人事政策は企業の背骨のような重要事です。しかし、いろいろな新手法やアプローチがもてはやされる傾向が強まっていて、企業経営者が踊らされてしまうケースもあるようです。今回の相談は「新たな人事制度に社員が冷ややかな反応を見せるようになってきた」です。職場のSDGs研究所代表の白井旬氏が実例に沿って回答します。
私自身も複数の会社を経営しているので、経営者の「常に新しいものを追い求める」という気持ち(期待感と焦燥感の両方)は、痛いほどよく分かります。
これが、新規商材などであれば、何がヒットするか分からないVUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)な時代において、「トライ&エラー」でいろいろと試してみることは一定の理解が得られると思われます。顧客から「何か新しいものはない?」「最近のトレンドは?」といった声を聞くことも多くあります。
しかし、人材育成や組織開発に関わる組織全体やマネジメントの問題となると、少し慎重に事を進める必要があると思われます。
今回のご相談内容は、前回の記事「危機招くトレンド経営 学び直しやDXに踊らされない」(2023年4月20日公開)でご紹介した「トレンド経営」「ハコモノ組織」「モノマネ人事」のうちの「モノマネ人事」に近い状態かと思います。
「モノマネ人事」とは、他社で成果を上げた施策について、セミナーや関連書籍でその手法を表面的に学び、自社内で展開したものを指します。直近だけでみても「コーチング」「ファシリテーション」「1on1(ワン・オン・ワン)」「フリーアドレス」「人事評価制度」「360度フィードバック」「フラット型組織」などがあり、「モノマネ人事」のケースが多く見受けられると考えます。