ヒットの軌跡

『地球の歩き方』が歩む異形の旅路 貫く読者ファースト 地球の歩き方 コンテンツ事業部長 宮田崇氏(上)

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ネットにつぶされなかった理由

インターネットの普及は旅を取り巻く「景色」を様変わりさせた。紙の出版物が頼りだった時代には、事前にじっくりガイドブックを読み込んでプランを練り、知識を蓄える旅人が多かった。現地では調べようがないからだ。しかし、今では現地で地図アプリの「グーグルマップ」が使える。宿や飲食店、観光スポットなどの関連情報もリアルタイムで検索できるので、昔に比べれば、「事前の情報収集に取り組むモチベーションが下がった」(宮田氏)。

半面、ネット情報を信じ込んでしまうケースが増えているという。かつての「予習派」なら避けられたような落とし穴にはまってしまうことも起こりがちだ。「香港への訪問者が『すごく安い宿を見付けた』というので調べてみたら重慶マンション(「魔窟」とも呼ばれる、治安に難のある複合ビル)だった」と、宮田氏は明かす。ネット頼みの「出たとこ勝負派」は想定外のトラブルに巻き込まれかねないので、『地球の歩き方』もリスクの見極めに役立つアドバイスを以前よりも丁寧に盛り込むようになったそうだ。

インターネットが普及し始めた1990年代後半にささやかれた予測は「旅行関連の書籍や雑誌は消える」だった。確かにリクルートの情報誌の『AB-ROAD』(エイビーロード)は84年に創刊され、紙媒体は2006年に休刊へ追い込まれた。月刊ペースの発信では随時更新のネット情報にかなうわけがなかった。刻々と変化する航空券やツアー商品の価格をフォローするうえでもネットは都合がよかった。

だが、『地球の歩き方』はつぶれなかった。宮田氏は「ネット情報は旅行情報を得るには効率が悪い」とみる。広告が多くて、ノイズが混じりがちだからだ。広告出稿者への「配慮」のせいで検索結果がゆがんでしまうので、求める情報にたどり着きにくい。「きちんと編集されたガイドブックのほうが正確な情報を短時間で手に入れやすい。なぜなら、読者ファーストで編集されているから」と、宮田氏は立ち位置の違いを示す。一方の旅行情報誌は広告の性格を帯びていたこともあって、ネット情報との競争に巻き込まれやすかった。

旅行関連ビジネスを襲ったコロナ禍を乗り越えて、生き残りを果たした『地球の歩き方』。後編では編集者ならではのアイデアを駆使した約3年間の挑戦や、盛り上がる海外旅行熱に応える改訂版編集の取り組みなどを紹介する。

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