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「バドワイザー」流 立ち位置変えて顧客をハッピーに 藤田康人・インテグレートCEO(上)

マーケティング 商品戦略 ウェルビーイング SDGs

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ウェルビーイングをマーケティングに生かす取り組みが勢いづき始めた。健康や幸福といった、割と意味の広い言葉だが、マーケティングコンサルタントでインテグレート最高経営責任者(CEO)の藤田康人氏は「消費者に新たな価値を提案できる、汎用性の高い考え方。市場拡大が見込まれる」と、ビジネスへの活用を勧める。味の素出身で、キシリトールブームを仕掛けたことで知られ、『ウェルビーイングビジネスの教科書』(インテグレートウェルビーイングプロジェクトとの共著、アスコム刊)を書いた藤田氏に、ウェルビーイングを仕事に取り入れる上でのポイントを聞いた。

ウェルビーイングを生かしたマーケティングの成功事例として藤田氏が挙げるのは、「バドワイザー」ブランドで有名な、ビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABI、ベルギー)だ。ビールはアルコールで人を酔わせ、憂さを晴らしてくれるからと考えるのは早計だ。同社は「人々を集めるために、我々は存在する(We exist to bring people together)」というメッセージを掲げている。つまり、個々の飲み手を酔わせることだけが目的ではなく、人々が集う「場」や「機会」を用意することを重んじているわけだ。

ビールをウェルビーイング的な商品に再定義

こうした取り組みに関して、藤田氏はビールという飲み物を「『仲間との交流で得られる心の充足感』を生み出すものとして再定義した」と位置付ける。「友達ができるビール」と言い換えることもできそうだ。生産している商品は同じなのに、商品と消費者の間柄や、商品が果たす役割をとらえ直すことによって、気持ちを豊かにし、仲間とのつながりを深めるというウェルビーイング的な商品に変容させた。商品を通じた「幸福な時間」の創造ともいえる。こういったアプローチは「様々な商品・サービスに応用が可能」と、藤田氏はみる。

似たような手法は国内市場でも進み始めている。たとえば、日本のクラフトビール最大手であるヤッホーブルーイング(長野県軽井沢町)が好例だ。看板商品の「よなよなエール」は大勢のファンに支えられて、着実にマーケットの裾野を広げてきた。同社が力を入れてきたのがファン向けのイベント開催。2015年にファンイベント「超宴(うたげ)」を始めた。今では会社側が仕掛けなくても、ファン同士が進んでイベントを催すまでに盛り上がっている。熱狂的なファンを育てる「ファンマーケティング」は「よなよなエール」をコンビニでも買えるメガブランドに押し上げた。

バドワイザーに代表される成功事例を踏まえて、藤田氏が提案するのは、「関係性のリデザイン」だ。既に存在する商品・サービスを、現在の視点からとらえ直し、別の価値を見いだすことを指す。その際、ビールを「飲む」という1点にとどまらず、「集まる」「語らう」といった多面的な行為ととらえることが肝心だ。

職場や業種に関係なく、幅広いビジネスパーソンが取り組みやすいのは、この手法が新規の商品開発を必要としないところだろう。それぞれの商品・サービスが備えている役割や位置付けを、今の時代感覚に即して見直せば済む。もともと消費行動は多義性を帯びているので、別の側面から光を当てれば、同じ商品・サービスからいくつものメリットや使い道を引き出せる。「どんな立場・業種のビジネスパーソンにも試せる考え方だ」と、藤田氏は活用を促す。

 

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