日経SDGsフェス

プラごみは地上資源 循環経済の確立急げ(2) 「プラスチック資源循環で目指すカーボンニュートラル」企業講演

SDGs 循環型経済 講演

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「プラスチック資源循環で目指すカーボンニュートラル」をテーマに日本経済新聞社は9月15日、東京・丸の内でセミナーを開いた。プラスチックごみの削減とリサイクル促進を目指すプラスチック資源循環法が4月に施行された。石油などの地下資源に対し"地上資源"ともいえるプラごみを有効利用して新しいビジネス、経済価値を生み出す循環経済への移行においてリサイクルは重要な役割を担う。喫緊の課題である脱炭素の観点からも重要だ。

日本経済新聞社と日経BPは2022年9月12日~17日、SDGsをテーマにすべての人々や企業とともにSDGsの実現を議論する大型イベント「日経SDGsフェス」を開催いたしました。

このうち9月15日のプログラム「日経SDGsフェス プラスチック資源循環で目指すカーボンニュートラル」から、企業講演をダイジェスト版でご紹介します。

【企業講演】 社会実装へ垣根越え連携

水口 能宏 氏 日揮ホールディングス 執行役員 Chief Technology Officer(CTO)サステナビリティ協創部長代行

先ごろイタリアで開催された国際ガス会議に出席した。メインテーマはウクライナ危機に端を発するエネルギー安全保障と脱炭素化だったが、国際サプライチェーン分断に対し資源循環の重要性を訴える会社が多く、資源の乏しい日本にとって資源循環こそが世界に先駆けて取り組むべきミッションだと再認識した。

今後もプラスチックを使い続けるには海洋汚染、廃棄物の適正処理などの社会課題を解決する必要がある。

現在、毎年約900万トンのプラスチックが廃棄され、そのほとんどが熱源となるサーマルリサイクルに回されている。溶解して再製品化するマテリアルリサイクルは21%、化学的に分解し、新品同様につくり変えるケミカルリサイクルはわずか3%だ。

当社は水平リサイクルを可能にするケミカルリサイクル技術が3つあり、いずれも商業実績を有している。まず、ポリエステルのモノマー化技術。染料や多少の混紡材があっても新品同様に再生できる。次が廃プラスチックの油化ケミカルリサイクル技術で、通常の油化プロセスでは扱えない塩素分が多い原料も処理できる強みがある。第3が廃プラのガス化で、最もリサイクルが困難な混合プラスチックや不純物を含む原料の処理が可能。この技術を使えば国内で低炭素化水素を製造し、安価に提供することもできる。廃プラの資源循環にはGHG(温暖化ガス)削減効果もあり、繊維リサイクルで約30%、廃プラ水素製造では80%以上のCO2排出抑制が可能だ。

ケミカルリサイクルの導入比率が少ない最大の理由はサプライチェーン、バリューチェーンが未整備なため。解決には廃棄物処理会社からリサイクル会社、製造、販売、消費者まですべての関係者が連携してリサイクルを推進する仕組みづくりが必要だ。

そこで当社はコンソーシアムを組織し、共同で課題解決に取り組んでいる。社会実装には、業界の垣根を越えた連携、開拓者としての行動、法整備に関しての政府関係機関の理解、事業開発から運営まで手掛ける覚悟が必要だ。

◇     ◇     ◇

【企業講演】 廃プラ油化で資源循環

富永 賢一 氏 東洋エンジニアリング 執行役員 エンジニアリング・技術統括本部長代行 兼 次世代技術開拓部長

当社はこれまで石油・ガス生産設備などのハイドロカーボン系プロセスプラントのEPC(設計・調達・建設)事業を行うとともに、発電所や高速鉄道などの産業・インフラ設備を手掛けてきた。

現在、弊社が重点ロードマップとして取り組んでいるのが持続可能な航空燃料(SAF)開発、CO2資源化チェーン、燃料アンモニアの3項目。そしてこれに、プラスチック資源循環のソリューションとして廃プラのリサイクル技術開発を追加した。

日本では年間約2800万トンの原料ナフサを消費している。ここからエチレンプラントで約2443万トンの基礎製品が製造され、約964万トンがプラスチックに、残りが燃料やガスになる。最終的には822万トンの廃プラが生み出される。その中でリサイクルされるのは約197万トンのみで、廃プラを減らすことが化石燃料であるナフサの消費を減らすことになる。

そこで廃プラを油化し、ナフサの代替品にしてエチレンプラントに戻す循環型社会を目指している。見えてきた課題は2つ。1つ目は個別に出る廃プラをどう収集しプラントに集積するか。もう1つは技術的課題で、大型化する製造プラントに対応した熱分解装置の大型化だ。現在、タイの素材大手企業グループと廃プラ油化技術の共同開発を進め、既に実証プラントの油化プロセスは21年1月から稼働中で実証運転を続けている。

