アフターコロナの地方創生

事業創造と承継が両輪 育成通じて次代を拓く 日経地方創生フェス「 DAY3:事業創造と事業承継」〜伝統資産生かした起業促進と人材育成〜

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地方創生 事業承継

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地域活性化を実現するためには、新たな事業創造に加えて、それぞれの地域でこれまで培われてきた技術や文化の継承が欠かせない。東京ミッドタウン八重洲カンファレンスで開催された「日経地方創生フェスティバル」、10月12日の最終日は「事業創造と事業承継」をテーマに、各地で進められているスタートアップの起業促進や、伝統技術・文化を次世代に受け継ぐための人材育成、M&A(合併・買収)の取り組みなどを幅広く紹介。地方創生の最前線で活躍する官民リーダーらによる対談、討論では、地域ビジネスの課題解決やイノベーション創出に向け白熱した議論が展開された。

 

【基調講演】宮大工の技術世界に広める

市川 千里氏 宮大工女将/花升木工社寺建築 専務取締役/宮大工木造技術継承協会 専務理事

宮大工に嫁いで18年、女将として多くの職人を見守り続ける一方、そばにいたからこそ解った日本のものづくりの現状課題と解決を語る。技術は世界最高峰にも関わらず、仕事である前に道であり地道で寡黙なため現代社会では絶滅危惧状態。だからこそ代弁しなければという思いで伝え始める。

日本の木造建築は、規矩(きく)術・継手仕口・木組みなど匠の技で、老朽化した部分を取り替え、木組みで耐震構造、カンナ削りで木に防水加工するなど、古くから匠の知恵の継承により、数百年も長持ちする、まさに持続可能な元祖カーボンニュートラル建築。何歳になっても「道」を追求する姿は実に尊く宮大工の道には日本の真髄が垣間見れる。

技術継承は、教科書もなく口伝でもない。棟梁を「目で見て学べ」目伝の世界だ。しかしこのままでは減少の一途、アナログ時代最後の現役宮大工職人がこれからのデジタル時代の若者に技術継承を開始。木と共に千年間どんな時代も乗り越えた宮大工の技は「道」としてこの先未来千年続く。

2019年「宮大工SDGs」を開始、宮大工の技と日本の木の文化を世界に広める「宮大工モバイル茶室」を発案した。世界に出て改めて「日本の技は世界の雛型」だと確信し文化庁採択事業高付加価値観光資源「宮大工ツーリズム」を日本初開催。建築現場で現役宮大工が解説し世界中の人が弟子入り体験ができる。こうした活動で気づいたのは日本の精神性の高さだ。「地材地匠」を目指し県森林組合・県庁・横浜技連協と一緒に間伐材を利用する道も探っている。

NPO宮大工木造技術継承協会では「こども宮大工1000人プロジェクト」を実現。子供たちが自国の建築を知り、棟梁とカンナ体験ができる。小さな活動を通して日本の若者の瞳が輝き、尊い技術を持つ高齢者が若者を教えていける環境づくりをしていく。それがこれからの日本を継承する大切なポイントだ。

 

【パネルディスカッション】「温故創新」で可能性開く

信時 正人氏 ヨコハマSDGsデザインセンター センター長 【モデレーター】
杉本 洋文氏 計画・環境建築 代表取締役会長
宮本 裕子氏 横浜市 にぎわいスポーツ文化局 文化芸術創造都市推進部 文化振興課 担当係長
市川 千里氏 宮大工女将/花升木工社寺建築 専務取締役/宮大工木造技術継承協会 専務理事

信時 2015年に国連でパリ協定とSDGsが採択され、世界は新しい流れを作る時代に入った。ヨコハマSDGsデザインセンターでは環境、経済、社会の3つのバランスの取れた価値観で事業を構築することを目指している。木に関係した一つの例では、間伐材を加工して木のストローを製造、地産地消に取り組んだことがある。その延長としてセンターは今後、いろいろな形で宮大工の世界に協力できたらと思っている。

宮本 横浜市の観光に携わる中で宮大工など職人とのさまざまなコラボをしてきた。国際会議参加者への土産を伝統漆器にしようとしたことから、伝統工芸の世界から職人が消えつつあることを知った。さらに花升木工との出会いがあって宮大工ツーリズムが実現。匠の技に新しい価値が加わるコンテンツを創出し、人気を博すことができた。

杉本 40年以上にわたって木造建築を手がけてきた。日本は国土の70%近くが森林で各地方に多様な木があり、それを扱う技術を持つ職人がいる。日本は世界に誇れる木造建築の国である。伊勢神宮の式年遷宮からもわかるように木造建築はサステナブルだ。20年かけて、森で木を育て、宮大工が技術を次世代に伝え、建て替える。西欧建築では同時代の建築は分野が違っても同様式、日本の建築は同時代でも神社、住宅、城とすべて様式が違い、それに対応できる職人がいた。日本では木造建築が建てられない時代もあった。その後、約50年を経て、木造建築を建てる気運が高まり、公共事業で低層建築の木造が推進されている。欧米では中高層建築、さらにはインフラも木造化する潮流にあり、日本でもかなりその方向に向かっている。「温故創新」と言って、昔と同じ建築だけでなく、新しい建築にも宮大工の技術は役立ち、可能性も開けると考える。

