半導体ミライ・アライアンス

日本の半導体、1兆ドル産業の主役に 「半導体ミライ・アライアンス」が発足 初の座談会

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世界の半導体市場は、人工知能(AI)や高速通信規格「5G」、IoTなどの普及・拡大により、2030年に1兆ドル(約146兆円)規模へ拡大すると予測されている。そこで日本経済新聞社では、日本の半導体産業の未来を考えるプロジェクト「半導体ミライ・アライアンス」を発足。11月7日、有識者や専門家などを集めて初めての座談会を開いた。「最大のチャンス到来」との認識で一致する中、熱い議論が繰り広げられた。

「半導体ミライ・アライアンス」メンバー

入山 章栄 氏 早稲田大学大学院 教授
黒田 忠広 氏 東京大学大学院 教授
桑田 薫 氏 東京工業大学 理事・副学長
若林 秀樹 氏 東京理科大学大学院 教授
真岡 朋光 氏 レゾナック・ホールディングス取締役 最高戦略責任者(CSO)
小平 和良 日経BP 経営メディアユニット長補佐 日経ESG経営フォーラム事業部長 
星 正道 日本経済新聞社 ニュースエディター補佐
山口 健 日経BP 総合研究所 客員研究員

最後で最大のチャンス到来

――世界と日本の半導体市場をどう見ているか。

黒田 半導体はシリコンサイクルという浮き沈みがあるものの、平均して年率9.5%を超える成長を40年近く続けている。最初は家電製品に搭載され、物理空間を便利にした。次は仮想空間の利用を可能にしたパソコンやスマートフォンなどに搭載された。そして現在、物理空間と仮想空間を高度に融合する世界の実現に向け、第3の成長期に入りつつある。第1期は世界の名目国内総生産(GDP)の0.2%を占め、ウィンドウズ95が登場した1995年以降の第2期は0.4%へと上がり、今、0.6%に近づいている状況だ。

若林 日本の半導体産業に、最後で最大のチャンスが訪れている。その背景に国際情勢の変化がある。新型コロナウイルス禍で半導体不足が起こり、サプライチェーンの混乱を招いた。米中間の貿易摩擦など経済安全保障の観点も加わって、半導体は戦略物資となり、グローバルな生産体制の再構築が不可避となっている。円安や脱炭素など、経営を取り巻く環境の変化も大きい。加えて、半導体の性能が約2年で2倍になるムーアの法則が限界を迎え、微細化以外の技術に注目が集まる。日本政府も過去の半導体政策の失敗を認め、海外メーカーの誘致など、従来とは異なる施策を打ち始めている。

桑田 政府はグリーン成長戦略による経済と環境の好循環によって、2050年に約290兆円の経済効果、約1800万人の雇用創出を目指している。世界は脱炭素へと向かい、グリーンイノベーションは待ったなしの状況だ。その実現に半導体が大きな関わりを持つ。なぜなら半導体は価値創出のドライバーだからだ。

入山 デジタル競争の1回戦で、日本はプラットフォーマーに負けた。これから2回戦に入る。2回戦はあらゆるものがネットにつながるIoTの勝負。つまり、ものが良くなければ勝てない。しかし、ものはコモディティー(汎用品)化するので、デジタルとリアルの融合が価値化の鍵を握る。融合には半導体の力が不可欠であり、さらなる産業変革が必要だ。

真岡 確かに日本の半導体産業は右肩下がりの状況が続いてきた。しかし、材料や製造装置では依然世界トップレベルの水準にある。微細化以外で半導体の性能を上げる「モア・ザン・ムーア」では、日本の強みが生かせる。ここ数年で世界経済を取り巻く環境が激変し、半導体ニーズはより一層高まっており、舞台は整ったと感じている。

マーケットインの発想必要

――30年に1兆ドル市場との予測もある中、日本が取るべきポジションや成長戦略を教えてほしい。

黒田 いま半導体需要が膨らむ一方で、供給できるメーカーが限られている。需給バランスが圧倒的に悪い。どうすればポジションを得られるか。投資して成長するしかない。ではどこに投資するか。デジタル化が進むことで、今後半導体は超進化していく。民主化が急速に進むだろう。そのスピードに応えられる、技術的な強みを持つところに投資すべきだ。今、資本集約型社会から知識集約型社会へのパラダイムシフトが進んでいる。半導体産業も多様な知恵の組み合わせから価値を生み出す「知価社会」の一員を目指すことが大切だ。

