ヒットの軌跡

ちょい飲み広めた中華王「日高屋」 関東から出ない理由 日高屋(上)

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地域によって知名度に差が大きい外食店チェーンの代表格が「熱烈中華食堂日高屋(以下、日高屋)」だろう。関東、とりわけ首都圏に集中出店しているので、茨城県より北、神奈川県より西ではお目にかかれない。しかし、店舗数は400を超えている。「ちょい飲み」ブームの火付け役としても有名だ。新型コロナウイルス禍を耐えた店舗にはかつてのにぎわいが戻りつつある。どうして日高屋は強く、そして全国制覇を狙わないのか。前身となった最初の店舗から50年の節目に日高屋の歩みと強みに迫る。

最初の名称は「日高屋」ではなかった。創業者の神田正・ハイデイ日高会長は1973年中華料理店の「来々軒」をさいたま市大宮区に開いた。以後、主に埼玉県内で店舗を増やして、東京都内へ進出。現在の主力業態である「日高屋」の展開を始めたのは2002年。第1号店を「日高屋新宿東口店」として開いた。

屋号の由来は地名だ。神田会長は埼玉県日高市(当時は入間郡日高町)の出身。社名の「ハイデイ日高」も日高の英語直訳とみえる。公式サイトでは社名の由来に関して「当社の店舗で食事をして頂き、気分が高揚(High)した一日(Day)を送って頂きたい」という説明も添えている。

稀有(けう)な業態だ。「熱烈中華食堂」と看板にうたう通り、大半のメニューは中華系だ。390円(税込み)の「中華そば」は代名詞的な存在。外食業界で値上げラッシュが続く中にあっても、この値段を守っている。「今は『野菜たっぷりタンメン』にも勢いがある」と、商品部の鈴木昌也部長は明かす。

しかし、日高屋は単なるラーメン店ではない。「W餃子定食」「肉野菜炒め定食」「ニラレバ炒め定食」などの定食にファンが多い。しかも純粋な中華とは言いがたい「生姜焼き定食」まで看板メニューの一角を占める。おつまみメニューには「イワシフライ」「メンチカツ」「やきとり」など、明らかに中華の枠からはずれた面々がひしめく。

選択肢の多さは自在の使い勝手を呼び込んだ。店内で見ていると、午前中から男性の年配客グループが3人、4人と連れだって入ってくる。ビールやチューハイを頼んで、おつまみメニューから手慣れた振る舞いで「ギョーザ、6個のほう」「そら豆」「冷ややっこ」などと注文。「昼前飲み」が始まった。

ランチタイムは定食を頼む、仕事中とおぼしき1人客が目立つ。夕方からは仕事帰りらしき1人客が今度は、ハイボールやホッピーセットを追加。定食とおつまみのミックス注文も増える。もっと遅い時間にはしっかり飲んで、しめに麺類という流れも。要するに、中華系のオールデイダイニングだ。

和洋中をまたいでメニューが多いから、食べ飽きないのに加え、飲みたいアルコールとの相性がいい。行く前から「何を食べるか」を決めなくて済む懐の深さゆえに、ハンバーガー店や牛丼店に比べてふらりと足を向けやすい。仕事帰りに軽く飲む「フラリーマン」が好んで立ち寄る理由だ。

 

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