重要となる。新たな価値と魅力を高めるため、官民一体となり、街のリニューアルに取り組んでいる。スポーツによるまちづくりも重要だ。立場や世代を超えて様々な分野で協力し、持続可能なまちづくりに取り組んでいく。

 

【基調対談】Bリーグで好循環を創出

三屋 裕子 氏 日本バスケットボール協会 会長
櫻井 うらら 氏 B.LEAGUE 執行役員
湯本 眞士 氏 福井ブローウィンズ 代表取締役

三屋 バスケットは子供たちに触れやすい、導入しやすいスポーツだ。福井ブローウィンズが子供たちの目標になり、福井に戻ってくるきっかけとなる循環が生まれれば、福井を元気にすることに貢献できる。 

櫻井 日本代表の活躍は自分たちの地域にもクラブがあったら見に行こうというきっかけになっている。

湯本 開幕戦では飲食しながら応援できるようにした。これまでの福井にはなかった取り組みだが、感動・歓喜の瞬間を味わえる場所がつくれることを体感した。北陸新幹線敦賀延伸の当日にホーム最終戦を迎える。新幹線が通ることで試合会場に来てもらうだけでなく、各地でイベントをする機会も増えるはずだ。

 

【トークセッション】ファンとの距離縮めよう

吉田 正尚 選手 ボストンレッドソックス
聞き手 福田 布貴子 氏 フリーアナウンサー

──WBC優勝を振り返って、どうでしたか。

「東京ラウンドから緊張感が高く、優勝できてホッとしました。どの打席も常に同じ気持ちを心がけましたが、ホームランを打てた試合は今までの野球人生でベストゲームだったと思います」

──メジャー1年目の参加でした。

「ポスティングでメジャーという目標だった場所に立てることが決まった後、WBCについては本当に迷いました。難しい決断でしたが、小さい頃からこの舞台に立ちたいという思いがあり、そこが一番の決め手になりました」

──本拠地のフェンウェイ・パークはボストンにとってどんな存在ですか。

「ホッとする落ち着く球場です。歴史的建造物で、拡張ができない分、ファンとの距離が近く、プレーもしやすいと感じています」

──プロスポーツが魅力ある街づくりに果たす役割をどう考えますか。

「地元チームを応援する文化はとてもいいと思います。実際にその場に足を運んで感じられるものがあることは子供たちのモチベーションにもつながります」

──そのための課題は何ですか。

「ファンの方をどう巻き込むかでしょう。メジャーで感じたのも選手と地元との距離が近いということでした。みんなで話し合いながらいいものをつくり上げる取り組みを長く続けることが大事だと思います」

 

【パネルディスカッション】地域と結び付くクラブに

島田 慎二 氏 B.LEAGUE チェアマン
湯本 眞士 氏 福井ブローウィンズ 代表取締役
伊藤 拓摩 氏 長崎ヴェルカ 代表取締役社長 兼 GM
田畠 寿太郎 氏 佐賀バルーナーズ 代表取締役社長
齋藤 敏幸 氏 ぼんた 代表取締役
橋本 理奈 氏 OOKABE GLASS 専務取締役
コーディネーター 櫻井うらら 氏 B.LEAGUE 執行役員

島田 Bリーグは誕生から10年目の節目となる2026年に「B.革新」と名付けた改革をする。ポイントは経営力、社会性、強化の3つ。社会性とは地方創生、地域活性化に貢献すること。全国にあるクラブが地域とつながり、社会課題の解決を目指して取り組むリーグだ。

湯本 福井に、そして福井からいい風を吹かせたいとの思いで福井ブローウィンズと名付けた。ライブエンターテイメントを通じて福井の次世代の誇りを生み出し続ける、若い人たちを後押しするというチームミッションを掲げている。

伊藤 長崎ヴェルカは「バスケットを通して、長崎、そして世界に『今を生きる楽しさ』を広げていく」という理念を掲げ、これを体現するため①経済面②エンターテイメント③平和のメッセージ④人材育成の4つを達成するとのミッションをつくった。キーワードはハード、アグレッシブ、スピード、イノベーティブ、トゥギャザーの頭文字「HAS IT!」だ。

