――新型コロナは企業の在り方にどのような影響を与えたと考えますか。
「あらゆる商品、生活は人と人の間に立脚しています。その人と人の間に新型コロナウイルスが割って入り、感染拡大防止のために、直接会えなくなるなど、人びとの生活に甚大な変化をもたらしました。これから、社会や企業にどのような変化が起きるのか、ということは、消費者にどういう変化が起きるかの延長線上にあるのだと思います」
このままであるはずがない
「私はこのままであるはずがないと考えています。なぜなら、ほとんどの購買行動の源泉が特定の誰か、あるいは不特定の誰かに会う、というところに立脚しているからです。それを実現する技術やサービス、商品を生み出すことができたら、それはとても有利なことですよね」
「人と人の間に入り込んだ新型コロナを取り除くか、あるいはウイルスがあっても大丈夫な疑似的な接触を実現するか。ワクチンもそうだし、マスクもそうでしょう。デジタルもそうですよね。デジタルは計測可能性が強みとされてきましたが、非接触の重要性が高まってきました。何かそういったアプローチに介在するビジネスというのが、伸びてくるかもしれません」
「『新型コロナでビジネスがうまくいっていない』という話をよく耳にします。しかし、これは新型コロナという現象と、ビジネスが落ち込んでいるという現象を結びつけているだけで、分析になっていません。コロナ禍のどのような事象がビジネスの劣化につながっているのかが、分からなければ、立て直すことができません。コロナ禍のどの部分が消費者に変化をもたらして、その消費者の変化がどのようにビジネスに影響したのか――というように、消費者の認識や行動を介したメカニズムで説明できる必要があります」
――企業が変化していくにはよりどころが必要となるのではないでしょうか。
「いわゆる『パーパス(目的)』ですね。私は大義と呼んでいます。企業の存在目的は存在し続けることにあります。ついつい利益をあげることが目的だと考えがちですが、存在しなかったら利益もなにもあったものではありません。存在し続けることが重要なのです」
激動期こそ大切な「パーパス」
「生き永らえるためには利益を出さなければなりません。しかし、それだけでは会社は成立しません。なぜそのビジネスをやり、それによって世の中にどう役に立つのかという存在意義がパーパスなのです」
「パーパスは激変期には特に大切です。現代は、そしてほぼいつの時代も『VUCA(ブーカ=変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代』だといえます。嵐が過ぎ去るのを待つという選択肢は現実的でありません。不確実な状況の下、意思決定しなければならないときに助けになるのがパーパスです。パーパスに従っている限り、大きく外すことはないといえると思います」