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相続登記が義務化へ 過去の相続も対象、違反に過料も 「相続登記」義務化で必要なこと(上)辻・本郷 司法書士法人 近藤隆一氏

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2024年4月から、相続した不動産の名義変更の手続きである「相続登記」が義務化されます。これにより過去に相続した不動産も登記申請が必要になります。義務化で必要なことについて辻・本郷 司法書士法人の近藤隆一氏が解説します。今回は相続登記しない場合の問題と影響に関して説明します。

5年前に父親が亡くなり、父親が創業した会社と個人で所有していた投資用不動産を引き継ぎました。24年度から相続登記が義務化されると聞きましたが、このまま放置して問題ないでしょうか。

24年4月から相続登記が義務化され、これまでに相続した不動産についても手続きが必要になります。具体的な手続きについて触れる前に、相続登記の概要と登記しないことで生じる問題について解説します。

相続登記しないと4つの問題

相続登記とは亡くなった人が所有していた不動産の名義を、相続した人の名義に変更する手続きのことです。不動産の所有者に関する情報は、法務局が「不動産登記簿」で管理しています。登記簿上の所有者名義の変更申請をすることで名義を変更します。相続登記をしないことで生じる問題は大きく分けて4つあります。

①登記名義人が誰かわからない

まず「自分の先祖が登記名義人になっており、自分が相続関係者である」というケースです。相続対象物件を調査すると、自分の先祖の名義で登記されたままになっており、「自分が相続人」であるケースが多く見受けられます。

こうした場合、相続する人を確定させるために戸籍収集の作業が発生します。亡くなった人の戸籍謄本を、出生時から死亡時まで集めなければなりません。その上で、相続する人を確定させるために、相続人全員分の戸籍も集め、相続人を確定させる手続きが必要になります。

何世代にもわたって相続登記が放置されている場合、相続人は代替わりした分だけ「ねずみ算式」に増え、誰に所有権があるのか分からない事態になりかねません。相続人を確定する作業は時間と手間がかかります。先祖の名義のまま放置し相続登記しないと、後の世代に多大な負担をかけることにもなるのです。

②不動産を売却できない

相続した不動産を売却したいこともあると思いますが、売り主となる相続人を正しい名義にしておく必要があります。相続登記を経ずに、亡くなった人の名義から購入者の名義に直接変更することができないためです。相続登記が放置されていて、登記簿で売り主の名義を確認できなければ、購入希望者の多くは取引に応じてくれません。

③賃貸契約できない

同様のことが賃貸契約でも発生します。今回の相談者は投資用不動産も相続しているのでこのケースが当てはまります。賃貸の場合、契約自体は名義人の状況に関わらず可能です。しかし、所有者の名義がはっきりしない物件を契約することは、借り主の不安にもつながるため、契約を見合わせるケースも多く見られます。

④抵当物件として利用できない

相続した不動産を担保に金融機関から融資を受けることもできません。多くの場合、相続した不動産に対し金融機関が抵当権者となる抵当権を設定します。金融機関で所有者の情報が正しく把握されなければ、抵当権を設定できず、融資の実行が難しくなるのです。

相続登記が行われていないと社会にも悪影響

相続登記が行われていないことで生じる問題の対象は個人だけではありません。社会にも悪影響を及ぼしています。代表例が所有者不明土地問題と空き家問題です。

所有者不明の土地は我が国の国土の約24%、九州本島にも匹敵する割合で存在すると言われています。所有者がわからず管理されない土地が放置されることは、周辺の環境や治安の悪化につながります。例えば、土砂災害を防ぐため工事が必要な場所でも、所有者がわからないために工事ができず危険な状態のまま放置されるケースが多く発生しています。

そうした土地の所有者の探索には時間も費用もかかり、公共事業や復旧・復興事業が進まないなど、民間取引や土地の利活用を阻害しかねないのです。

相続した日から3年以内に申請を

こうした様々な問題を解消するため、相続登記が義務化されるのです。対象となる財産の範囲は「土地」と「建物」です。相続登記の義務化によって、相続登記の申請には期限が設定されます。

相続により不動産を取得した場合、相続した日から3年以内に申請をしなければなりません。遺産分割協議により不動産を取得した場合は、遺産分割協議が成立した日から3年以内の申請が必要です。

相続登記の義務化は、過去に相続したものの相続登記をしていない不動産も対象となります。この場合、施行日から3年以内に相続登記を行う必要があります。施行日前に相続が発生していたものの、自分が相続により不動産の取得を知った日が遅ければ「不動産の取得を知った日から3年以内」に相続登記をすればよいとされています。

正当な理由がなければ「10万円以下の過料」

今回の法改正により、違反した場合の過料も設定されました。正当な理由がなく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料が科せられます。正当な理由の例として、以下のようなケースが挙げられます。

①相続登記を放置したために相続人が極めて多数で戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース

上記のような正当な理由がない場合は、過去相続した不動産も含めて登記が必要になるので、なるべく早く手続きするのがよいでしょう。

今回の質問のケースでは、「父親が個人で所有していた投資用不動産」が相続登記の対象になります。相続登記を申請できていない場合は、速やかに申請が必要です。申請手続きには必要な書類も多いため、前もって準備しておきましょう。ではどのような手続きが必要なのか。その内容については次回詳しく解説します。

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