BizGateインタビュー/SDGs

人気クイズ番組が原点 エシカル消費で推進するSDGs エシカル協会代表 末吉里花さんに聞く

循環型経済 Z世代 エシカル消費

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環境や社会のサステナビリティー(持続可能性)に配慮した商品やサービスを購入する「エシカル消費」への注目が高まっている。日本経済新聞社と日経BPは2023年12月4〜8日、SDGs(持続可能な開発目標)について議論するイベント「日経SDGsフェス」を開催する。5日のトークセッションに登場する末吉里花さんは、TBS系クイズ番組「世界ふしぎ発見!」の「ミステリーハンター」として活躍した経歴を持つ。様々な国や地域からリポートするなかで社会課題を目の当たりにした体験を原点に、エシカル消費の普及・啓発に取り組む末吉さん。一人一人が消費行動を変えることがSDGs達成につながるという。

すべての人に知る機会を提供する

――「エシカル消費」とは何ですか。

「エシカルは英語で『倫理的な』という意味です。エシカル消費は政府などの定義で『地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動』と説明されています。海外で生まれた考え方で、SDGsの目標12『つくる責任、つかう責任』につながるとして、日本でも15年に消費者庁が調査研究会を立ち上げました。21年に中学、22年には高校の教科書に掲載されるなど普及・啓発が進んでいます」

「私が代表を務めているエシカル協会の前身は10年から開催していたフェアトレード(公正な取引)についての講座です。その後、消費者庁にエシカル消費についての調査研究会が設けられたのを受け、講座の第1期生と、エシカルの考えやエシカル消費について知る機会を提供することを目指して15年に協会を設立しました」

「協会でエシカルについて語呂合わせで説明をつくりました。『影響(エ)をしっかり(シ)と考える(カル)』ことだと伝えています。例えば、チョコレートを食べたときに、実はそのチョコが児童労働で生産されたと聞けば、多くの人は心を痛め、次からは買わないという行動につながる。背景を知って行動を変える心の在り方がエシカルであり、SDGsのような目標を達成するには、達成を目指す私たちがエシカルになる必要があるんです」

――エシカル協会では幅広い活動に取り組んでいますね。

「一般の方に向けてはエシカル・コンシェルジュ講座という全10回の講座を年2回開催しています。エネルギーや気候変動、家畜などにとって快適な飼育環境を整える『動物福祉』など、さまざまな分野の最前線で活躍する講師の講義を受けるほか、受講生がオンラインで話し合う場もあります。学んだことを人々に伝え、関心をもってもらうためのコミュニケーションやマーケティングについても学びます」

「現在開講中の今期の受講生は約250人。これまでに延べ約1万5000人が受講しました。この講座は修了までに3〜4カ月かかるため、今年の春、法人向けのeラーニング講座もスタートし、30分で学べる動画を3本組み合わせて提供中です。自治体や教育機関、企業などの要請で全国で講演も実施しているほか、法人向けには会員制度も設け、交流会や勉強会も開いています。現在、大手メーカーを含め約40社が参加し、参加社同士でコラボレーションした啓発活動なども生まれています」

「共通しているのは、すべての人に知る機会を提供することです。私たちが生活するなかで消費しているモノやエネルギーは、誰がどうやって作っているのか。背景ではいろいろな問題が起きているのが見えないことが、問題を解決できない状況を作ってしまっている。知ることからしか、やはり始まらないと思っています」

企業に危機感

――どんなきっかけで受講するのでしょう。

「エシカル消費に関心をもって調べて受講するか、口コミがほとんどです。お勤めの人でも個人として受けるケースが多かったのですが、最近1〜2年は企業からの申し込みも増えています。持続可能性についての国際ルールの動きが活発化し、特にグローバルなサプライチェーンをもつ企業は海外のスタンダードに合わせていかないとビジネスが成り立たないという危機感がある。潮目が変わってきている印象です」

「国としても、例えば、資源を有効活用する『循環経済』を実現していくため、経済産業省と環境省が、モノづくりの『動脈』と廃棄物処理の『静脈』をつなげる法律や制度の見直しを進めています。欧州連合(EU)では、いざ作ってからリサイクルすると難しさがあるので、最終的にリサイクルしやすい素材でしか作らないとか、消費者が自分たちで修理しやすい設計にするとか、製造段階のルールをどんどん政策のなかに落とし込んでいます。こうした動きは日本にも入ってくるのではないかと思います」

キリマンジャロの黒々とした山肌

――どうしてエシカル協会を立ち上げたのですか。

「原点は『世界ふしぎ発見!』で現地リポーターをしていたときの体験です。04年に番組でアフリカのキリマンジャロに登りました。当時、温暖化の影響で10〜20年にはキリマンジャロの頂上の氷河が完全に解けてなくなってしまうという予測があって、実際に見に行こうという企画でした。キリマンジャロの標高は約6000メートル。私は東京の高尾山しか登ったことがなかったんですが……」

「約1900メートルの地点に小学校があり、訪ねると子どもたちが『氷河がまた大きくなりますように』と祈りながら木を植えている。彼らは氷河の雪解け水の一部を生活用水にしているので死活問題だったわけです。自分たちは小さくて見に行けないから、お姉ちゃんが代わりに登って見てきてと言われました。当日は朝日が昇るころに登頂している予定だったのですが、途中で気を失ってしまい、太陽を浴びて体調が回復してから再びアタックしました」

「頂上に着いたときには、辺りは快晴ですごい青空でした。周囲は登頂して喜ぶ人であふれていましたが、目の前には黒と紫と赤が混ざったような黒々とした山肌が広がっている。美しい青白い氷河は、遠くに少し見えているだけ。もちろん頂上に着いた感慨はありましたが、ショックのほうが大きかった。子どもたちの顔も浮かびましたし、日本に暮らす私たちが、こういう地球の裏側に影響を与えているのかもしれないと思ったら、いてもたってもいられなくなりました」

「帰国して、自分なりに海でのごみ拾いや、環境関係のNGO団体の手伝いをしながらも、そんな自分の行動に本当に意味があるのかとモヤモヤしていました。そんなときにフェアトレードに出合った。社会を変えるハードルは高く、1人でできることはあまりにも小さいと感じていましたが、日ごろの消費行動を変えることで、世界が抱えている問題を解決することができる。そう知ってのめり込みました」

自分が「好き」なことのエシカルな在り方

――活動の手ごたえはいかがですか。

「全ての人が私が経験したような衝撃的な体験をできるわけではありませんが、学び、知る機会を得ることで、行動を始めてくれる本当に多くの人がいます。例えば、スーパーでケージなしでのびのび育つ『平飼い』の卵を取り扱うようにリクエストしたらかなったという報告だけでも10件や20件ではありません。消費者としての力を発揮すれば、1人の声でも届くということです」

「講座などで若い世代と交流すると、『こんなにたくさん洋服を持っている必要があるか?』『車は乗る時だけシェアすればいい』という。考えが変わってきていることがわかります。そういう『エシカルネーティブ』の世代がもうすぐ消費の主役になったとき、彼らが価値を見いだすものが変わってくるのは間違いなく、企業はいま動き始める必要があるはずです」

「一方で『エシカル』は形容詞で、いろいろな物事と掛け合わせることができます。誰でも自分が好きだと思うことについてエシカルな在り方が必ず見つかる。私もフェアトレードと出合ったのは、ファッション誌でかわいい白いワンピースを見て、欲しいと思ったことがきっかけです。それがフェアトレードの服でした。エシカル消費は、意識の高い人だけのものではないんです」

(聞き手は若狭美緒)

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