ヒットの軌跡

「氷結」が変えたチューハイ界 おしゃれドリンクに進化 「キリン 氷結」(上)

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飲み手・料理・場面を選ばない自在感

飲み方の面で「食中酒」という居場所を広げたのは、「氷結」の功績だろう。焼酎感が強めの缶チューハイは食事を邪魔しがちだ。酒っぽさが料理とぶつかりやすい。しかし、すっきりした味わいの「氷結」は食中酒に向く。「無糖タイプはさらに食事との相性に優れている」(加藤氏)。様々な料理が出てくる宴席でも好まれる理由だ。

飲まれ方はビールに似ているが、週末に昼間から飲みやすいカジュアル感はビールに勝る。焼酎ベースの缶チューハイに比べて、飲み手を選ばないので、「ホームパーティーのような場でも選ばれる傾向がある」(加藤氏)。動画CMでは仲間との出会いや集まりをテーマに「CLUB氷結」を提案。5月には東京・豊洲で3日間の屋外イベントを開いた。

出張帰りに女性が新幹線で飲んでも恥ずかしくないイメージ

居酒屋や大衆酒場の雰囲気から切り離したことが「氷結」の成功につながったといえるだろう。開発段階では「缶チューハイを買う姿を他人に見られるのは恥ずかしい」という女性の声があったという。「出張帰りに女性が新幹線で飲んでも恥ずかしくない」という商品イメージは女性の購入者を増やし、それ自体が「氷結」のブランドになった。

明示はされていないものの、『サラダ記念日』でプロポーズされた女性は缶チューハイを飲むパートナーにやや距離感をみせているようにもみえる。「シロップ味のチープな酒」「安く酔うための手軽な酒」といった目線は1987年当時の缶チューハイに向けられる、女性の一般的な意識だっただろう。そうしたまなざしを反面教師に開発され、14年後に登場した「氷結」のスタイリッシュな缶デザインは飲み姿が様になる缶チューハイを誕生させた。

飲み手の裾野は若い層にも広がった。おじさんのイメージが強かった「焼酎」から離れ、ウオッカベースを打ち出した結果、「チューハイ」という言葉自体がジンフィーズやハイボールのような炭酸系カクテルのムードをまとった。「酎」という漢字の読みだけを残して、中身(スピリッツ)をウオッカに変えるというのは、今では当たり前だが、「当時は大胆な決断だった」(加藤氏)。「みんなが驚くようなチューハイをつくる」というコンセプトが開発チームの冒険を支えた。

年齢と性別の枠を超えて、飲み手の幅を広げたことが「氷結」のヒットを呼び込んだ。同時に、缶チューハイ市場全体のパイも広げた。ヒットの原点となったのは、「企画段階からのしっかりした作り込み」(加藤氏)。ストーリーやユーザー体験(UX)など、後にマーケティングで重視されるようになった発想が当初から盛り込まれていたのは、先見の明といえる。

「とりあえずビール」の時代に、「最初に選ばれる銘柄」として支持を広げたキリンビール。次に訪れた、1杯目から注文がバラバラな「多様性の時代」にも、豊富なバリエーションを持つ「氷結」でニーズに応えた。後編では重ねたリニューアルや「無糖」のヒット、多彩な飲み方アレンジなどを取り上げる。

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