ヒットの軌跡

納豆はなぜスチロール容器 知られざる製法の秘密 「おかめ納豆」のタカノフーズ(上)

商品戦略 マーケティング 飲食

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

自前の研究所から成果相次ぐ

それまでの社名だった「おかめ納豆本舗」から今の「タカノフーズ」に変わったのは、研究所設立と同じ85年のことだ。社名から「納豆」の文字が消え、総合食品メーカーへ踏み出した。業界の先陣を切った研究所設立は生産工程の効率化や新商品の開発に役立ち、納豆の健康メリットに関する科学的なエビデンス(根拠)を示す現在の活動にもつながっていった。

もともと日本では民間伝承のような形で納豆の健康メリットが知られていた。しかし、学術的な裏付けは必ずしも十分とは言いにくかった。そもそも当時はほとんど日本人しか食べていなかった日本式の納豆だけに、国際的には研究対象になりにくく、論文やデータなどの成果物は少なかったようだ。タカノフーズが自前で研究所を構えた理由でもある。

水戸工場の敷地内に新設した研究所からはその後、納豆の有益さを示す研究成果がいくつも導かれ、同社の商品開発にもつながった。2017年に発売した「すごい納豆 S-903」は代表例だ。独創的な商品で市場をリードしてきた「おかめ納豆」の強さの源泉はこの自前研究所にあるといえるだろう。

研究所から得られた成果は、各種の消費者向け情報発信にも役立てられている。納豆を巡っては、俗説が珍しくない。科学的な根拠に基づかない風説がさも本当であるかのように伝わるケースもあり、同社の公式ホームページでは丁寧に情報を公開している。たとえば「熱いご飯にのせると、納豆の栄養価が損なわれる」という点に関して、市村氏は「目くじらを立てなくても構わない」と言う。

納豆が含む各種の成分は高温でもあまりダメージを受けないものがある上、損なわれるにしても全てではない。「気になる人はご飯を少し冷ます程度で十分」(市村氏)。「納豆と鶏卵を一緒に食べると、栄養価が下がる」という俗説に関しても「気にするには及ばない」そうだ。

あまり知られていない納豆関連の情報は意外に多い。たとえば、ひきわり納豆は出来上がった納豆を細断したものではない。乾燥した状態の丸大豆をひき割って、皮を取り除いてから納豆を作っている。製法も栄養価も異なる別物だ。

納豆を食べた後の食器を洗う場合は温水で流し洗いするか、水にしばらく漬けてから流水ですすぐと、粘りが落ちやすい。納豆の粘りは水溶性だからだ。こういった重宝な情報も「お客様相談室」のページで紹介されている。

原料の大豆は、国産大豆商品以外は北米からの輸入品だ。スーパーでの店頭価格が主力商品で100円程度と、家計にやさしい商品だけに、「安定的なコスト管理に気を遣う」(市村氏)。長期的な関係を結んでいる大豆業者から、契約栽培による大豆を確保している。

納豆に使う、遺伝子を組み換えていない大豆は世界的には生産量が少ない作物だ。主力商品「極小粒ミニ3」に使う小粒タイプは単位面積あたりの収量が少なく、栽培してもらうにはプレミアム(割増金)が必要になる。

日ごろは何気なく口に運んでいる納豆だが、トップ企業のこまやかな目配りには、日本固有の食文化を担うプライドがうかがえる。後編では近年の大ヒット商品や、関西での納豆人気、食べ方バリエーションなどを掘り下げる。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

商品戦略 マーケティング 飲食

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。