日経ニューオフィス賞

偶然の出会い導く仕掛け 遊びの要素で豊かな発想 第35回「日経ニューオフィス賞」オフィスの今と未来を語る

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日本経済新聞社とニューオフィス推進協会(NOPA)は2022年8月、第35回「日経ニューオフィス賞」のニューオフィス推進賞として16オフィスを表彰した。それから約半年、受賞企業の約半数を再訪し利活用の現状を取材してみた。そこから改めて見えてきたのは、コロナ禍に直面した企業が、創意工夫を重ねて生み出した新たな「人の集い方」だった。まずは三栖邦博・NOPA会長、古谷誠章・早稲田大学教授、塚本裕之・経済産業省企画官による、オフィスの新潮流と将来展望をテーマにした鼎談の内容からリポートする。

意図的に出会いの場を

三栖 2021年のコロナ禍真っ盛りのころはリモートワークが拡大したが、22年になると徐々にオフィスに社員が戻ってきた。ただ、在宅勤務やフリーアドレス制が根付いたこともあり、社員全員分の席を確保する必要も薄れた。そこで生まれた余剰空間を人と人が集いつながる場所として生かす企業が増えた。本来、新たなアイデアや知見は出会いから生まれる。その意味で、受賞各社のオフィスには会社に来たくなる工夫が施されている。

古谷 建築の本来の役割は人と人が出会う場を提供すること。今回の受賞企業のオフィスを見ると、出会いの場を意図的につくる傾向が強まっているのを感じる。情報交換するだけならオンライン会議で十分かもしれないが、人と対面すれば五感すべてで相手を認識でき、そこから知のコラボレーションが生じる。しかも、受賞オフィスには予期せぬ出会いを誘発する工夫が随所に見られた。偶発的な出会いだからこそ斬新なアイデアが生まれる可能性もある。

塚本 コロナ禍を乗り切る手段としてリモート会議などが活用され、デジタル技術の有効性は確認された。ただ、新たな発想を生むにはそれだけでは十分ではないということもわかってきた。受賞企業のオフィスには、廊下や階段の踊り場などで会った社員同士が立ち話できるスペースを設けるなど、偶然の出会いを演出する仕掛けが随所に見られた。

会うためにICT利用

三栖 22年のオフィス潮流を言い表す言葉として「セレンディピティー」を挙げたい。偶然の産物を意味する言葉だ。事前にアポイントを取る出会いは、社内外とも自分と同じ分野の仕事をする人とつながる場合が多い。だが、セレンディピティーを狙った空間は異分野の人々を結びつける。そこに新しい知識が生まれる。セレンディピティーの仕掛けは人との出会いだけではない。最近はライブラリーを設けるオフィスが多いが、偶然ページをめくった本や雑誌から、自分の研究対象外の記述が目にとまり、新しい発想がひらめくこともある。

古谷 確かにライブラリーコーナーは有効だ。リサーチにはネットが便利という人も多いが、ネットではリコメンド機能が働き同じ分野の情報が次々と現れ偶然性はない。

私はオフィスの潮流を表す言葉として「遊び」を挙げたい。かつて「働く」の反対語は「休み」と言う人が多かったが、私は「遊び」だと思う。双方があって豊かな発想が生まれる。最近は簡単な料理が作れてパーティーを開ける空間があるオフィスが多く、まさに遊びが重視されている。「ハンドルのあそび」という言い方があるように、遊びには余裕という意味もある。コロナで出社率が下がり余剰空間が生まれると面積を減らし賃料削減を図る会社もある。だが、余剰空間を社員の集いの場に使う発想が、モチベーションの維持向上につながる。

塚本 私は「共創」がキーワードだと思う。社内の部署同士だけでなく、取引先企業や大学、ベンチャーなどを巻き込んだオープンイノベーションが加速している。受賞オフィスにはそのための環境整備を意図したものも多かった。

三栖 直接ビジネスとは関係ない地域住民にも門戸を開くオフィスも出てきた。オフィスの一部をカフェとして地域住民に開放、地域社会との交流からセレンディピティーを誘発する試みもある。

古谷 数年前の受賞例だが、研究所をあえて駅前に新設し、研究者と一般来訪者が触れ合う機会をつくったケースがあった。研究者が営業部門やマーケティング部門を介さず、直接ユーザーのニーズを聞ける場は貴重だと思う。

三栖 ICT(情報通信技術)の使い方では、オンライン会議のように「人と会わずに仕事ができる」という方向での活用もあるが、「人と会うため」に活用する事例も出てきた。誰が出社し、どこで仕事をし、話しかけてもいい状態にいるかどうかまでの情報を社員同士がリアルタイムで把握でき、会いたい人に会える仕組みを導入した会社もあった。

古谷 オンラインでつながっている場合も、相手が等身大のアバターとして登場し臨場感あるオンライン会議ができる仕組みをつくった会社もあった。今後はリアルとバーチャルの融合が進むだろう。

塚本 こうした傾向が加速すれば、ハード、ソフト両面で新しいオフィス関連製品が登場し、新市場が生まれて産業界も活気づくと思う。

三栖 オフィスに行く社員一人ひとりが何らかの形でオフィスづくりに参加することが肝要との思いを強くした。企業経営と同じように、オフィスづくりに終わりはなく、社員自身が自分の事としてオフィスを考え、つくり続けることが必要だ。そのことが働き方の改革、そして経営への参加意識やエンゲージメントの向上につながり、行きたくなるオフィスづくりになっていることも実感した。

23年の応募オフィスでは多様性への対応がキーワードになるかもしれない。メディテーション(瞑想)ルームの設置など心身の健康への配慮もメイントレンドになりそうだ。

古谷 多様性というのは、ある意味「不ぞろい」ということだ。一人の社員でも、その日の気分や体調によって居心地がよいと感じる場所は変わるかもしれない。机やいすも同じもので統一する必要はなく、むしろばらばらにして不ぞろいな空間をつくった方がいいのかもしれない。

22年の受賞オフィスは、計画スタート時点ではまだコロナ禍には直面していなかったと思う。建設過程で感染が拡大し、運用を工夫して柔軟に対応してきたと思う。しかし、23年以降のオフィスからは計画段階でウィズコロナ、アフターコロナをある程度視野に入れた案件が出てくるかもしれない。今以上に飛躍したオフィスが登場すると思うと楽しみだ。

第36回日経ニューオフィス賞実施概要(予定)
①応募対象=2023年3月末の時点で実際に使用されてい
     る日本国内のオフィス
②応募資格=当該オフィスの使用者
③応募期間=4月上旬〜5月中旬
④受賞オフィス発表=8月上旬
⑤表彰式=9月上旬
※なお詳細は4月上旬の応募受け付け開始時にNOPA公式サイト(https://www.nopa.or.jp/)で発表予定(状況による変更も含む)。
■共催=北海道ブロック 北海道事務機産業協会
   東北ブロック 東北ニューオフィス懇話会
   中部ブロック 中部クリエイティブオフィス懇話会
   近畿ブロック 近畿ニューオフィス賞実行委員会
   中国ブロック ちゅうごくニューオフィス懇話会
   四国ブロック 四国ニューオフィス推進委員会
   九州・沖縄ブロック 九州オフィスファニチュアー懇話会
■後援=経済産業省/日本商工会議所

 

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