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PwC岩花氏「国内でメタバース活用事例の蓄積進む」 日経メタバースコンソーシアム未来委員会メンバーに聞く

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日本経済新聞社が2022年度に開催した「日経メタバースコンソーシアム未来委員会」に、幅広い企業のメタバース事業戦略の策定支援などに携わるコンサルティングファームの立場から参加したのが、PwCコンサルティング・ディレクターの岩花修平氏だ。萌芽期にある日本のメタバース市場を概観しながら、「社会受容性の醸成など、市場活性化に向けて乗り越えるべき課題は複数ある」と語る。岩花氏に日経メタバースコンソーシアムに参加した印象と今後の展望について聞いた。

多くの課題に共感 多角的に議論する貴重な場

――未来委員会においては、メタバースの普及や浸透に向けた課題を整理して提示した。豊富なコンサルティングの知見に裏打ちされた論理的分析に、他の委員も高い関心を示していた。

「メタバースには大きな期待が寄せられている一方、技術的な制約などから、現時点で実現できることには限りがある。理想と現実のギャップや初期投資の大きさ、ビジネスモデル構築の難しさなどが市場活性化を妨げる一因となっている。課題が存在することに多くの委員が共感し、解決に向けた方策を多角的視点から議論できた。アカデミアや行政、民間企業など、多彩な有識者が一堂に会する場は貴重だった」

――根本的な課題として、メタバースに関する社会受容性を高めることの重要性も指摘した。

「現状、多くの人にとってメタバースは、なじみのない先端テクノロジーだ。この1年ほどで多少落ち着いてきたが、メタバース空間内でのコンテンツの取引などでもよく使用されるNFT(非代替性トークン)にまつわるトラブルの頻発などが、社会受容の醸成を遅らせている。第2回の未来委員会では、社会基盤としてのメタバースの可能性を議論した。この先、メタバースを社会を支える基盤とするためには、社会受容性を向上させる必要がある。これは避けて通れない課題だ」

「壁は高いが、過去に目を向ければ光もみえる。例えばインターネットも、最初は多くの人にとってなじみのないものだった。社会に大きなインパクトを与えるビジネスモデルが構築されてユースケース(活用事例)が積み上がり、その有用性が広く認識されたからこそ、ある種の社会基盤としての役割を担うほど普及してきた」

戦略の浸透やエンゲージメントに前向きな影響

――第3回の未来委員会では、メタバースで多様化する働き方をテーマに掲げた。PwC Japanグループは入社式をメタバースで行うなど活用に積極的だ。

「入社式だけでなく、毎日のミーティングや、アイデアを出し合って精査していく『アイディエーション』などにもメタバースを活用している。メンバーが実際にいる場所に隔たりがあっても、メタバース空間を共有することでクリエーティビティーが刺激されることを私自身も実感している」

――22年には全社員約3000人を対象とする実証実験も行った。

「当社の戦略を社員に浸透させることなどを目的に、ビジネスとエンターテインメントを融合した多彩なプログラムを用意した。VRゴーグル以外に、パソコンやスマートフォンなどのデバイスからもアクセスできるようにした。その結果分かったことは、メタバースの活用が戦略の浸透やエンゲージメント(会社への貢献意欲)に前向きな影響をもたらすということだ」

――コンサルティングサービスを通じ、メタバース事業に新規参入する企業の戦略策定などを支援する立場から、日本におけるメタバースの現状をどのように捉えるか。

「運輸やインフラ、人材派遣業など、幅広い企業からメタバースに関するコンサルティングの依頼を受けており、市場の将来性に強い手応えをもっている。ただ、メタバースに関しては、『まずどんなものなのかを知りたい』という要望も多く、通常のコンサルティングサービスに加えて、勉強会や体験会も開いている」

「日本のメタバース市場はまだ萌芽期だが、新規事業機会として大きな期待が寄せられていることは間違いない。今後、当社が携わったプロジェクトも複数スタートする予定だ。順調にユースケースが蓄積されれば、メタバースの基盤化に向けた歩みも進むだろう。インターネットのように、当たり前に人々の生活やビジネスを支えるものとなるためには何が必要か。広く社会の動向に目を配りながら分析を続けていく」

(聞き手は原田洋)

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