さらに当社の設計技術や経験を生かし、不純物の低減対策、ナフサ収率の向上、安定・連続運転の方法などを検討している。タイではまだ廃プラの18%しかリサイクルされていない。分別回収を行う適正回収も、ようやく始まったところだ。しかし協力しているタイの企業が国際持続可能性カーボン認証(ISCC)を取得するなど、循環型社会をつくる気運は高い。油化プロセスの脱炭素化など課題はあるが、廃プラ油化によるリサイクルは従来の石油化学設備を利用しつつ、化石資源使用を削減できるため、非常に効果的なソリューションになると考えている。

◇     ◇     ◇

【企業講演】 化石由来原料、使用ゼロに

藤原 正明 氏 サントリーホールディングス 執行役員 サステナビリティ経営推進本部 副本部長

30年の目標として、プラスチックをリサイクル素材または植物由来素材100%に切り替え、新たな化石由来原料の使用をゼロにする「100%サステナブルボトル」化に取り組んでいる。

汎用性が高く軽くて丈夫なペットボトルは多様な形状・デザインがありキャップが閉められる再栓性が利点だ。しっかり循環させることで環境負荷を改善できる可能性がある。当社では業界ガイドラインにのっとり、アルミキャップは使用しない、着色しない、ボトル本体に印刷しないなどの自主設計ガイドラインを設定し軽量化も進めている。

日本のペットボトル回収率は20年度で96.7%、リサイクル率は88.5%と海外に比べ非常に高い。ただ、実際にペットボトルに戻る「ボトルtoボトル」の水平リサイクル率は約16%に止まっている。ボトル以外のトレイや繊維などにリサイクルされることが多く、最終的に焼却されてしまう。しっかりペットボトルに戻すことが大切だ。

そのための取り組みを10年以上前に始めた。11年からはリサイクルペットボトルを開発し、安全性評価手法を確立。12年には業界で初めてメカニカルリサイクル素材100%のボトルを導入。18年には世界初の「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発し、新たに化石由来原料を使用する場合と比べてCO2排出量を約70%削減した。質の高い使用済みペットボトルを集めることも重要だ。自治体や法人・流通と連携を進め、分別回収する意味を伝える啓発授業を地域の小学校で展開するなど、分別の意欲向上に努めている。住民・行政・事業者が三位一体となることが重要で様々なステークホルダーとの連携強化が不可欠だ。

非食用の植物性由来原料を使用するバイオペットボトルの開発を米アネロテック社と共同で進めている。ペットボトルをつくる材料の約7割を占めるテレフタル酸をウッドチップから作り出すもので、早期実用化を目指す。使用済みプラスチックの循環に挑む会社を20年に設立し、現在は40社まで参加企業が拡大した。

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【企業講演】 目的別にスキーム構築

水野 雄太 氏 サティスファクトリー リサイクルエンジニア

当社の主事業である廃棄物マネジメントは、廃棄物を出す企業の対策課となり、お客様の廃棄物の減量やリサイクル、有価物売却、コスト最適化などの実行支援を行うものだ。実際の処理は全国約4000社のパートナー企業が地域別、品目別に行っている。

当社にはそれに加えて資源循環スキーム構築の機能がある。廃棄物処理が収集運搬業者と処理業者、処分方法とセットになっているのに対して、資源循環では再利用方法を定め、必要なプロセスを選んでフローを構築する。処理や運搬方法、それに適した企業を選定し、連携させるハブ機能を有している。

資源循環の主役であるプラスチックの動向は日々変化している。プラスチック関連法の施行に代表される多方面からのプレッシャー、再生プラスチックの市場価格高騰、ケミカルリサイクルやマテリアルリサイクルの技術開発や実証事業化などがその例だ。企業としてプラスチック資源循環を推進するにはSDGコンパスのフレームワークと考え方が参考になる。企業として取り組む方針を示し社内外に発信することが重要だ。

企業が資源循環に取り組む目的は環境負荷の低減、企業価値の向上、ステークホールダー対策、各種規制への対策、新規事業開発の5つが考えられる。優先すべき項目はその企業の理念や方針、業種業態、市場、投資家や株主の構成などで変わる。

実践のポイントを3点あげると、ハードルが高いケミカルリサイクルなどに先んじてまずは「熱回収」から始めることだ。次に使用済みプラスチック製品の再資源化もしくは有価物化。これについては単一素材があるか確認してほしい。単一素材はマテリアルリサイクルにとって大きな可能性を持つからだ。3つ目は使用済みプラスチック製品をアップサイクルし、自社でPRしたいという要望。これは細分化された行程を担当している関係企業の協力を受けることが大切。CO2削減の観点では資源循環は高額な設備投資が不要で費用対効果も大きく、すぐに取り組むべきだ。

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