ヒットの軌跡

『地球の歩き方』、逆風に逆張り 図鑑や国内編に拡張 地球の歩き方 コンテンツ事業部長 宮田崇氏(下)

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図鑑と国内版で深掘り・横展開

海外旅行ガイドブックを出せなくなった時点で、真っ先に意識したのは「雇用の確保だった」と、宮田氏は明かす。それまで2〜3年に1度くらいのペースで改訂版を刊行してきただけに、付き合いの長い書き手や編集者を抱えていた。彼らの生活を支えるには、別の出版物を企画するしかない。「海外取材に出なくても済む本」を出そうと、編集部は知恵を絞った。

「旅の図鑑」シリーズに関しては、100点を超える『地球の歩き方』シリーズの蓄積が生きた。既刊には盛り込みきれなかったデータやエピソードがたくさんあったからだ。様々な国・地域の知られざる魅力を集めた雑学本テイストの仕立ては、旅に出られなくなった「にわかアームチェアトラベラー」を喜ばせるのに十分だった。『世界244の国と地域』は「もともとは東京五輪に合わせた企画だった」(宮田氏)。

『東京』で新たな需要掘り起こし

一方、『東京』のほうはゼロからのスタート。そもそも国内版は前例がない。コロナ禍の下では国内でも移動が制限された。東京都内に住む人が国内のあちこちに出掛けることすら難しくなった。旅行ガイドブックの編集にとって、これ以上はないほどの「逆風」だったが、見方を変えれば、東京都内は見どころが多い。長く住んでいる都民でも、知らないエリアは結構多いものだ。

結果は大ヒット。「以後の国内シリーズはどれも地元の人が買ってくれた。自分が住んでいるエリアをもっと知りたいという需要を掘り起こせた」(宮田氏)。その後、北海道、千葉、埼玉、京都、沖縄などの道府県バージョンも刊行。23年8月には愛知版も出る予定だ。すっかり『地球の歩き方』の新たな「顔」となった感がある。

「旅の図鑑」シリーズは編集者の遊び心が際立つ。既刊の切り口は「奇岩と巨石」「すごい島」「巨像」「城と宮殿」「聖地&パワースポット」「すごい墓」など、どれもエッジが立っている。とりわけ食に関しては最初の「グルメ」以降、カレー、中華料理、麺、地元メシ、菓子、酒などと細分化が進んだ。「『地球の歩き方』らしいマニアックな掘り下げが読み手の支持を得た」(宮田氏)。23年7月には映画の舞台・ロケ地版が予定されていて、国内版と共に新たな両輪となっていきそうだ。

ぎりぎりまで追い込まれたにもかかわらず、編集部が選んだのは、無難な路線ではなく、あえて癖の強いテーマに切り込むという「攻め」のチャレンジだった。「本来のエリア別ではなくても、『らしさ』を大事に、テーマを選んだ」(宮田氏)。読み手は編集者の意気に感じたところもあるようだ。新テーマが出るたびに買い求め、「もっとやれ」のエールを送り続けた。

 

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