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「ワオ!」訪日客と笑顔で対話できる翻訳ディスプレー TOPPANホールディングス、デジタル技術で「誰一人取り残さない」

多様性 SDGs

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笑顔には、言葉の壁などない。互いが理解することができれば自然に笑顔となるからだ。デジタル技術を活用し、コミュニケーションがより円滑にできたら、どれほど笑顔が増えるだろうか。言葉の壁を越えた先に「誰一人取り残さない」社会が待っているはずだ。そんな多くの笑顔のある社会はもう目の前にある。持続可能な未来をデジタルでより早く引き寄せる。世界の誰もが、それが日常の風景になることを望んでいる。

東京・新宿、歌舞伎町にある西武新宿駅。特急券売り場横に設けられた応対窓口はさしずめ訪日外国人客向けのコンシェルジュ的な存在だ。西武沿線の観光地までの切符の買い方にとどまらない。新宿周辺の商業施設への道案内、大きな荷物の次の目的地への送り方、大阪、京都など日本各地への行き方など、訪日客の質問はさまざまだ。

この接客を支えているのがTOPPANホールディングスの翻訳対応透明ディスプレーだ。情報通信研究機構(NICT)の開発した人工知能(AI)による翻訳システムを活用した。訪日客は自国語で話すと、対応する駅係員側のディスプレーに日本語が字幕表示され、駅員が日本語で説明すると、外国人側のディスプレーに相手の話した言語が浮かび上がる。対応する言語は英語、韓国語、中国語(簡体字)、フランス語、スペイン語など12カ国語だ。

駅係員はこれまでスマホなどを駆使しながら接客していたが、訪日客数の急回復と多言語化への対応が課題となっていた。頼もしい翻訳システムを駅係員は愛着をこめて「スーパーマシン」と呼ぶ。利用者は駅係員の日本語がほぼ同時に自国語で表示されると、「ワオ!」と驚く。駅係員は「お客様の顔を見ながら説明できるので、理解されているのかどうか、よく分かります」。笑顔になれば「言葉の壁」を越えたことになる。

この翻訳システムの正式名称は「VoiceBiz UCDispay」、UCはユニバーサル、コミュニケーション。「みんなにやさしく対話する」という意味を込めた。TOPPANは、印刷を通じ培ってきた情報を誰もがより分かりやすく、正確に伝える技術を進化させてきた。この多言語コミュニケーションサービスも「言葉の壁」をなくす有力な手段と位置づける。2025年開催の国際博覧会(大阪・関西万博)に協賛しセミナー、国際会議、会場案内などで多言語の自動同時翻訳システムを提供する。

同社には、長年にわたり官庁、研究・医療機関、企業などとの取引により、専門用語や大量の文書情報をデータベース化しており、翻訳精度の向上のためのノウハウがある。既に製薬、金融業界などに特化した機械翻訳サービスも手掛けている。

言葉の壁を取り払い、より良き社会のさらなる実現を進めている。

(編集委員 田中陽)

TOPPANホールディングス・麿秀晴社長CEO「言葉の壁をなくす」


SDGsの基本原則である「誰一人取り残さない」ことを実践するために機械翻訳サービスを本格的に展開することにしました。
グローバル化の進展、在留外国人、訪日外国人の増加を背景に「言葉の壁をなくす」ことが社会問題の解決の一助となるからです。実は我が社は30年以上前に英語の書籍をデジタル翻訳して発行する試みをしていて、そのDNAが脈々と受け継がれていました。
TOPPANホールディングスは2023年10月に凸版印刷から社名・組織改編し、その際にグループ全体で共有する方向感を明文化した理念「TOPPAN's Purpose & Values」を制定し、社会課題解決に貢献する社会的価値創造企業を目指し、世界をリードするグローバル企業になることを再認識しました。この方向性はSDGs達成への貢献の道筋と同じものだと考えます。
「誰一人取り残さない」ためにはすべての人に理解してもらわないといけません。聞く側、利用する側に立って情報をわかりやすく伝えることが必要です。教育、文化交流など相互理解することで本当のコミュニケーションになります。相互理解こそ争いごとの解決の一助になるはずです。「人を想(おも)う感性」と「心に響く技術」。この2つを組み合わせることでTOPPANグループが描く「多様な文化が息づく世界」が実現します。
120年余の歴史で培った印刷テクノロジーとデジタル化の知見、取引先との信頼関係から生まれる新たな製品やサービスの創造によって便利さ、快適さ、豊かさ、幸せさが実感できる持続的な社会を目指していきます。

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