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COP28の舞台は中東 産油国が進める脱炭素の姿 三菱総合研究所 遠藤峻ドバイ支店長に聞く

インタビュー 脱炭素 気候変動

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2023年11月末から、気候変動対策を話し合う第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)が始まる。開催地はアラブ首長国連邦(UAE)のドバイ。化石燃料が国家財政を支える産油国が舞台だ。中東湾岸の国々といえば温暖化対策で遅れているという印象が強いが、実は脱炭素に向けた取り組みがじわじわと広がっている。各国を突き動かす背景に何があり、日本の官民はどのような対応ができるのだろうか。三菱総合研究所の遠藤峻ドバイ支店長に聞いた。

――湾岸産油国が相次ぎ二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにする目標を打ち出しています。

「地球規模で脱炭素の動きが広がる中、原油、天然ガスから得られる収入に依存する各国は大きな打撃を受けることになる。パリ協定の採択・発効で、自国経済を維持するために本気で取り組み始めた。2030年までにサウジアラビアはCO2換算で2億7800万トン、UAEは特段の対策をしなかった場合(BAU)と比べて40%温暖化ガスを減らすとしている」

恵まれた環境 太陽光発電に競争力

――目標達成のためにどのような施策を進めるのでしょうか。

「ポテンシャルを持つのは再生エネルギー、特に太陽光発電の利用と、CO2を回収し貯留するCCSだ。日照時間が長いこの地域は太陽光発電を利用した水素やアンモニアの生産が可能。加えて、海水の淡水化処理をはじめ経済活動で発生したCO2を貯蔵する場所も多い。まずは油田での原油回収を増やすため地層に注入しており、今後は本格的な貯留を目指すとしている」

「政府系ファンドが投資面で脱炭素を支援していることも、特徴的な動きといえる。対象は電気自動車メーカーや再生エネルギー会社などで、国内のほか東南アジアなど海外でも資金を供給している。純粋な投資、自国の産業競争力向上など目的は幅広い」

「環境対策を国別にみると、サウジアラビアとUAEが意欲的だ。地域の大国として関与、認知されたいという意識が働いていると考えられる」

――CO2排出をゼロにする目標を50年、60年に設定していますが。

「30年前後をターゲットとする中間的な目標が本当に達成できるのか、さらにゼロまでつなげられるのか、道筋が明確とは言えない。法整備にしても、基本法は整ってきたが、さらに細かく落とし込んだ個別の法律が必要となる。ただ、君主制ゆえに強いリーダーシップは備えており、しかも指導者は若い。目標は野心的ではあるが、スピーディーに取り組むだろう」

過剰な期待も落胆もさせない戦略を

――日本は原油の9割、天然ガスは2割を中東から輸入しています。官民で温暖化防止の知見を提供すれば、関係は深まり、ビジネスチャンスも生まれそうです。

「中東では、欧州政府が先行して気候変動に関連した外交を展開してきたが、ロシアによるウクライナ侵攻でより現実的なアプローチが求められるようになっている。23年7月にサウジ、UAE、カタールを歴訪した岸田文雄首相は各国の首脳と脱炭素化・エネルギー転換への推進に向けた協力などで合意した。グリーンエネルギーへの転換、廃棄物活用をはじめ各分野で日本の経験を生かし、一緒に未来をつくる新しい関係を構築するよいタイミングだと考える。中東、日本、さらにはアジアのほかの国々が手をとるチャンスでもある」

「商慣習の違いなどもあり、企業単独での進出はリスクがあり、政府の支援は必要だろう。そのうえで、相手国のニーズ、方向性をつかみ、過剰な期待も落胆も抱かせることがない施策を提供することが大切になる。スタートアップ企業なら政府系ファンドの出資を得ることも考えられる。脱炭素の市場は思い切って先を見据えた参入も大切になる」

――パレスチナではハマスとイスラエルの大規模な衝突が勃発しました。今後どのような影響が表面化するのでしょうか。

「イスラエル企業のアラブ地域での展開は停滞を余儀なくされる。ただ、脱炭素の動きが制約されることはないとみてよいのではないか」

(聞き手は初田聡)

遠藤 峻氏(えんどう・たかし)
2007年京大院修了、三菱総合研究所入社。環境・エネルギー分野の官公庁、民間企業向けコンサルティング業務に従事。2021年支店開設に伴いUAEドバイ赴任。

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