ビジネスの世界にはいろいろなブームや流行がつきものです。たとえば、リスキリング(学び直し)やデジタルトランスフォーメーション(DX)。セミナーやビジネス書で刺激を受けた経営者やマネジャーが現場に命じるケースも珍しくないようです。今回の相談は「導入してみたが、成果がみえにくい」です。職場のSDGs研究所代表の白井旬氏が実例に沿って回答します。
カリキュラムを見ると、「DX」や「カーボンニュートラル」「ハラスメント予防」「アンコンシャス・バイアス」といった、様々な最新コンテンツが網羅されていて、良い成果が得られるに違いないと期待していました。しかし、半年が経過した今、従業員の意識は変わるどころか、特定の社員しか活用しておらず、会社全体の受講率は極めて低い状態です。従業員が自主的に学び、経営への効果が高まるような「リスキリング」を実現するには、どうしたら良いのでしょうか?
ここ数年、リスキリングやDXといった言葉をよく耳にするようになりました。単体ではもちろんのこと、「リスキリングでDXを推進しよう」といった具合にセットで使われるケースも多くなっています。
同時に「リスキリングでは具体的に何をすれば良いのか?」「リスキリングって、DXを導入すればいいんでしょ?」「これまでの研修受講や資格取得支援と何が違うのか?」といった質問が増えています。今回のように「思い切って投資をしたのに社員は誰も勉強していない」といった相談も持ち込まれるようになってきました。
このような流れは今に限ったことではなく、割と昔からあるものです。「トレンド経営」「ハコモノ組織」「モノマネ人事」と呼んで、私が経営者の方々に注意を促し続けているビジネス商品と本質はあまり変わりません。
トレンド経営とは、世の中で重要とされる考え方などに「経営」をくっつけたものです。直近だけでも「ビジョン経営」「健康経営」「サステナブル経営」「ウェルビーイング経営」など、多岐にわたります。
今までの経営と大して変わらない状態で、新しいキーワードをかぶせても、その効果が限定的なのは目に見えています。「また社長がはやりに乗って、新しいことを言い出した。半年か1年もすると飽きるだろう」と、社内では冷ややかな目で見られてしまいがちです。