BizGateインタビュー/ウェルビーイング

著名クリエーターの「サボり方」 自分の機嫌とるスキル 『よく働き、よくサボる。 一流のサボリストの仕事術』エディター ・後藤亮平氏に聞く(上)

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「サボる」は悪いイメージで使われがちな言葉だ。怠ける、ずる休みに近い意味合いを帯びる。しかし、「息抜きやリフレッシュととらえ直せば、ポジティブな時間に変身する」と、エディターの後藤亮平氏は視座の切り替えを提案する。第一線の表現者やクリエーター13人にそれぞれの「サボリ方」を聞いた『よく働き、よくサボる。 一流のサボリストの仕事術』(扶桑社)には自然体でスマートなそれぞれの「サボり術」が凝縮されている。

全員に共通する「しなやかな公私混同」

テレビ朝日のウェブサイト「logirl(ロガール)」で連載中の「サボリスト〜あの人のサボり方〜」を本にまとめた。テレビプロデューサーや映画監督、ファッションデザイナーなど、13人の職業や立場は様々で、時間の使い方も十人十色だ。しかし、全員におおむね共通しているのは、「しなやかな公私混同」(後藤氏)だという。ほぼ全員がクリエーティブ業種という事情もあって、オンとオフに時間の切れ目が少ない。ついつい働きすぎになりそうなところだが、巧みにモードを切り替えている人が多い。

たとえば、テレビ東京で『ゴッドタン』や『あちこちオードリー』などをヒットさせたテレビプロデューサーの佐久間宣行氏は本業で忙しい中でも、映画やテレビドラマ、小説などのエンターテインメントに触れる時間をひねり出して、刺激を受けることを怠らない。仕事の延長線上ではありながら、多様なカルチャーに接するためにスケジュールを空ける。クリエーティブな人は「仕事とサボりの境界線が曖昧。仕事と遊びをシームレスに行き来するように過ごす」(後藤氏)。

仕事とサボりは正反対のように意識されやすい。だが、後藤氏は「サボっているように見えて、実は発想の切り替えや無意識のリサーチなど、結果的に仕事につながる過ごし方を選んでいるケースもあった」と振り返る。トップクラスの将棋棋士には、オフの時間にチェスやバックギャモンに打ち込む人が少なくない。どれも駒を動かす盤ゲームだから、頭が休まらないのではないかと素人は考えがちだが、そうではないのだという。

常に新しいアイデアを期待される立場はきつい。自分を追い込みすぎるのは禁物だ。プレッシャーと弛緩(しかん)のバランスに、自分なりの折り合いをつけていくスキルが欠かせない。「自分にとって心地よく安らげる行為や場所などを生活の中で上手に見付けて、スケジュールに組み込んでいる」(後藤氏)。創造の日々を重ねているプロフェッショナルたちは平日と週末といったお仕着せの区切りではなく、自らアクセルを踏んだりゆるめたりする「自分ドライブ」のすべを会得しているようだ。

何もしないことを積極的に選ぶ人もいる。テレビアニメ『オッドタクシー』で文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門新人賞を受賞した、アニメーションディレクターの木下麦氏の場合は行き詰まったら、「さっさと寝る」そうだ。いたずらに悩んで時間とエネルギーを費やすのではなく、いさぎよくいったんはあきらめてしまうのも、心身の健やかさを保つうえで意味が大きい。「誰が正解とかお手本とかいうのではなく、全員が自己流。だから、読み手も自分が共感できるサボり方を見付けるヒントにできる」と、後藤氏は自分好みのサボり方探しを促す。

 

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