ヒットの軌跡

大浴場だけじゃない ドーミーインの多彩な魅力 ビジネスホテル「ドーミーイン」(下)

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出張者の支持が厚いビジネスホテル「ドーミーイン」は天然温泉の大浴場で知られる。しかし、顧客満足度で3年連続トップ(日本生産性本部調べ)の理由はそれだけではない。無料の「夜鳴きそば(ラーメン)」や、ご当地メニューを取り入れた朝食バイキング、居室の使い勝手など、魅力は多い。共立メンテナンスのドーミーイン事業本部で東日本事業部長を務める水野貴史氏は「お客様の声に耳を傾けながら、サービスや仕組みを磨き続けてきた結果」と、軌跡を振り返る。(前回記事「ドーミーイン、なぜ満足度No.1 大浴場へのこだわり」

午後9時30分からドーミーインで泊まり客に無料で振る舞われるのが名物の「夜鳴きそば」だ。「そば」と呼んでいるが、中身はハーフサイズのしょうゆ味ラーメン。外でお酒を飲んで戻ったり、風呂から上がったりしたときにちょうどいい小腹しのぎになる。要望を受けて、大盛りも頼めるようになった。コスト管理にシビアなビジネスホテル業界の常識からすれば、有料でもおかしくはないが、当初から無料サービスだ。

「もともとお客様との接点を広げる目的でスタートした」と、水野氏は夜鳴きそばの経緯を明かす。一般的にビジネスホテルのフロント業務はシンプルになりやすい。泊まり客はチェックイン・アウトの際に急いでいる場合が多いので、きびきびした応対が求められる。結果的にスタッフと泊まり客が言葉を交わす時間も短くなりがちだ。しかし、夕食後の時間帯はいくらかゆとりがある。「夜鳴きそばを提供する際のわずかな間だけでも、お客様と言葉を交わせればという思いから始まった」(水野氏)

夜鳴きそばのよさは、スタッフと泊まり客との接点づくりにとどまらない。グループで泊まっている場合は、眠りに就く前のちょっとしたミーティングや談笑の機会にもなる。旅行者のグループはそれぞれの部屋へ戻っていく前に歓談を楽しむ人たちが少なくない。ホテルへの戻りが遅くなって、夜鳴きそばの時間帯に間に合わなかった人には、フロントで午前1時までオリジナルのカップめん「ご麺なさい」を渡している。

夜食にうってつけの夜鳴きそばだが、翌朝に向けて、食べ過ぎは避けたほうが賢明だろう。ドーミーインは朝食バイキングに定評があるからだ。この朝食目当ての常連客も少なくない。

朝食バイキングはビジネスホテルでは見慣れた形式だが、ドーミーインは「旬の食材を使った、手作りのメニューが自慢」(水野氏)。ホテルによって異なるが、50種類ほどの料理が並んだ景色は食欲をそそる。中でも人気が高いのは、ご当地色の濃いメニューだ。たとえば、「石狩の湯 ドーミーインPREMIUM札幌」では海の幸をそろえた「選べる海鮮丼」を用意している。サーモンやイクラ、ホタテ貝など、好みの食材を盛り付けて作る自分だけの海鮮丼だ。まるで魚市場にいるような体験をホテル内で楽しめる。

仙台の牛タンや山梨のほうとう、名古屋のひつまぶし、大阪の串カツ、高知のカツオたたき、長崎の皿うどん、宮崎の冷や汁など、各地の名物料理がそろう。忙しい旅先ではなかなか名物料理を食べ尽くせないものだが、ドーミーインの朝食では少しずついろいろな名物を味わえる。「名物料理にとどまらず、食材の面でも地元産を重視している」という。

もしコスト管理を徹底するなら、全国一律のメニューが効果的だろう。セントラルキッチン方式や全国チェーンの強みを生かせる。しかし、ドーミーインの場合、「料理人だった創業者と寮から始まった歴史との関係から、食事には特別なこだわりがある」(水野氏)。仕事に追われて、地元の食事を楽しめなかった出張者に「朝食で少しでも旅行気分を感じてもらいたい」という気配りも働いているそうだ。

 

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