NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム

海の保全、業界超え産消連携を サラヤ 代表取締役社長 更家 悠介 氏

海洋保全 インタビュー 循環型経済

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「NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム」(日本経済新聞社・日経BP共催)の有識者メンバー企業、サラヤは石けん液製造を起点に環境ビジネスを展開。協力するNPOは海洋保全などを掲げ、2025年の大阪・関西万博でのパビリオン出展を計画する。同NPO理事長も務める更家悠介社長は、海洋ごみ問題などで業界を超えた産消連携を訴え、祖業で養った技術で、食品加工の分野でも海の豊かさを守る事業を探る考えを示した。

急速冷凍の装置 食品加工で提案探る

資源循環に早くから取り組み、海の環境保全と経済成長を目指す「ブルーエコノミー」に強い関心を寄せる

資源循環という考え方に出合ったのは、社会活動家のグンター・パウリさんとの交流がきっかけでした。資源を循環・再利用して廃棄物をゼロに近づける「ゼロエミッション」という概念を提唱した人で、1994年に東京の国連大学の学長顧問として来日し、日本企業もゼロエミッションを目指す活動に取り組み始めました。その流れを引き継ぐ形で2001年にZERI(ゼロエミッション・リサーチ・アンド・イニシアチブ=ゼリ)ジャパンというNPOを設立し、私が理事長に就きました。

循環型社会への理解が深まった2010年代には、パウリさんが新たに提唱したブルーエコノミーを実現すべき時期に来たと考えました。そこから活動を本格化させています。

海の持続的な活用を進めるうえで、大きな課題がプラスチックごみによる汚染です。レジ袋の有料化など脱プラの動きは進んでいますが、海に流出するプラごみは減っておらず、なんとかしなければなりません。

サラヤは持続可能性・実効性ある海の保全と繁栄の両立を目指す一般社団法人「ブルーオーシャン・イニシアチブ」に幹事企業として参加しました。25年の大阪・関西万博で、ZERIジャパンはパビリオンを出展し、プラごみによる海洋汚染防止を訴えるとともに、海の持続的な活用について情報発信していく予定です。

この活動は一過性に終わらず、数十年は持続させる必要があります。企業や自治体と連携してビジネスにつなげていくことが重要です。

プラごみ対策で新しい経済モデルをつくろうと目指す

世界中のあらゆる海岸にプラごみが流れ着くだけでなく、微細なマイクロプラスチックが深刻な影響を及ぼしています。例えば長崎県対馬市には、アジア諸国などからプラごみが漂着しています。中でも深刻なのは、捨てられたロープや網といった漁具です。

私たちはグループ会社などと連携し、海のプラごみを回収・処理し、農業廃棄物や廃油などとともに発電に利用する実証実験を進めています。リサイクルできるものは再生利用し、できないものは電気や熱として活用する循環経済のモデルにしたい。軌道に乗せて、島しょ国などに展開できればいいと考えています。

サラヤの主力商品である洗剤は容器にプラスチックを使います。ごみ問題の解決には、使用済み製品を回収、選別処理し、素材原料に戻すケミカルリサイクル技術の確立が欠かせません。商社や化学会社、飲料・食品メーカー、流通など業界を超えて連携するため、共同出資会社のアールプラスジャパンに資本参加しています。

同社は米国のスタートアップと共同で、使用済みプラスチックをプロピレンやエチレンなどの粗原料にする技術を開発しました。これにより、従来の技術よりも少ない工程で処理できます。洗剤の使用済み容器を回収し、効率的に再生利用できる体制を確立していきたいと考えています。

海の環境保全を新たなビジネスにつなげる必要がある

アフリカ北西部のモーリタニアはタコ漁が盛んです。漁業がなかった同国にそれを定着させたのは日本から派遣された中村正明という人で、素人でもできる「たこつぼ漁」を現地の人に教えました。今では日本にも輸出されるほどの一大産業になっています。私たちは今、同国で網を使わない環境保全型の漁業の実現を目指し、実証実験する計画を進めているところです。

サラヤは液体を使って食品を急速冷凍させる装置も販売しています。省エネで、かつ少ない人手で冷凍食品をつくることができるという利点があり、地方の食材を通販するシステムを提案しています。規格外品の付加価値を高めて商品化することもできないかと考えています。新しい技術によって、これまでとは違うビジネスが展開できます。

企業は海に対する姿勢を明確にし、それをわかりやすく消費者に理解してもらうことが重要です。海の環境保全に熱心な消費者は多いので、その力をビジネスとうまく連携させることができれば、新たな可能性が開けてくるのではないでしょうか。企業は変化を恐れず、ビジネスチャンスと捉えて取り組んでいくことが大切です。

環境保全は自社のDNAに組み込まれている

私の父がサラヤを創業したのは戦後間もないころで、衛生環境が悪く伝染病がまん延していました。そこで、緑色の石けん液とディスペンサーを開発し、手を洗うことで感染予防につなげ、企業として成長しました。高度成長期になると、石油系の合成洗剤が河川などの汚染や富栄養化を招くことが社会問題になり、サラヤの石けんは植物由来だったので、食器用洗剤に活用しようと考え、ヤシノミ洗剤として商品化しました。

現在、洗剤などの原料にはアブラヤシから抽出するパーム油を使っています。主力産地のマレーシア・ボルネオ島の環境保全に長く携わってきました。ボルネオ保全トラストに寄付し、ゾウやオランウータンなど野生生物の保護など生物多様性の保全に協力しています。環境保全は会社のDNAに組み込まれているような気がします。事業の持続可能性に向けてサプライチェーンを維持するためにも、環境保全に取り組むのは自然の流れだと思うのです。

記者の目 国際ルール 企業も関与を


プラスチックごみによる汚染根絶をめざす国際条約の制定に向け、国内の企業連合が11月1日発足した。サラヤのほか、キリンホールディングス、ユニ・チャームなど10社が参画。法的拘束力のある条約を求めて日本政府などに働きかける。

これは世界約160社・団体からなる国際プラスチック条約企業連合の日本版にあたる。こちらは英ユニリーバやスイスのネスレ、米ウォルマートなどが参加し、各国代表団に政策提言している。

条約案は2024年末までに詰める方向で交渉中。情報開示や監視・報告体制の構築など厳しい規制と同時に、補助金や税優遇など経済的なインセンティブ導入も議論されている。キリンやユニ・チャームなど一部企業は国際企業連合にも加盟申請する予定だ。

日本企業が条約づくりの段階から関与する例は多くなかったが、国際社会の流れに先んじて動けば企業価値を高められる。環境保全を巡る情報も集まり、対応を進めやすくなる。

条約は企業活動に大きく影響する。国連は民間企業や関連団体などに提言や情報提供を求めてきており、条約交渉の場では、企業を含めた広範なステークホルダーの意見が重要性を増している。日本企業の一層の積極関与を期待したい。

(編集委員 青木慎一)

 

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