日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

SDGs 世代を超えたムーブメントで社会を動かす 渋谷教育学園渋谷高校1年生×T&Dホールディングス 森中哉也副社長

SDGs 脱炭素 持続可能性

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社会課題の解決に向けたビジネスアイデアを競う「第5回日経ソーシャルビジネスコンテスト」の大賞に、渋谷教育学園渋谷高校1年生の二酸化炭素(CO2)を削減するアプリ「かけいぼぐらし」が選ばれた。一般部門で高校生が大賞を取るのは初の快挙だ。受賞したメンバーと、コンテストに協賛し、審査員を務めたT&Dホールディングスの森中哉也副社長が対談し、SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みについて意見を交わした。

<対談の参加者>
渋谷教育学園渋谷高校(以下、渋渋)1年生 根来一葉さん、粕谷遥乃さん、山本悠太さん、神谷薫さん、荻野水彩さん、フィンチ萩原明さん、大塚嶺さん(学年は2022年3月時点)
T&Dホールディングス代表取締役副社長 森中哉也氏

気候変動の学習から生まれたアプリ「かけいぼぐらし」

――大賞を受賞した皆さんのアイデアは、暮らしの中のCO2排出量をゲーム感覚で削減できるアプリ「かけいぼぐらし」です。アプリでは絶滅危惧種のキャラクターがCO2排出量削減のヒントを提案してくれるなどユーザーが楽しんで使えるよう開発しています。

森中 一般の部で高校生の大賞受賞は初めてということで、素晴らしい実績を残されたと思います。CO2削減は日本に暮らす一人一人が我がこととして取り組めば、一層進んでいくものと考えています。家計簿にヒントを得たアプリは非常にユニークな発想ですよね。開発のきっかけは何でしょうか。

根来 ありがとうございます。きっかけは気候変動に関する学習でした。私たちが参加した京都大学大学院の宇佐美誠教授(地球環境政策論)の特別講義をまとめたものが、「気候崩壊」(岩波書店)というタイトルで書籍化されました。気候変動についてさらに学びを深めようと取り組んだのがアプリ開発です。アプリを選んだのは身近で毎日使うツールだからです。

森中 アプリ開発で工夫した点などはありますか。

大塚 メンバーのアイデアを聞きながら、楽しみながら使えるアプリにしました。今はベータ版を開発しています。

フィンチ萩原 ユーザーに興味を持ってもらえるようなかわいいキャラクターにするという点を意識しました。コンテストでは社会人や大学生のSDGsへの真剣な取り組みを肌で感じることができました。

森中 チーム全員のアイデアと開発技術で良いアプリを作れたのですね。

――開発したアプリは企業からの広告収入で、利益を生み出すことができるようにした点も評価されました。

粕谷 CO2排出量は地球の未来に対する一種のコストで、お金と似た側面があると気付きました。CO2排出量の家計簿があれば、排出量が「見える化」され削減ができると考えたのです。ビジネスは、事業内容はもちろん、収益を考える必要があることを実感しました。

根来 SDGsについては学んできましたが、「ソーシャルビジネス」として捉えた時に初めて利益について考えました。最終審査会では、社会性と利益のバランスを取ることに皆さんが注目していて新鮮でした。

森中 社会課題を解決した上で、適正な利益を生み出すことは非常に大切なことです。また、そのような事業でなければ企業として生き残っていけません。企業の存在意義を「パーパス」といいますが、企業が利益を上げていくためには社会に貢献することが前提になると考えています。皆さんがコンテストを通じ、利益について考えることができたことは非常に価値のあることですね。

「私たちの渋渋からムーブメントを起こせた」

――日経ソーシャルビジネスコンテストへの参加を通じて得たことは何でしょうか。

粕谷 CO2排出量の削減を広く意識してもらうシステムをつくるために、高校生である私たちが目指したいことや、私たちの世代の役割を明確にできたことです。大きな成果は、私たちの学校である渋渋からムーブメントを起こせたことです。

根来 私が環境問題に関心を持ったのはシンガポールで暮らしていた、小学6年生の時です。シンガポールは環境教育に非常に力を入れていて楽しみながら学べました。例えば家でカップケーキを作って、ケーキを売って得た利益を寄付するといった授業がありました。こういった経験を通じて「自分が何かを変えることができる」ということを実感でき、何事にも挑戦し続けるというマインドセットを身に付けることができました。

渋渋は自分に興味があることをとことん突き詰めることができる学校です。自分の考えを発展させるために先生からアドバイスをいただけるなど、何かをしたいと思えば実現できる環境が整っています。

森中 学業以外でも、皆さんの興味がある分野や社会課題について、学校が全面的にサポートしてくれるのですね。

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