NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム

対馬の海洋問題解決へ連携協定 プラごみ削減や資源保全 ブルーオーシャン・イニシアチブと長崎県対馬市

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一般社団法人のブルーオーシャン・イニシアチブ(東京・港、BOI)は2023年5月、長崎県対馬市との間で包括連携協定を締結した。海洋プラスチックごみの削減や海洋資源の保全などに連携して取り組む。BOIは海洋に関する幅広いステークホルダー(利害関係者)の交流や事業創出を通じて、海の保全と繁栄のための社会課題解決を目指している。対馬市は民間企業や経済団体と協定を締結したことはあるが、BOIのような企業連合の社団法人と連携するのは初めて。BOIは海洋保全に関する様々な課題に直面する対馬を舞台に、効率的に海洋プラごみを回収する方法の確立や脱炭素化につながる技術革新などを後押しする。

対馬市の比田勝尚喜市長とBOIの代島裕世代表理事が5月8日、対馬市交流センターで包括連携協定を締結した。

比田勝市長は締結式で「海洋プラごみ、海洋資源保全、磯焼けなど海に関するあらゆる課題の縮図ともいえる対馬では、様々な調査研究、フィールド実証実験が行われてきた。しかし、(課題の)厳しさは年々増している。研究機関、企業、行政などが個々に取り組むのではなく、海に関するあらゆるステークホルダーが力を合わせて立ち上がる時ではないか。BOIはハブ(結節点)として多くの主体をつなぎ、ビジネスの力を通じて本気で持続性・実効性のある取り組みを進めようとしている。(連携の成果に)たいへん期待している」と述べた。これに対し、BOIの代島代表理事は「スタートアップや投資家など様々なステークホルダーを巻き込んで、ビジネスを通じた課題解決の枠組みを作りたい」と応じた。

若者が課題を議論する会議体を発足へ

両者は海洋プラの削減や海洋資源保全、気候変動など5つの連携事項について合意した(表参照)。

このうち、1つめのブルーアイランド・プログラムとは、BOIが海洋課題の最前線である島しょ地域で、開発された最新の解決手法や新事業などの実証実験を行うほか、次世代の若者リーダーを集めた未来会議の開催や、人材育成の教育プログラムを開催するものだ。対馬を同プログラムを実施するフィールドとすることで合意した。

BOIや対馬市によると、23年秋をメドにBOI関係者や対馬の若者を集めた「未来会議(仮称)」を立ち上げ、合宿形式で対馬が抱える課題について学び、議論する場を設ける予定だ。将来は日本だけでなく、対馬の立地を生かして広くアジアの若者が集まるような会議に成長させていくことを視野に入れている。

このほか、大学教授など海洋に関する専門家による講義をオンラインで受けられるプログラムの開設や廃校などを利用した滞在型ラボ(研究施設)の設置も検討している。海洋保全につながる最新の技術を有するスタートアップの若手社員が滞在し、課題解決に取り組めるようなインフラ作りを目指している。

対馬の海岸はアジア各国や国内から年間3万〜4万立方メートルのプラスチックごみなどが漂着している。また、沿岸海域で海藻が消失する「磯焼け」現象が加速し、漁業など地元経済に深刻な影響を与えている。両者はこうした課題にも連携して取り組む。

大阪・関西万博で成果を世界に発信

BOIは2025年の大阪・関西万博でNPO法人ゼリ・ジャパンが出展する企業パビリオン「Blue Ocean Dome」や、会期中に開催予定の国際海洋会議(仮)で海洋保全に関する活動を発信する予定だ。BOIは対馬での取り組みの成果をメディアやパビリオンを通じて発信する方針だ。代島代表理事は協定締結の際に「万博会場で対馬の情報を発信し、対馬を世界から注目される場所にしたい。万博や30年のSDGs(持続可能な開発目標)のゴール、その先に向けて対馬市と一緒に歩みを続けていきたい」と語った。

対馬市しまづくり推進部SDGs推進課副参事兼係長の前田剛氏は日本経済新聞の取材に対し、「(対馬市が抱える課題は)いろんなイノベーションを起こさないと解決につながらない。様々な企業が集まって実証しようという考えを持つことで、(解決への)大きなうねりを起こせるのではないか」と協定の成果に期待を示した。(原田洋)

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