若林 政府は日の丸連合の支援ではなく、「半導体は国家安全保障や全産業の競争力を支える戦略物資」という認識に立ち、世界が驚くほどのスピードと規模の決断を行って、社会実装の支援を推し進めている。いいものをつくれば売れる時代は終焉(しゅうえん)し、新しい技術が登場すると同時に、それを使ってエコシステムを構築する競争となっているからだ。直球勝負だけでなく、変化球も覚えられると日本の半導体産業は強くなる。

入山 このチャンスを生かすには、自らの価値を見直し、再定義することが欠かせない。イノベーションは多様性からしか生まれないので、オープンかつグローバルに取り組むことも必要だ。日本は技術好きの経営者が多いが、技術を使って何で稼ぐか。経営者にはより一層マーケットインの発想が求められる。もう一つ重要だと思うのは産業のダイナミズム。スタートアップの登場も期待したい。

真岡 生成AI「Chat(チャット)GPT」が100万ユーザーを獲得するのに5日しかかからなかった。今起きているデジタル変革の波はものすごい勢いだ。その成長をキャッチアップするには、先頭を走るユーザーの懐に飛び込んで一緒に活動していくしかない。レゾナックは材料メーカーながら半導体製造装置をフルライン導入し、材料・装置企業12社と共同で研究開発してきた。米・シリコンバレーにも同様の開発拠点を開設予定だ。

桑田 デジタル社会はデータが価値の源泉。データを市場が求める価値に変えるシステムを半導体に実装することが、競争力の源泉となる。そこで大学などの研究機関は基礎も応用も大切にしながら、民間との共創で市場価値を創出していくことが求められている。

共創型人材の育成急げ

――半導体産業の振興における人材戦略の重要性とは。

黒田 半導体の超進化を実現するのは人材だ。今後ますますコラボレーションしながらイノベーションしていくことが不可欠になる。それには従来の画一的な育成ではなく、多様性を受け止める柔軟な育成の仕組みが必要。失敗を恐れず、挑戦を楽しむことを共有し、若い世代が伸び伸びと働ける環境を整えて、半導体の民主化を支える高度な人材を育成する「モア・ピープル」戦略が必要だ。

若林 最近日本のものづくり力が弱っていると心配している。人材の育成は喫緊の課題だ。IT(情報技術)見本市「CEATEC(シーテック)2023」の会場で電子情報技術産業協会(JEITA)が半導体産業の魅力を学生に体験してもらう「半導体産業人生ゲーム」を出展した。もっと半導体産業の魅力を発信すべきだし、技術とマネジメントの両方を担える人材の育成を急ぐ必要がある。

入山 日本企業の多くは長い間、終身雇用システムを継続し、戦略的な人事が機能していない状況にある。当たり前だが、人を成長させないと会社の成長はない。それもグローバルに競争するのだから、グローバル人事が重要だ。黒田先生の知価社会に大賛成で、イノベーション・アンド・コラボレーションが求められる半導体産業にとって、多様性のある組織をつくることは必須。最近、褒めて育てた若い世代が辞める「ホワイト離職」が増えているが、彼らは自分が成長できる会社で働きたいと思っている。そういった意味で半導体は、ポテンシャルの高いビッグビジネスだ。

桑田 組織パフォーマンスの最大化に、一人ひとりの創造性を育むダイバーシティー&インクルージョン(D&I)環境が不可欠であり、それをどうマネジメントしていくかが重要になる。優秀な人材確保には半導体産業が、複数の研究の進化と連携による重奏で進化する魅力的な産業であることももっと訴えるべきだ。

真岡 レゾナックは長期ビジョンの3つの柱の一つに「国内製造業を代表する共創型人材創出」を掲げている。背景に「戦略はコモディティー。差別化の源泉は『やりきる人材』」との考えがある。1社では解けない課題の解決が求められる時代。イノベーションを生むには共創や多様性が重要で、心理的安全性が不可欠だ。立場を超えてしっかり言い合い、会社も人も成長する文化をつくる。半導体は部品で、伝わりづらい産業だが、未来社会への貢献が伝われば変わる。半導体産業を盛り上げていきたい。

半導体ミライ・アライアンス
「半導体ミライ・アライアンス」は半導体業界やアカデミア・国・未来世代が一丸となって、より良い未来社会のために半導体の力が不可欠であることを議論・情報発信するプロジェクト。日本が世界のキープレーヤーであることをマクロ的な視点で訴求する。同時に、コア成長事業として優秀な人材の獲得と育成に向け、プロジェクト内での議論の内容やフォーラム参加企業の取り組みを日本経済新聞紙上で発信し、啓発・世論形成に寄与させていく。

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