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「売れない時代」の突破口 ライブコマースの可能性 Tailor App(テイラーアップ)社長 松村夏海氏(下)

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先行した中国での爆発的なヒットを追い風に、「ライブコマース」への関心が盛り上がっている。生中継の動画配信を通じて商品を販売するネット通販の新手法だ。単にモノを売るだけではなく、ファンづくりやブランディングなどにも活用が広がり始めた。『売れる「ライブコマース」入門』(フォレスト出版)の著者で、ライブコマース支援を手がけるTailor App(テイラーアップ)社長の松村夏海氏に、成功するライブコマースの始め方を聞いた。(前回記事「ライブコマースが売れるワケ 達人が明かす魅力とコツ」)

目新しい手法だけに、ライブコマースは従来の売り方とは別物だと思われがちだ。しかし、松村氏は「日本流の接客カルチャーを生かしやすい」と指摘する。動画の撮影や加工などでは技術的な進歩が続いているものの、「リアル店舗で培った、顧客と接するスキルは極めて価値が高い。ライブコマースを導入するからといって、切り離してしまうのはもったいない」と、ライブコマースをリアル接客の延長線上に位置付ける。リアルの店舗で販売実績が豊富な企業は積み上げたノウハウを転用できる。

松村氏が重んじるのは「この人から買いたい」と顧客に思わせる高い接客スキルの持ち主だ。買う側の気持ちにスッと寄り添い、プロフェッショナルな助言や提案を用意する。例えば、伊勢丹新宿店のメンズ館で働くスタッフがその一例だという。松村氏自身も靴の接客を受けて深く感じ入り、「この人が勧めてくれるのなら、その商品を買おう」と思ったそうだ。「ライブコマースはあくまでもコマースの一手法。実際に視聴者と向き合うコマーサー(売り手)の資質が売れ行きを決める」(松村氏)

中国ではリアル店舗のスタッフが消費者を丁寧に扱わない態度がかねて指摘されてきた。インバウンド消費が盛り上がった時期には、日本で「爆買い」する中国人消費者から日本流の「おもてなし」式の接客を高く評価する声も聞かれた。熱心に語りかけるコマーサーは中国視聴者の購買マインドを刺激して巨大市場を生み出している。「日本ではもともとレベルの高い接客が根付いている。自社でコマーサーを育てる場合は、そうした接客スキルの高い現場スタッフを活用するのが近道」と、松村氏は既存の人材をライブコマースに生かす取り組みを促す。

進化を重ねている段階のライブコマースだから、絶対的な「正解」はない。むしろ、「それぞれの企業になじむライブコマースのスタイルを探すほうが、型にはまった印象を避けやすい」(松村氏)。先行した中国とは、店舗網の状況やブランドの信頼感、消費者のマインドなどが大きく異なる。「中国流をなぞる必要はない。参考にしながらも、日本の消費者に支持されるオリジナルのライブコマースをつくっていくべきだ」と多様なトライアルを恐れない。

 

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