ヒットの軌跡

無糖もヒットの「氷結」 果汁、すっきりのぶれない軸 缶チューハイ「キリン 氷結」(下)

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2001年に発売された缶チューハイ「キリン 氷結」(以下、氷結)は22年に販売数量の記録を塗り替えた。時がたつにつれて飽きられていきがちなロングセラーでは異例の出来事だ。売上数量を押し上げたのは、20年に投入した無糖タイプ。開けてすぐそのまま飲めるアルコール飲料、RTD(ready to drink)で異例のヒットになった無糖タイプ誕生は、長く重ねた商品開発ヒストリーの延長線上にあった。(前回の記事<「氷結」が変えたチューハイ界 おしゃれドリンクに進化>)

食品・飲料分野のロングセラー商品には「ヒットの方程式」がある。基軸商品をベースに、風味や価格帯、顧客層などを縦横に広げる多品種化戦略だ。原点ラインだけではやがて飽きられてしまう。顧客の幅も広がりにくい。ヒット商品の寿命が尽きてしまう主な理由だ。縦横軸へのラインアップ拡張はそうした「燃え尽き」を防ぎ、消費者の厚みを増す。「氷結」も早くから商品ファミリーの拡大に動いた。

最初に発売された「フレッシュレモン(現在はシチリア産レモン)」と「フレッシュグレープフルーツ(現在はグレープフルーツ)」のツートップは今も売上数量が頭抜けている。しかし、現在の主要ラインアップは「実は計9品もある」と、キリンビールマーケティング部RTDカテゴリー戦略担当の加藤麻里子主査は明かす。「九州産ゆず」「シャルドネスパークリング」「オレンジ」「パイナップル」「ウメ」「モモ」「サワーレモン」――。これら7種類を加えた9品が通年で取り扱われているスタンダードシリーズだ。

どれも名前を聞いただけで味わいが思い浮かぶような果実味が選ばれている。他社の缶チューハイ商品ではモヒート風やウーロン茶割り、乳酸菌飲料風味など、フルーツ系以外のテイストも多いが、「氷結」の軸はあくまで果実味。「シャルドネスパークリング」の名前はワインのように見えやすいが、原料はブドウ果汁であり、ワインベースではない。「果汁のみずみずしくさわやかな風味から始まった原点からぶれないことがブランドイメージを育ててきた」(加藤氏)

そもそもフルーツには種類が多い。「氷結」では期間限定商品で様々なフルーツを採用してバリエーションを広げてきた。イチゴ、アセロラ、ミカン、スイカ、メロン、ライチ、キウイ、マンゴー(生産・販売終了を含む)など、選ばれたフルーツは多彩だ。しかし、おなじみの果実でも、バナナは登場したことがない。「ジュースのようにはしない。『氷結』は果汁とウオッカ、炭酸のバランスが大事」(加藤氏)だからだ。フルーツは風味付けの飾りではないから、相性を見極めて選ばれている。6月に期間限定で発売したグリーンアップル(青リンゴ)も爽快な酸味が決め手だ。

 

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