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疲労回復促す衣服「リカバリーウエア」に関心 テンシャル 流通の法整備に対応

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「日本人は睡眠不足」といわれてきた。睡眠不足が続き、「睡眠負債」が膨らんだ状態になると、日中のパフォーマンスが低下するほか、生活習慣病など健康リスクも高まる。経済協力開発機構(OECD)が行っている調査では、毎年、加盟国中、平均睡眠時間が最も短い国に数えられている。長時間労働をやめ、睡眠や休養をとることが望ましいが、なかなか変えられない。

しかし、新型コロナウイルス禍を1つのきっかけに、こうした状況に変化の兆しがでてきた。総務省が5年ごとに行う「社会生活基本調査」では、2021年、過去20年減少し続けていた睡眠時間が増加に転じた。16年に7時間40分であったのに対し、21年は7時間54分に伸びた。同年は休養・くつろぎの時間が増加、移動(通勤・通学を除く)、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌及び交際・つきあいの時間が減少している。つまり家で過ごす時間が増え、睡眠や休養にかける時間が伸びた。今後のデータも見ていく必要があるが、コロナ禍がきっかけになり、睡眠に対する意識は高まっているようだ。

休養に対するニーズも強まっている。一般社団法人日本リカバリー協会のまとめによると、休養行動や疲労回復行動などを衣食住をはじめとした幅広い分野で推計した「休養」市場の規模は19年時点で3.9兆円に達し、今後も拡大が予想されるという。

医療機関での評価試験が必要なカテゴリーも

そうしたなか、着用することで疲労回復を促す「リカバリーウエア」が関心を集めている。流通に関する法整備が進み、消費者にとって購入時の判断がより容易になることから、市場の拡大が期待されている。

リカバリーウエアは、これまで医療機器の一種「一般医療機器(クラス1)」の「温熱用パック」として販売されていることも多かった。「一般医療機器(クラス1)」は、不具合があっても人体への影響が極めて低いところから、認定機関への届け出のみで取り扱いが認可されている種類だ。医療用のピンセットや救急絆創膏(ばんそうこう)もこのカテゴリーで販売される。

しかし、22年10月に法律が一部改正された。医療機関での評価試験が必要な「一般医療機器・家庭用遠赤外線血行促進用衣」という新たなカテゴリーを設けたのだ。一般医療機器としてのリカバリーウエアは今後、このカテゴリーにおいて販売されることになる。1年間の移行期間が設けられており、「一般医療機器(クラス1)」としてリカバリーウエアを販売する場合、期限である23年12月13日までに届け出を行う必要がある。届け出が完了しなければ、医療機器としての販売はできなくなり、それ以降は「一般衣料」としての販売しかできなくなる。

リカバリーウエア「BAKUNE」を累計20万枚販売している、TENTIAL(テンシャル、東京・中央)は22年10月時点から対応に着手。23年10月、BAKUNEシリーズのすべてのウエアにおいて「家庭用遠赤外線血行促進用衣」の基準をクリアした。

BAKUNEは、「セルフレーム」という特殊繊維を用いることで、遠赤外線による輻射(ふくしゃ)による血行促進効果を持つ。着心地にも配慮した生地で、パジャマや部屋着として着用することで、休んでいる間の疲労回復をはかる。「医療機関での検証に費用も時間も要したが、市場を拡大していく上でエビデンスによる裏付けは必要不可欠と考えている」(代表取締役CEOの中西裕太郎氏)

BAKUNEは発売1年9カ月で累計販売数10万枚、2年5カ月目に20万枚を達成したヒット商品。当初はアスリートなど限られた層に利用されていたが、現在は一般のビジネスパーソンも利用しており、主要購入層は40〜50代の男女となっている。上下で2万数千円と高価な商品だが、最近ではとくにギフト需要などで好調だという。

「日本がリードしている分野」

TENTIALはもともとスポーツメディアの企業として設立された。中西氏はかつてプロアスリートを目指していた経緯もあり、「スポーツの知識を生かし、健康により人のポテンシャルを上げたい」との思いから同事業を立ち上げた。D2C(Direct to Consumer)の手法で消費者に直接販売をしている。デジタルで顧客とつながり顧客データを収集、分析するほか双方向コミュニケーションを行い、ファンを形成。とくに顧客の声をスピーディーに商品に反映できるのが強みだ。例えばLINEで「パッケージを変えてほしい」など意見が寄せられた場合、数十分で対応することもある。

東京、名古屋、大阪に実店舗6店のほか、取扱店も全国に展開する。売り上げは電子商取引(EC)の割合が大きいが、高価な商品だけに、実物を見て、試着しその着心地や効果を体験できる実店舗も重視している。

現在実現に向け力を入れているのが、企業向け物販をはじめとするBtoB事業だ。これまでにNTT東日本、パラマウントベッドなどと連携し、従業員の健康課題解決に向けたモニタリング・検証のプロジェクトを行った。従業員向けの物販やセミナーの事業化も検討中だ。

「リカバリーウエアを含む機能性ウェアは海外にはあまりない。日本がリードしている。世界的な成長分野として力を入れていきたい」。中西氏は将来の海外展開を視野にこう意気込む。

効果的な睡眠などを通じて疲労を早く取り除きたいというニーズは強い。一方、そうしたリカバリーウエアの効能に関して、何を基準に判断すればよいか迷う消費者もいるだろう。法改正がそうした消費者の購買を後押しすれば、市場はさらに拡大するかもしれない。

(ライター 圓岡志麻)

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