BizGateインタビュー/ウェルビーイング

ウェルビーイング経営 真価問われる年に 第一生命経済研究所ライフデザイン研究部長 宮木由貴子氏に聞く

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心と身体だけでなく社会的にも良好な状態を目指すウェルビーイングへの関心が高まっている。企業や自治体での取り組みが広がっているうえ、「GDPを超えて」をテーマに2024年9月に開催する国連未来サミットでも重要な議題になりそうだ。今後ウェルビーイングへの取り組みはどう進むのか。第一生命経済研究所取締役ライフデザイン研究部長の宮木由貴子氏に聞いた。

――ウェルビーイングへの関心が高まっています。

豊かさや幸せに関する発想の転換が背景にあります。これまでは組織や国が経済的に豊かだと従業員や国民が幸せになれると考えられてきました。しかし、アカデミックな分野で研究が進み、従業員や国民が幸せだと組織や国が豊かになるということがわかってきました。言い換えれば、個人が幸せであると感じていることが、企業や社会のエネルギーになるということです。

企業は中期経営計画や経営ビジョンに「幸せ」「ウェルビーイング」を取り入れるようになりました。チーフ・ウェルビーイング・オフィサー(CWO)といった専門のポストを置く企業も目立つようになりました。経営者が従業員のウェルビーイングに配慮するのは道徳的な判断であると同時に、ビジネス的にも理にかなっているからです。実際に、いくつかの学術研究でも、幸福は生産性を高めることが明らかになっています。

――企業は具体的にどのような取り組みをしていますか。

企業の取り組みの代表例は従業員のつながりを強くして交流を活発にすることです。組織内のコミュニケーションや人とのつながりが、従業員の幸せを高め、生産性を向上させることがわかってきたからです。また、学ぶ機会を提供することも従業員のウェルビーイングを高めます。リスキリングを通じて、将来の仕事に役立つ知識を身に着けられることはもちろん、学ぶことを通じて成長を実感することが幸せにつながっているからです。

パーパス(目的)に「ウェルビーイングの実現」を据えている企業が増えています。例えば、自動車会社は従来、自動車を売ることが目的とされていました。しかし現在では、自動車を売ることは目的ではなく手段であり、目指すのは人々が安全で楽しい暮らしを実現するための移動を支えることだと考えています。住宅会社は、幸せな場所の創出を目的とし、住宅の提供をその手段と位置付けています。保険会社も、保険を売ることが目的ではなく、保険やライフデザインの提供を通じて人々の夢や目標に向けた資産形成などに役立ちたいと考えています。自社の商品・サービスを通じて社会に価値を提供し貢献するという姿勢は、従業員のモチベーションも上げます。顧客だけでなく、従業員の満足度も上げるのがウェルビーイング経営といえます。

――ウェルビーイングは、「Beyond GDP(GDPを超えて)」をテーマに9月に開催される国連未来サミットでも議題となる見通しで、ますます関心が高まっています。今後どのように取り組みが進むのでしょうか?

経済的な豊かさを示す国内総生産(GDP)に代わるものとして、ウェルビーイングを軸にした新たな指標の開発が世界で進んでいます。「幸せ」の感じ方は文化的背景や個人の価値観などで大きく違うため、単純な比較は難しいと思いますが、こうした指標づくりを通じてウェルビーイングへの取り組みが進む意義は大きいと思います。

企業経営のテーマにはトレンドがあり、これまで一過性のブームに終わったものもありました。しかし、人々の幸せを追求するウェルビーイングの視点は、企業経営だけでなく、環境保護と開発の両立といった社会課題を解決するうえでも有効な大きなテーマです。企業にとっては、持続的にウェルビーイングに取り組む姿勢が問われる1年になりそうです。

(聞き手は町田猛)

 

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