田畠 佐賀バルーナーズはチーム設立6年目で、23年にB1に昇格した。佐賀県はトップアスリートからスポーツを見る人たちまでをピラミッド型に描く「佐賀スポーツピラミッド構想」を打ち出しており、我々も26年までに県内全市町と連携協定を結ぶ計画だ。

橋本 OOKABE GLASSはガラス・鏡を中心とした建材のEC販売を主に行っている。福井を良くするための事業も幅広く展開しており、福井県からB1を目指すという福井ブローウィンズのチャレンジもオフィシャルパートナーとして応援している。

齋藤 飲食業界では福井ブローウィンズへの期待が大きい。昔からプロスポーツでまちを盛り上げることが福井には必要だと考えており、できるだけブローウィンズの力になれればと思って協力している。

島田 クラブが地域と結び付くことで地域を活性化することに寄与できる。その解決手段となるのがアリーナだ。アリーナをつくることで地元にいても、いろいろなワクワクがある環境を生むことが重要だ。

櫻井 アリーナは地域のハブとなる場所。クラブが誇りとなり、地域の活性、にぎわい創出につながっていく循環を生み出したい。

 

【講演】多彩な魅力 磨き上げる

杉本 達治 氏 福井県知事

 今回の北陸新幹線延伸により、東京・福井間の所要時間は従来より36分短縮され2時間51分。首都圏から福井を訪れる観光・ビジネス客は倍増が見込まれる。

これに合わせ、県では様々な誘客策を展開中だ。例えば、世界3大恐竜博物館の1つ、県立恐竜博物館を拡張。恐竜の全身骨格数を50体に増やす一方、パノラマ映像を実体験できる3面シアターなど新アトラクションを開設した。恐竜列車や恐竜ホテルなどの魅力も加わり、7月の開業から4カ月で60万人が訪れる人気スポットとなっている。

さらに、それぞれ異なった色を持つことで知られる三方五湖に360度パノラマを楽しめる天空テラスが整備され、7万年の地層を観察できる年縞博物館や一乗谷朝倉氏遺跡、ツリーピクニックアドベンチャーいけだなど観光地の磨き上げも進んでいる。越前がに、若狭牛、地酒といった地元食のPRやスポーツイベントの開催にも注力。ビジネス面ではスタートアップ育成、農林水産業の成長産業化、伝統産業の支援なども重点項目だ。

北陸新幹線は今後さらに西に延び、東京と新大阪を結ぶ700㌔が全線開通すれば、沿線人口4200万人、東海道新幹線に匹敵するレインボールートが誕生する。将来、南海トラフ地震が起きた際には東海道新幹線の代替ルートとしての期待も大きい。北陸新幹線延伸は福井のみならず、輝く日本の未来への第一歩になると信じている。

 

【企業講演】北陸が広域周遊エリアに

漆原 健 氏 西日本旅客鉄道 常務理事 金沢支社長

今回の新幹線延伸で石川県内に2つ、福井県内に4つの新駅ができる。首都圏や関西からの所要時間が大幅に短縮されるだけでなく、県内の拠点間が1時間圏内に収まることで北陸全体が一大広域周遊エリアとなる。これを滞在時間延長、消費拡大につなげることが重要だ。

開業効果の最大化に向け、様々な取り組みに着手した。まず二次アクセスの整備と周遊ルートの拡大。キラーコンテンツの立山を巡る黒部宇奈月キャニオンルートが2024年開業。若狭エリアでは観光列車「はなあかり」、嶺北エリアではVR、AR映像で非現実世界を体験できる新感覚バスが運行される。

今ある観光素材の磨き上げも大切だ。そこで官民連携による福井観光開発プロジェクトを設立。マイスターガイドの育成など観光素材をストーリーや学びなどの切り口でブラッシュアップする試みも行っている。

観光情報の発信ツールとして22年、観光型MaaS「tabiwa by WESTER」も導入した。①観光情報発信②予約経路検索③お得なチケット──などの特典を受けられるのが魅力だ。

