SDGs(持続可能な開発目標)にデジタルトランスフォーメーション(DX)……。ビジネスの現場には次々課題が降ってくる。あなたの職場は持続可能ですか。今回は3月末に迫るインボイスの発行登録をすべきか悩む個人事業主に、税理士の菊池典明氏が登録すべき3つの理由を示します。
今まさに迷っている方がたくさんいると思います。相談者のような個人事業主や声優などのアーティストら、様々な人がこの問題と向き合っています。回答としては、登録をした方が将来的に損がないと考えます。確かに一時的に収入が減る可能性はありますが、そこだけを見て判断をするのは禁物です。
インボイスの発行登録 企業間取引の前提に
理由は、インボイスの発行登録がこれからの企業間取引のサプライチェーンに参加する前提になるからです。インボイスがない取引では消費税の納付額を計算する際に、支払った消費税を控除できませんから、インボイスが発行される取引に比べ、納税負担が重くなります。例えば、11万円(消費税1万円込)で業務を委託した場合、インボイスが発行されないと支払った消費税(仕入税額)を控除できず、消費税納付額が増えます。取引先はそれを避けるために、登録を望むわけです。
もちろん、あなたのように消費税の納付を免除されてきた小規模な事業者は、インボイスの発行登録をした後は消費税を納付しなければなりませんから、その分の収入が減ることにはなります。ただし、多くの方が勘違いされているのですが、消費税10%分の収入がすべて減るわけではありません。相談者の方も取引先と同様に、業務のために様々な物品やサービスの購入で支払った消費税を仕入税額として控除できるからです。
たとえば、ホームページ制作の場合、制作に使用するパソコンや機材をはじめ消耗品や通信費、水道光熱費など様々な経費で支払った消費税を、売上時に顧客から受け取る消費税額(売上税額)から控除できます。つまり、納税額は売上税額から経費として支払った仕入税額を引いた金額にとどまるのです。
小規模事業者に3年間の納税額軽減措置
また、2023年の与党税制改正大綱では、所得1000万円未満で納税を免除されてきた事業者に、インボイス発行登録した場合、制度導入後3年間の納税額を売上税額の2割に軽減する措置が盛り込まれました。実現すれば、減収幅が抑えられる上に、非常に手間がかかるインボイスの処理負担も軽くなるでしょう。導入後の3年間で収入を増やし、インボイスを効率的に処理できる体制を作れば、取引継続に支障はなくなるはずです。
さらに中小企業庁がインボイス登録をする免税事業者に対して、小規模事業者持続化補助金などの資金支援策を用意しています。業種にもよりますが、これらの補助金を活用することで当面の経費負担を抑えられる可能性があります。
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