NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム

海の食、資源調査で持続可能に ニッスイ浜田晋吾社長 NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム インタビュー

海洋保全 インタビュー 持続可能性 エシカル消費

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【解説】海の豊かさを守る

進化する養殖、コスト抑制急務 問われる消費者の「エシカル」

たんぱく源としての魚介類に注目が高まる中、1950年に約2000万トンだった世界の総生産量(海藻類等を除く)は30年、2億400万トンに達するとも予想されている。計画的生産が可能で、安定供給と天然水産資源への負荷軽減を期待できる養殖は2000年代後半以降、総生産量のほぼ半分を占めており、世界ではノルウェー、チリ両国がサーモンの生育に適した地理的特徴を生かして大規模な海面養殖を展開。2カ国のシェアは世界の7割超に上る。

海水温上昇などで天然魚介類の漁獲減に直面する日本でも研究が加速。海面養殖では、食べ残しによる環境負荷を抑えられる配合飼料の開発に加え、人工知能(AI)やあらゆるモノがネットにつながるIoTを活用した魚の健康管理など生産性・品質を高める工夫が進む。陸上養殖への参入も広がり、ニッスイのバナメイエビ事業化以外にも、富山県で27年出荷を目指しサーモンの試験飼育が始まった。

生育サイクルを天然資源に頼らない完全養殖も実用化が広がる。02年、近畿大学水産研究所が成功したクロマグロが話題になったが、サーモン類は20世紀から始まっており、近年はブリにも導入。水産総合研究センターのウナギや、沖縄科学技術大学院大学の研究チームによるアオリイカなど世界初の成功例も相次ぎ報告されている。

期待が高まる養殖事業の課題はコストだ。経費の半分近くを人件費や漁船の燃料費が占める漁業と異なり、養殖では飼料代が7割。陸上養殖では設備の初期費用もかかり、水温・水質管理の電力代などをいかに抑えるかが焦点になる。

現状の養殖飼料は天然資源に依存している。原料魚の供給変動や価格高騰が収益を圧迫するケースもあり、関係者は植物性原料への置換や昆虫由来飼料の開発を急ぐ。生育に合わせて適切な栄養素を与えられるうえに、いけす周辺の環境負荷低減にもつながる配合飼料の利用や、効率化・大規模化へ自動給餌システムの開発にも取り組んでいる。

日本では「天然」を尊重する風潮も根強いが、サンマをはじめ水揚げ減で価格が急騰している近海の天然魚も多い。水産庁は環境配慮で認証を取得した水産物の消費を推奨しているが、海や地球にやさしい商品を選択する「エシカル(倫理的)消費」の普及へ、生活者の意識変化も問われているといえよう。

海面・陸上での研究 ウナギなど人工種苗探る

海上のいけすやいかだなどで魚介を育てる海面養殖は古代ギリシャのカキ養殖の記録など歴史が古い。安定供給や、飼料の工夫による味・品質の向上など今日でも利点は多いが、環境変化対策や魚の健康管理が必要。漁業権に絡む沿岸や湾内は新規参入や規模拡大に制約があり、沖合拡張の研究が進む。

陸で水槽を使う陸上養殖は自然環境への負荷が少なく水質・水温の管理が可能だが、その維持や設備のコスト吸収が課題となる。

海陸の分類とは別に、人工ふ化で育てた親魚から採卵、ふ化、成長させて出荷する「完全養殖」もある。種苗を天然資源に頼らず、環境への負荷が低い。成長性が高く寄生虫や病気に強い優れた個体を選別して品種改良する育種研究も加速。農林水産省の「みどりの食料システム戦略」は2050年までにニホンウナギ、クロマグロ、ブリなどの100%人工種苗実現と配合飼料への全量転換を掲げている。

 

【日経からのお知らせ】NIKKEIブルーオーシャン・フォーラムとは
海の環境を守り、その資源を正しく利活用する方策や仕組みを考え、内外に発信していく目的で、日本経済新聞社と日経BPは「NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム」を設立しました。海洋に関連する多様な領域の専門家や企業の代表らによる有識者委員会を年4回のペースで開き、幅広い視点から議論を深めて「海洋保全に関する日本からの提言」を作成します。

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