誘客策の集大成として24年10月から3カ月間、北陸の魅力を全国に発信する「北陸DC(デスティネーション・キャンペーン)」を開催する。日本中でアフターコロナの観光客争奪戦が始まる中、新幹線が開業する地域はほんのわずか。貴重なアドバンテージを生かして誘客に努めたい。

 

【パネルディスカッション】チーム福井で共創推進

八木 誠一郎 氏 フクビ化学工業代表取締役 社長
長谷川 英一 氏 福井銀行 頭取
藤丸 伸和 氏 岡福井県未来創造部 部長
漆原 健 氏 西日本旅客鉄道 常務理事 金沢支社長

──北陸新幹線敦賀延伸後に期待することは。

八木 新幹線開通で人は来る。それを持続化させることが大切。商工会議所は昨秋、北陸技術交流テクノフェアを開催、関東から数多く出展いただいた。直接福井に来てもらえば新しい気付き、発想が生まれる。

長谷川 新駅周辺や各観光地では5年以上前から再開発計画が進められてきた。福井銀行グループとしても駅前再開発すべてに関わり、観光DMOなどのプロジェクトも支援している。従来の金融機関の枠を超え、地域の課題解決業に進化するのが目標だ。

藤丸 恐竜博物館や一乗谷朝倉氏遺跡博物館など、金沢開業以来9年間で新設・リニューアルされた施設は50以上。施設のブラッシュアップは観光客だけでなく、県民も楽しめるポイントが増えることでもある。観光地に足を延ばしてもらうには、観光周遊型バス、地域鉄道など二次交通の拡充が必要。マルチ決済端末導入など、運賃のキャッシュレス化も進めたい。

漆原 金沢開業時は、富山・石川両県で企業立地が加速、本社機能や研究開発拠点の移転・拡充の動きも相次いだ。定期券の購入補助など地元支援も頂戴し地元大学への志願者増、定住人口の拡大につなげたい。

──スポーツや文化振興についてはどうか。

藤丸 県では福井エンタメ計画を推進中だ。越前和紙や同漆器など福井には1000年を超える文化・産業があり、地域に根付いている。ポップカルチャーなどでも、野外フェス開催などの動きが出てきた。

八木 文化振興事業団でも、県立音楽堂ハーモニーホールを地域の音楽団体や愛好家の発表の場として活用してもらっている。

──世代・地域間連携をどう進めていくか。

八木 坂井市の森林組合と木粉と樹脂を合わせた新建材を開発。環境対応の成果として評価を受けた。伝統技術から新しいアウトプットを生むのは1社だけでは難しい。チーム福井としての活動を盛り上げたい。

長谷川 廃業する会社の6割は黒字経営。それでも廃業するのは後継者がいないからだ。当グループでは投資専門子会社を設立。後継者のいない会社の経営に参画し、企業価値を高めた上で他の事業者に託す活動などを進めている。

藤丸 北陸新幹線沿線の自治体との間で包括連携協定を結んでいる。長野県の軽井沢町とは、同地に別荘を持つ富裕層に来ていただこうと地域間交流を深めている。世代間連携では福井県ワクワクチャレンジプランコンテストを実施した。

漆原 新幹線の輸送力を生かして広域から修学旅行を誘致する試みを行っている。高校生に自ら修学旅行のプログラムをつくってもらう一方、地元高校生からは福井の魅力を発信する。同世代間で直接交流する新しい形の修学旅行だ。

 

【企業講演】「小エネ」で豊かな住環境

石橋 智洋 氏 アロック・サンワ代表取締役 社長

ヒートショックで亡くなる方は年間1万7000人以上。寒い脱衣場と温かい風呂との温度差による急激な血圧変化が原因だ。これを防ぐには、家の中の温度差をなくし室温を18度以上に保つこと。床や壁、窓などの断熱性を高め、暖房器具をエアコンに統一するだけで冬の悲劇は相当抑えられる。当社は気密・断熱性に優れた高性能住宅を提案。小さなエネルギーで快適、健康に過ごせる豊かな暮らしづくりに取り組んでいる。

