日経SDGsフェス

宇宙ビジネスでSDGs達成に貢献 注目企業は 「NIKKEI宇宙プロジェクトフォーラム」トークセッションリポート

イノベーション SDGs 採録 宇宙

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

2040年までに120兆円規模に膨らむとの予測もある宇宙ビジネス市場。製造業からサービス業まで様々な分野で宇宙の利活用や参入を探る動きが広がるなか、持続可能な開発目標(SDGs)達成に宇宙ビジネスが貢献する可能性に関心が高まっています。日本経済新聞社と日経BPが2023年12月に開催した「NIKKEI宇宙プロジェクトフォーラム」から、注目企業が登場したトークセッションの様子を紹介します。

黒須 聡 氏 黒須スペース&サステナビリティ 社長
百束 泰俊 氏 天地人 COO/取締役
深堀 昂 氏 avatarin 代表取締役CEO
進行役 河井 保博 氏 日経BP 総合研究所 主席研究員

サステナビリティーと宇宙のつながり

河井 日経BP総合研究所が2023年にまとめた専門リポートの調査で、宇宙ビジネス参入の狙いとして最も多かったのは社会貢献でした。今日はみなさんから「こういう事業でこんなふうに社会を変えていきたい」というお話をうかがえるのではないかと思います。まず黒須さんは宇宙ビジネス参入のコンサルティングを手掛けていますが、社名に「サステナビリティ」と入っていますね。

黒須 私は横河電機の元チーフ・サステナビリティー・オフィサー(CSO)で、現在は自社と横河電機の宇宙事業開発室の業務を兼務しています。地球を外から眺めると大気の層は薄く、ほとんどないように見える。宇宙飛行士の方はこれを見て、地球を守らなければならないという環境意識が芽生えるといいます。

人類が宇宙に出ることで新たに生まれる価値は3つ。人工衛星で地球を広域で見る「概観効果」、微小重力や高真空など地上では得難い「極限環境」、大気、重力、国境などを取り払って考えられる「制限外」です。

横河電機ではこれら3つの価値とSDGsを掛け合わせたソリューションを開発・提供しています。人工衛星データを使ったリモートセンシングと我々が持つ地上データを組み合わせた地盤崩落や森林環境の監視、漏水管理。国際宇宙ステーション(ISS)の微小重力環境でのライフサイエンス研究開発や、月面での水素サプライチェーン構想なども進めています。

宇宙に出ることによって地球にない新しい価値を考え、できたものを地球にフィードバックすることでSDGsに貢献していきたいと考えています。

宇宙のビッグデータ活用で地球規模課題を解決

百束 人工衛星データの利用を軸に事業を行っています。当社のサービス「天地人コンパス」は、宇宙のビッグデータを活用して地球規模の課題を解決する地理情報システム(GIS)のプラットフォームです。SDGsへの活用としては水道インフラのリスク評価、再生可能エネルギーや農業の適地探索などを行い、様々な意思決定をサポートしています。

具体的には、水道インフラでは「天地人コンパス」のプラットフォーム上に漏水のリスクマップを示すサービスを展開。再生可能エネルギーに関しては、開発時に山を切り崩していいか、生態系に影響を与えないかなどの環境上の配慮に人工衛星データを活用した適地探索サービスを実施しています。国連開発計画(UNDP)からの支援を受け、アフリカのブルキナファソで農作物への豪雨被害を軽減するために、気象情報を農家に提供するサービスも開発しました。

インフラの老朽化問題でいうと、パイプラインは水道だけでなくガス、ダムや橋、道路などもあります。衛星データを使ってこれらの老朽化のリスクを評価したり、修繕場所を察知して伝えたりするなど、非常に可能性がある領域だと思います。

人手不足、スペシャリストの「瞬間移動」で解消

深堀 人工知能(AI)とロボティクスを活用して、必要な時に必要な場所へとスペシャリストを「瞬間移動」させるサービスを提供しています。米国のXプライズ財団のコンペでグランプリを受賞したアイデアを基に、全日本空輸(ANA)発のスタートアップとして2020年4月に設立しました。

外的環境に左右されないアバターという乗り物で、80億人全員が自由に移動できる未来のモビリティーをつくろうというのが起業のきっかけです。移動は「民主化」されていない。距離的、時間的、コスト、さまざまな制約によって自由に移動できないことが当たり前にあります。

コミュニケーション型遠隔AIロボット「newme」と、独自のアバター技術「avatar core」という2つのビジネスを展開。「newme」は接客や案内業務などの場面で、「avatar core」は自動車やドローンなどに搭載して、遠隔操作することでAIがスキルを学習していきます。

当社の技術は、遠隔で動かすことによって、暗黙知のデータを蓄積できるという強みがあります。世界各地のスペシャリストの人材不足の問題が解消され、社会課題の解決につながると考えています。

社内で宇宙ビジネスの話を進める

河井 深堀さんは元ANAですし、黒須さんは横河電機でCSOを務めていました。どのように宇宙ビジネスの話を進めていったのでしょうか。

深堀 大きな企業の場合、やらないリスクというものもあります。ANAのなかでオペレーション会社のAI化は長年の課題で、早めに着手できる機会はそうそうない。Xプライズ財団のコンペでグランプリを受賞し、エンジェル投資のオファーを受けていたことも経営層の判断材料になったと思います。

黒須 横河電機では産業用センサーや制御システムをつくっていて、極地や深海などの極限環境にも対応していました。このテクノロジーを宇宙に展開しようと、具体的な施策を考えるべく19年4月にフランスの国際宇宙大学に留学。ちょうどイーロン・マスクが再利用可能な大型ロケットの開発に成功し、イスラエルの民間企業が月面着陸に挑むなどの動きを目の当たりにして、帰国後に「すぐ始めるべきだ」とタスクフォースでスタートしました。すぐにJAXAの共同研究のほか経済産業省から注文をいただくようになり、組織化したという流れで、留学のタイミングの良さもあったと思います。

チャレンジを許してくれる社会

河井 今後、宇宙ビジネスを拡大していくために考えなければいけないハードルや課題はありますか。

黒須 1つ言えるのは、チャレンジを許してくれる社会が大切です。日本では絶対に失敗しないようにと考えるので非常に時間がかかってしまいます。私たちの取り組み自体、まだお金になりそうにない段階ですが「絶対に価値がある」と行動に移しています。チャレンジを後押しし、それを周囲が温かく見守ることも大事だと思います。

百束 サービスを長く続ける上では、宇宙ビジネスから少し離れてお客様の課題や「業務でどれくらいの価値を生めるか」を追求して、「もうかる形」をつくることも大切だと考えています。

深堀 宇宙技術は地上で使えるものがかなり多く、相性がいいと思います。当社も米航空宇宙局(NASA)の探査ローバーのナビゲーションを担当していたチームと組んで、地上系のロボットのナビゲーションを改善しました。宇宙技術をAIロボティクスに反映することで非常に進化する可能性も高く、宇宙ビジネスのメリットを感じています。

河井 最後に一言ずつメッセージをお願いします。

黒須 宇宙には新しい価値がたくさんあり、無限の可能性があります。皆さんと一緒に宇宙をビジネス化していきたいと思います。

百束 宇宙と地球を区分けせずに、地球、あるいは人のためにいいことをするという切り口で、いろいろなテクノロジーや連携を進めることに取り組んでいきたいと思います。

深堀 瞬間移動の技術を人類が手にすることで、地球規模だけでなく、宇宙規模で様々な社会課題解決を考えられる時代になると思っています。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

イノベーション SDGs 採録 宇宙

関連情報

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。