三菱総合研究所がこのほど実施した調査・分析によると、「地元地域での飲食、地元商店街での購買」など地域への還元消費がウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に満たされた状態)をより向上させることがわかった。しかし、こうした「エシカル消費」の規模はまだ小さく、ウェルビーイング向上につながる消費にはなお拡大余地がありそうだ。
「企業が、消費者を『社会・地球の持続可能性を高める活動』へと巻き込み、ウェルビーイングを向上させる取り組み」として「エシカル消費」を定義。JCB会員を対象にしたアンケート調査(3301人回答)を使い、エシカル消費を「ふるさと納税(生まれ故郷)」「地元地域での飲食、地元商店街での購買」など15の形態にわけ調査・分析した。
エシカル消費額8.8兆円、消費全体の3%
アンケート調査をベースに「国民生活基礎調査」(2021年度)と「国勢調査」(2020年度)を用いてウェイトバック処理を行った試算の結果、エシカル消費の規模を8.8兆円と推計した。家計消費支出全体からみると約3.1%にとどまる。消費の内訳をみると「地元飲食・地元商店での購買」(2.3兆円)、「ふるさと納税(生まれ故郷+それ以外)」(1.6兆円)が上位に並んだほか、「地元や好きな地域でのイベント消費」(7500億円)も多く、地域貢献にからんだ消費が目立った。エシカル消費を1人あたりでみると、頻度は年19回、支出額は年62万円になるという。消費のけん引役は既婚の中高年・シニア層だった。
<エシカル消費の6分野・15消費形態>
こうしたエシカル消費のなかで、どんな消費がウェルビーイングに寄与するか調べた。エシカル消費15形態に加え、ウェルビーイングを高める18の消費形態を加えた計33消費形態を用いて統計学的な手法で分析したところ、「芸術作品、郷土品の購買」「地元地域での飲食、地元商店街での購買」「地元イベントでの購買」が上位に並んだ。無理のない範囲での身近な地元応援消費でウェルビーイングを向上させている消費者の姿が浮かぶ。
意義の可視化と価値化、必要に
ただ、三菱総研の消費者調査によると、エシカル消費の意欲は必ずしも高まっているわけではなく、年代や経済状況などによってばらつきがある。意欲が高まっているのは、幼少期からSDGs(持続可能な開発目標)などエシカルに関わる教育を受けてきた若年層と、生活にゆとりのある一部の消費者にとどまっている。
今回のウェルビーイングと消費に関する調査を担当した同社政策・経済センターの山藤昌志主席研究員は「消費者がエシカル消費に能動的に関わりたくなるようなメッセージが届けられていないなど、企業の訴求力不足などが課題」とし、「エシカル」「ウェルビーイング」の意義が消費者にきちんと伝わる「可視化」と「価値化」が企業には求められているとした。
(町田猛)