生成AIコンソーシアム

利益・リスクの均衡 日本主導で NIKKEI生成AIコンソーシアム 2023年度 第2回会合

PR
AI 対談

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

産官学の有識者が生成AI(人工知能)とビジネスの未来を議論する「NIKKEI生成AIコンソーシアム」は2023年10月17日、東京都内で第2回会合を開催した。講演や議論では、日本が世界を主導する形でAIが生む利益とリスクの均衡を図り、収益モデルを確立することへの期待が浮き彫りとなった。

「課題」に照準、企業の対応も議論

会合では基調講演や対談に加え、アドバイザーである東京大学大学院の松尾豊教授の前で、参加各社が取り組みを発表。日本IBMは生成AIと他のシステムとの連携、サテライトオフィスは、利用者のインターフェースの向上について説明。PwCコンサルティングは、リスキリングといった人材育成への活用、Googleは、生成結果の有害性の検知や信頼性の向上を紹介した。

その後は各セッションの内容を踏まえ、生成AIの「課題」の面に照準を定める議論を展開。有識者からは、社内ルールの確立の必要性や、経営陣のリーダーシップの必要性などが指摘された。

人間の触れ合い 重要さ増す――オズボーン氏

この日は、英オックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授がゲストスピーカーとして登壇した。オズボーン氏はAI・機械学習の世界的権威であり、2013年の論文「雇用の未来」で、「2030年には米国で47%の雇用がAIに代替される」と分析したことで、世界的に注目されている。

講演でオズボーン氏は、論文を発表してからの10年間でのAIの進歩について、「現在の生成AIは、創造性や社会的知性において、人間のレベルに達していない。驚くべき欠陥は多数あり、幼児でさえ返答できそうな答えを間違ったりもする」と現状について語った。

さらに、大規模言語モデルによる生成は「平均に向かって流れる」という点を強調。インターネット上の文章を集めて学習するため、生成物も「インターネットにある平均的な文章になり、非凡なものを生み出すことは難しい」とした。

このことは、労働市場にとって何を意味するのか。オズボーン氏の答えの一つは、「人間の仕事をAIが担うようになればなるほど、人間的な触れ合いや、実際に顔を合わせて人と接することの重要性が増す」というものだった。「直接会って相手にインパクトを与える能力は、最も魅力的な特性となるだろう」とも語った。

もちろん、契約書や請求書、報告書など「平均的な品質」しか必要としない多くの仕事は、AIによって代替される可能性は高い。「平均的な翻訳能力しかない翻訳者にとっては、仕事を失う結果になる」と論文通りになる可能性も指摘した。

一方で、「同時通訳のようなスキルの高い人たちは、通訳の品質が平均を大きく上回るため、当面はAIの影響を受けないだろう」と人間の優位性がある職種にも言及した。

また、AIが創造性や芸術に与える影響については、写真が発明された時に起きたことを例に挙げた。当時、多くの芸術家は、写真を「魂のないもの」「制作に技術を必要としないもの」と見なした。しかしオズボーン氏は、「写真の登場が新たな芸術の機会を生み出したように、AIが新たな機会を生み出す」との考えを示した。

最後に、「生成AIが利益を生むかどうか、実はまだ分かっていない」点を、ビジネスで重要と指摘。「Chat(チャット)GPTの返答は、Googleが検索結果を返すのに比べ、約10倍ものコストがかかると見られている」とし、長期的にコスト負担を克服する収益モデルを生めるかどうかが生成AIビジネスの課題とした。

 

後追いでない規制必要

オズボーン氏は講演に続き、松尾教授と対談した。対談の要旨は次の通り。

松尾氏 生成AIは、低所得者の賃金上昇につながると思うか?

オズボーン氏 生成AIがどう経済に影響するかは予想しづらい。(配車アプリの)ウーバー(Uber)が導入された際、その都市のタクシー運転手は約10%の賃下げになったという。生成AIで同様のことが起きても私は驚かない。しかし今は全地球測位システム(GPS)とナビゲーションの力で、より多くの人がUberの運転手として収入を得ている。技術の導入は勝者も敗者も生み出す。

松尾氏 生成AIの時代に、子どもたちは何を学ぶべきか?

オズボーン氏 私にも7歳と4歳の子供がいる。私は、子どもたちに「AIに慣れる」「精通する」ことを勧めている。10年先を見据えると、これらの技術に触れない仕事はないと思うからだ。だから私たちは皆、それらを使うことに慣れなければならない。

松尾氏 日本はG7で、AIに関する議論をリードする立場にある。

オズボーン氏 現在、AIを統治する方法には3つのアプローチがある。既存のルールや法律を利用する方法。AIを管理するためのまったく新しいルールを作るというもの。そして、特定のアプリケーションが害を及ぼすようになったら禁止するというアプローチだ。どのアプローチが正しいのかはまだわからない。AIの普及によって、社会的課題が浮上することは間違いない、現在、ほとんどの政策立案者は、まだ対処できていない。規制当局は、社会に害をもたらすようになってからの後追いではなく、物事の先端に立って対処する必要がある。

議論要旨 ルール策定 経営者層に期待

三部氏 生成AIには様々なものがあり、どんな目的でどの生成AIを採用するのかの検討が必要だ。また、国内外の様々な法律が関係する。よくいわれる個人情報保護法や知的財産法だけでないし、入力時だけでなく生成物の注視も必要だ。生じるリスクは個社ごとに異なるため、リスク分析を踏まえた上で社内ルールを含むガバナンス構築が重要になる。

石原氏 生成AIを活用したユースケースが増えていることが今回の会合でよく分かった。生産性をどの程度押し上げているかについても、そろそろデータを集められるのではないか。検証に期待している。

中条氏 生成AIへの取り組みを一過性にしないために、経営者層がリーダーシップを取り、社内のガバナンスやルールメイキングをけん引してほしい。

楠氏 生成AIがSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)として既にビジネスに組み込まれ始めているのは、活用拡大に向けて有益だ。日本の成長に向け、先進企業だけでなく多くの企業が取り残されずに生成AIを活用するためのモデルも共に検討したい。

松尾氏(総評) 日本IBMの様々な取り組みは素晴らしく、特に他システムとの連携は生成AI活用の一番の鍵になるだろう。既存のシステムやAIとどう統合していくか期待したい。サテライトAIのように用途別にプロダクトを細かく分けるアプローチは、顧客にとって明快で、生成AIの利用促進につながる。PwCから報告のあった調査結果(非公表)は、会話型AIにユースケースが引っ張られている傾向や、ESG分野での活用などの面で示唆に富んでいた。Googleの取り組みは今後課題になる点を網羅的にカバーしている。有害性検知、ハルシネーション対応などをプロダクト化して容易に活用できるようにしたのはさすがと言いたい。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

AI 対談

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。