労働人口の減少と連動して、人材獲得競争が始まっています。各社が優秀な人材を求めており、採用の難易度は少しずつ増しています。そうした中、注目を集めているのが「リファラル採用」です。リファラル採用とは、従業員が自分の知人・友人を会社に紹介する採用手法を指します。
紹介された知人・友人に対して適正な選考を行う点が、親族などからの紹介で入社を確定する「コネ入社」と異なる点です。企業はリファラル採用を通じて、労働市場に求職者として出てこない人材を獲得することができます(※1) 。そのため、海外では主要な採用手法の一つになっています。
国内でも導入広がる
近年は日本でもリファラル採用は広がりを見せており、筆者はMyRefer社とリファラル採用に関する共同研究に取り組んでいます。本稿では、共同研究を通じて収集・整理した、リファラル採用の学術研究をもとに、リファラル採用の「効果」について解説します。
リファラル採用が主要な採用手法の一つということもあり、海外では、リファラル採用の研究が積み重ねられています。それらの研究が示すのは、リファラル採用には一定の効果があるということです。例えば、リファラル採用と他の採用手法を比較した研究があります。その研究によると、リファラル採用の方が選考に合格する可能性が高く、なおかつ、内定を承諾する可能性が高いことが分かりました(※2) 。
リファラル採用の効果は、採用時のものにとどまりません。入社後にもプラスの影響をもたらします。例えば、リファラル採用で入社した従業員の方が、離職する可能性が低く、更には、会社や仕事に対して満足する傾向があります(※3) 。定着度も満足度も共に高いのが、リファラル採用の特徴です。
効果がある2つの理由
リファラル採用が、入社前と入社後の両面で効果をもたらすのは、何故でしょうか。研究の中では、2つの理由が挙げられています。「事前にスクリーニングされていること」及び「リアルな情報を得られること」という2点です(※4) 。順番に説明しましょう。
<理由1>事前にスクリーニングされていること
従業員が自分の知人・友人を会社に紹介するのは、それなりに緊張するものです。変な人を紹介すると、会社における自分の評判に傷がつくかもしれません。そのため、知人・友人を紹介するに当たって、従業員は「自社に本当にふさわしいか」を検討します。すなわち、事前に選抜をするため、リファラル採用の被紹介者は、その会社に適合している可能性が高いのです。
<理由2>リアルな情報を得られること
リファラル採用は他の手法と異なり、候補者は、自分の知人・友人経由で選考への参加を決めます。その際、知人・友人から、その会社に関する様々な情報を得ます。一般の採用ではなかなか出回らない、リアルな情報が手に入ります。そのため、入社後に「こんな会社とは思わなかった」となる「リアリティーショック」(※5) が生じにくいと言えます。