サバイバル経営Q&A

全部やれば職場が持続不能? SDGsの目標が多すぎる サバイバル経営Q&A 白井旬・職場のSDGs研究所代表

経営 競争戦略 SDGs

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SDGs(持続可能な開発目標)にデジタルトランスフォーメーション(DX)……。ビジネスの現場には次々課題が降ってくる。時には対応が難しく右往左往することも。あなたの職場は持続可能ですか。ビジネスパーソンが直面する悩みや疑問に専門家が答えます。今回はSDGsの目標が多すぎて対応に苦慮する経営者に、職場のSDGs研究所代表の白井旬氏が考え方を提案します。

取引先からSDGsに関連した取り組みを今後どう進めるか、情報の開示を求められています。全部で17もある目標には、環境対策など当社だけでは対応しきれないものが多い。何をどう取り組み、どう伝えればよいかわからず困っています。

SDGsについて企業のみなさんがハードルが高いと感じる原因のひとつは、「17の目標、すべてに取り組む必要がある」と感じてしまうことです。すでに取り組んでいる企業のホームページなどを見ると、17目標すべてを示し、それぞれについて箇条書きで取り組み内容が書いてあることが多いので、そう感じるのも無理もありません。

 

全目標に対処は困難 得意分野を最大限に生かす

17目標には、貧困や飢餓の根絶など一企業だけで実現できないものがいくつもあります。長時間労働の是正など一見すると個別企業で対応できそうな目標も、実は企業同士の関係に左右される。元請け企業が労働時間の削減を進めたところ、そのしわ寄せが下請けに向かい、残業が大幅に増えてしまうようなこともある。すべての目標に一度に対応するとなると、かなり無理があるのは確かです。

しかし、SDGsの本質である「本業で社会課題を解決する」という視点から考えると、必ずしも17の目標すべてを取り組む必要はないことが分かります。企業には、それぞれの得意分野や強みとなる技術・サービスが存在します。それを最大限に活かし、社会課題を解決(社会的価値)し、事業として発展させ持続させる(経済的価値)ことは、会社にとってのSDGs対策になる。反対に不得意な分野で無理をして社会課題の解決にあたっても、余計なお金や人員、時間がかかり、社会的価値と経済的価値の両方を生み出すのが難しくなってしまうからです。

創業73周年を迎える熊本県の郷土料理青柳(熊本市、倉橋篤社長)は、得意分野を生かしてSDGs対策を進めている企業の一つです。2016年に熊本地震で本店を含む3店舗が被災し営業停止に。20年に本店を再オープンすると、今度は新型コロナウイルス禍で営業自粛をせざるをえなくなるなど、6年間は苦難の連続でした。しかし、その間も「食の目利き・人の目利き・時の目利き」という青柳の3つの強みを社内外に打ち出し、成果を上げてきました。

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