こうした取り組みに至ったのは、環境先進国ドイツへの視察がきっかけだ。日本の省エネ基準・性能とは次元の違う高性能建築、環境とコミュニティーを両立させた都市計画にショックを受けた。

建材商社として家づくり、まちづくり、暮らしづくりを進める当社が4本目の柱に据えているのがクリーンエネルギー事業。太陽光で発電して蓄電池にため、AIで効率よく利用する。世界基準の省エネ住宅普及を目指し、福井県初のPPA(電力販売契約)モデルの取り扱いを開始した。

長期優良住宅の認定取得率16.7%は全国39位、ZEH住宅の割合も同37位と、昔ながらの家が多い福井の現状。長く住み続けることを第一に考え、持続可能な未来に向けたまちづくりを実現するため、70年以上の歴史で培った実績とノウハウ、信頼を生かすことが我々の使命ととらえている。

今後は産学のトップランナー、地元企業などとともに、コンパクトで福祉・商業サービスなどの持続可能性を向上させた地域コミュニティーづくりを推進したい。

 

【パネルディスカッション】暮らしやすさ持続可能に

鷲頭 美央 氏 福井県副知事
石橋 智洋 氏 アロック・サンワ代表取締役 社長
山浦 光一郎 氏 福井県議会議員
早田 宏徳 氏 WELLNEST HOME創業者 ニセコまち取締役
コーディネーター 芝山 さゆり 氏 WELLNEST HOME代表取締役 社長

芝山 「地味にすごい、福井」が県のキャッチフレーズだ。

鷲頭 何がすごいのか。福井県は世界トップシェアを誇るような企業が多く、社長輩出率は38年連続首位。安定した雇用環境を背景に、女性や高齢者の就業率も高い。生活面では10年連続幸福度ランキング日本一。持ち家比率が高く、3世代同居も全国平均の倍以上。「ふく育県」を合言葉に、ゆりかごから巣立ちまで切れ目のない経済支援を行うなど、子育て・教育環境の充実にも力を入れている。

山浦 福井県の強みは教育だ。単純な詰め込み型でなく、考える力を育てる。その背景にあるのは、子ども1人にかける予算の多さや高い地域力、先生の質の高さだ。

芝山 暮らしやすい持続可能なまちづくりの見本がドイツにある。

石橋 ドイツ・ヴォーバンの住宅地をモデルにした都市計画を実現したいと行政に持ち込んだが、最初は理解が得られなかった。ドイツと日本、福井では文化が違いすぎると諦めかけたとき、北海道のニセコ町でこの計画が進められていることを知った。

早田 ヴォーバンは38㌶に5500人が暮らす。市民の足となるトラム(路面電車)が街なかを走り、住宅はすべて4階、5階建ての集合住宅。高断熱の住宅に高効率の設備を導入、電力は自然エネルギーでまかない、周辺の町に比べCO2を7割削減する。これをモデルにニセコ町では9㌶、人口400人のまちづくりを計画、SDGs未来都市の2018年モデル事業に採択された。

山浦 色々と学ぶ中で、持続可能なまちづくりに大きな可能性を感じている。福井県が先んじてそれに取り組むことで、先進的なまち、みんなが来たくなるまち、子育てしたくなるようなまちをつくっていけるのではないか。

石橋 ドイツやニセコは気候的にも福井と似た点が多くまちづくりの手本になる。しかし、福井には福井らしいまちづくりが必要だ。3世代がきちんとコミュニケーションの取れるまち。そのベースとなる高性能な建築を提供したいと考えている。

◇ ◇ ◇

本フォーラムは2023年11月27日に開催されたものです。令和6年能登半島地震によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆さまに心からお見舞い申し上げます。

日経地方創生フォーラムin福井
観光・スポーツ・連携と共創〜北陸・福井で進む持続可能なまちづくり〜
【主催】日本経済新聞社
【共催】福井新聞社
【後援】内閣府地方創生推進事務局福井県 福井市 福井商工会議所
【協賛】アロック・サンワ 福井ブローウィンズ JR西日本 フクビ化学工業 福井銀行 Wellnest Home 
関西電力 福井コンピュータホールディングス 増田喜 前田工織

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