「不確実性が高い今、1つのシナリオに依存した戦略は危険です。予測が外れた場合、甚大な被害を受けます。いろいろ考えたり、データを集めたりしても、それに依存して予定調和で進んでいくのではなく、何が起きてもおかしくないという前提で、物事にあたることが必要です」
「様子が見えるまで待った方がいいという態度が一番危険です。ただ、行動したからといって、必ずしもそれが成功するとは限りません。であれば、覚悟を持って行動することがリーダーには求められます。世間がどうであろうと我が社のあるべき姿はこうだとか、顧客に対してはこういう形で貢献するとか、環境が多少変わろうとも信じる道を進むリーダーが必要とされるでしょう」
――自分なりの解、シナリオの確度を高めていくためにはどうしたらいいのでしょうか。
「『パーソナルコンピューターの父』と呼ばれたアラン・ケイはこう言っています『未来を予測する最良の方法は自らそれをつくり出すこと』だと」
成功への近道「信じたものをつくり上げる」
「こういう未来にしたいとか、会社をこうしたいとか、そういう思いを貫くことで、新しい変化を起こしたり、変化に対応したりして、企業は生き延びることができるのだと思います。もし、それが外れたら、運が悪かったと諦めるしかないでしょう。未来は絶対的に予測できないのですから。だとすれば、これが一番に違いないとか、こういう会社にしたいとか、こうして社会に貢献したいということを決めて、そちらへと向かって行くべきなのでしょう」
「世の中が全部変わらなくても、自分たちの考えに共鳴してくれる顧客や従業員、取引先が何パーセントかでもいれば、大抵の企業は成り立ちます。未来を予測するよりは、自分の信じたものをつくり上げていく方が、成功確率は高いのではないでしょうか」
――企業のマーケティング活動はどのように変わっていくのでしょうか。
「マーケティングも『戦時』と『戦後』を分けて考える必要があるでしょう。今現在、どのようにマーケティングを展開するのかは当然大切です。しかし、コロナ後にどのようなマーケティングを展開していくのかを考えることはより重要だと思います」
まずは「ミッション」の見直しを
「ここでもまず考えるべきは、ミッション(社会的使命)の見直しです。そもそも自分たちの会社が何のためにあるのか、誰のために何をするのかということです」
「次がステークホルダーの見直しでしょう。これまで、マーケティングのほとんどは顧客や消費者を向いていました。B to B(企業間取引)では取引先でした。しかしこれからは自分たちが一番大切だと思う対象やセグメントをもう一度考え、それに照準を当てたマーケティングの展開が必要となるでしょう。その対象が特定の集団や地域だったら『ソーシャルマーケティング』に、社員や取引先なら『インターナルマーケティング』となります」
「こうした言葉は以前からありましたが、新型コロナと向き合う今こそが、もう一度最も大事なステークホルダーは誰なのかを突き詰めて考え、改めてマーケティング戦略をつくり直すよい機会なのではないでしょうか」
(平片均也)
日本経済新聞社が2020年より開催している、BtoBマーケティングに優れた取り組みを表彰する事業。ブランディング、デマンドジェネレーション(需要創造)、ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)など、BtoB企業のマーケティング活動全般に対して、創造性や新規性、経営へのインパクトなどを基準に審査し表彰します。アワードの詳細はこちら。