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猟師や農家ら地域の人と出会い自分自身を再発見 クラブツーリズムと第一生命がウェルビーイングツーリズム

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旅行会社のクラブツーリズムと生命保険会社の第一生命保険は、「ウェルビーイングツーリズム」の取り組みを始めた。観光を通じて地域の抱える社会課題を解決するとともに、参加者に豊かで健康な人生を送るウェルビーイングな体験価値を提供するのが目的だ。

フードハンティングで地域の素顔に触れる

絶景が人気でドラマや映画の撮影場所にもなっている長崎県・五島列島の福江島。海風を感じながら自転車でロケ地を巡るのはこの地域ならではの旅だ。しかし、楽しみはそれだけではない。リュックを背負って地元の農家や店舗を巡り、コメや野菜などの食材を調達して、普段から五島の食卓に並ぶ郷土料理を作る。フードハンティングと呼ばれるプログラムは、普通の観光では会う機会のない地域住民とのコミュニケーションを通じ、地域の素顔に触れることができる。このプログラムが2023年1月に両社が実施した「ウェルビーイングツーリズム」だ。

「単に観光地を巡ったり、おいしいものを食べたりするだけではなく、思いを持ってその地域で生き生きと暮らしている人との触れ合いを通じて、新しい自分にも出会える」。クラブツーリズム創造事業本部の鈴木光希さんは「ウェルビーイングツーリズム」の目的をこう話す。

こうしたツアーを企画したきっかけは新型コロナウイルス禍だ。「コロナ禍で人々が自己幸福感をより追求するようになり、地方や地域での体験に対するニーズが増えてきた。旅の目的は従来のモノ・コトではなく、地域に住む人に会いに行くことに変わっていく」(鈴木さん)と考えたという。

22年11月に実施した第1弾のツアーは千葉県君津市が舞台だった。広大な山林地帯を抱える同市やその周辺には、イノシシやシカといった野生鳥獣が生息している。この地で実際に活動する猟師から狩猟について学び、フィールドワークを通じて獣たちの足跡や実際の罠(わな)を見学したり、ジビエ料理の試食をしたりする。あわせて里山の養蜂場を訪れハチを観察して実際にハチミツを絞るほか、房総半島でとれたアナゴを食べたり、「房総の奥座敷」と呼ばれる養老渓谷を散策したりする行程だ。

両社は「ウェルビーイングツーリズム」のミッションとして以下の4つを掲げている。

1、地域地産物の消費による地域経済への還元

2、地域文化や歴史・自然体験・現地の方々との関わりを通じた心の充足

3、地域の体験を通じた体の健康維持・促進

4、旅行消費を通じた地域の自然・文化保全への貢献

ツアーのプログラムはこの4つのいずれかに当てはまる。同時に地域の抱える社会課題の解決にもつなげている。

地域の魅力発信し課題を解決

福江島では、空港や港といった拠点から観光などの目的地まで移動する「二次交通」の1つの手段としてレンタル自転車の利用をいかに促すかが観光振興の課題だった。フードハンティングやロケ地巡りといったプログラムを通じて、その課題の解決をはかる。

君津市では、鳥獣による農作物被害が社会問題化しており、鳥獣の捕獲とその利用が課題だった。観光を通じ狩猟やジビエへの理解を深め、ジビエ消費を拡大させることで、地域の課題を解決する狙いだ。

ツアーの企画には地域の実情をよく知る第一生命の提案が生かされている。「保険事業という業務を超えて、地域の魅力を発信したいという営業オフィス職員や、実際にその地域に住んでいる人などから提案がある」(第一生命保険イノベーション推進部の野村直矢さん)という。そうした提案をベースにクラブツーリズムの知見やノウハウを生かし旅行のプログラムをつくる。

これまでの2回のツアー実施を通じて「人に会いに行くという旅の体験価値が高いことが改めて分かった」(鈴木さん)という。

今後は、石川県・能登半島の北端にある珠洲市や福岡県西部の糸島半島の糸島市などでの開催を検討しているという。

コロナ禍をきっかけに始めた「ウェルビーイングツーリズム」は新しい旅のカタチとして今後、増えていきそうだ。

(町田猛)

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