「ただ、かつての系列のような固定的な関係では、コスト高を招き競争に勝てません。長期にわたって付き合いたいと思える取引先と組みながらも、競争を勝ち抜くコストや効率をどう実現していくか、両者が考えなくてはならないというのが、新しい取引のあり方だと考えています。もしかしたらメインバンクが再評価されるかもしれません。いろいろな意味で長期的な取引が重要になってくるでしょう」
「顧客との関係でも同様です。何があってもその会社の製品を買い続けてくれる、あるいは価格が高くても会社の考えに共感するから買い続けてくれるような、そんな関係が非常に大事になってくるのではないでしょうか」
内向き志向とグローバル志向
「もしかしたら企業より前に社会が変わるのかもしれません。すでにバーチャル志向が強まっていますが、バーチャルになればなるほど、人と人とのつながりをどのようにつくり直し、再定義していくのかということも課題となるでしょう」
「また、小さなコミュニティーのプライオリティーが高まるのではないでしょうか。自分や家族、親しい人たち、地域へより重きを置くようになっていくのではないでしょうか。こうした内向き志向とこれまでのグローバル志向がどのように折り合っていくのか、注目しています」
「ソーシャルディスタンス(社会的距離)は非常に難しい問題です。特に懸念しているのはサービス産業への影響です。サービスの特徴は生産と消費が同時に行われることにあります。つまり在庫がきかない、つくりだめができないのです。供給者と消費者がその場に同時に存在するからサービス業なので、かなりの確率で接触しなくてはなりません。新型コロナにより、サービス業が厳しい局面に立たされることは不可避的といえます。今後、新しいサービスのあり方が問われるでしょうし、イノベーションが必要となるでしょう」
――このような大きな変化の時代、リーダーには何が求められると思いますか。
「最近出版した『リーダーの戦い方 最強の経営者は「自分解」で勝負する』(日本経済新聞出版)でも書きましたが、平時のリーダーと戦時のリーダーは異なります。我々が置かれた現在の状況は、明治維新、第2次世界大戦後の日本に近く、これまでの価値観では対応できないと思います」
リーダーに求められる「内省」
「これまでの人たちが自らのやり方を変えることは難しいでしょう。であれば、現在のリーダーは自らが適任かどうかも含めて、内省しなければなりません。今日をどう戦い抜くかと、戦後どうするかを同時に考えなくてはいけないのが今のリーダーなのです」
「パラダイムを変える人は、古い枠組みの下では変わり者扱いされ、組織で優遇されないことが多いはずです。ちょっと変わっていたり、度胸があったり、火事場で力を発揮しそうな人材を見いだして、活用することが今のリーダーには求められるでしょう」