「地材地匠」が大事に

信時 杉本さんから温故創新について解説願いたい。

杉本 木造の基本は素材を見てどう料理するか。大工なら職人の目で材料を見て使うのが基本、過去の技術で過去と同じものを作るだけでは未来はない。伝統的技術をしっかり踏襲し、それを発展させることだ。

市川 私が杉本先生に学んだ印象深い言葉が「地材地匠」。地元の材料を使い、地元の匠が作ることが大事だ。職人のものづくりの感覚を言語化されていることに感謝している。

信時 宮大工や木を使うことの価値をどう作っていくか。

宮本 職人の価値は日本の強みだと思うが、それを感じ取れる人が減っているのは教育の問題もあるのでは。ユーザーの文化度を上げる必要もある。

杉本 子どもたちの感性は非常に大切だ。これからは自然の素材の性能をハイテクによって高める時代。それを子どもたちに担ってほしいと願っている。

市川 自然の木は一本一本違う。それを見てほしい。森を見て一定量を間引いて街で使い、森林を活性化させていく。多くの人が宮大工の現場を訪れ、森と技術継承のことを考えていただければと思っている。

 

【企業講演】再エネで地方の強み生かす

鈴江 崇文氏 フィット 代表取締役

フィットは徳島県板野郡という人口1万5000人の町にある。このような人口の少ない地方でも、強みを活かしたチャレンジによって社会に貢献し、経済的インパクトのあるビジネスを創出できる。そのために当社は「東京でもできる」「社会の役に立たない」「儲からない」の3つの「やらないこと」を宣言し事業に取り組んでいる。

地方には、食やエネルギーを生産できる、地球の健康に役立つ、世界的な経済・投資の潮流に乗れる、という強みがある。そこで我々は、発電事業者向けの太陽光発電所や蓄電所を製造・販売する再生可能エネルギー事業、電力会社に頼らず電力を自給自足する住宅を提供するスマートホーム事業、再生可能エネルギーと農業を一緒に行うスマートアグリ事業を展開している。具体的には、個人向けの太陽光発電、スマート農業施設での利用、植物工場に用いるエネルギーの低減などが可能だ。

これらの事業をする理由は、日本人口の3分の2、1都3県を除く約8000万人は地方に在住し、その活性化が国の元気になると信じるからだ。地方は土地が安いし、地球温暖化の中でグリーントランスフォーメーションは世界的潮流である。日本ではエネルギー自給率が13%、食料自給率はカロリーベースで38%しかない。世界では再生可能エネルギーは既に主力電源であり、2030年の最安電源は太陽光。量も現在の2倍という予測もあり、これを使わない手はない。日本は国土の67%が森林だ。そのため山を切り開くのではなく、耕作放棄地を太陽光発電に活用できないかと考え、ビジネスを検討している。

太陽光発電は経済面でも有利だ。住宅の屋根に装置を取り付けて30年使う場合を想定すると、EVを含めた電気を自家消費でき、電気代がかからない。個人がそうした住宅を持てば、賃貸や浮いた電気代分を投資することも考えられる。また発電と農業の組み合わせもあり得る。地方の人々がこれまでのように電力会社経由だけで電気代を払っていたら所得は外に出ていくだけになる。しかし自ら発電し、その一部でも還流する仕組みを作れば、地方はもっと住みやすくなると考えている。

 

【パネルディスカッション】中堅企業の成長カギに

三宅 卓氏 日本M&Aセンターホールディングス 代表取締役社長
池田 直樹氏 十六フィナンシャルグループ 代表取締役社長
森本 智子氏 フリーアナウンサー

池田 当社グループは2年前に持株会社体制に移行して中核の十六銀行を含む11社でグループを構成している。事業領域の拡大を目指し7月には経営承継を支援するNOBUNAGAサクセションを、日本M&Aセンターホールディングスとの合弁事業として設立した。

三宅 当社は中小企業のM&Aの仲介を専門にし、国内7カ所、ASEANでは5カ所の拠点がある。小規模企業に対してはネットを使ったバトンズという会社が対応。M&Aは右肩上がりで増えている。当社は世界一成約件数が多く、2022年は989件の成約実績がある。

森本 地方創生の取り組みについて聞きたい。

池田 この2年で設立したのは、投資会社NOBUNAGAキャピタルビレッジ、十六電算デジタルサービス、カンダまちおこし、NOBUNAGAサクセションの4社だ。

カンダまちおこしでは、独自のクラウドファンディングプラットフォーム「OCOS」でローカルな課題解決に取り組む事業者が自ら資金調達できる仕組みを提供している。7月には、岐阜市役所旧本庁舎跡地で、本社機能やグループ本社を集約し、地域住民が集える空間を兼ね備えた16FGオフィス&パーク構想を発表。2027年の完成を目指している。

三宅 当社と十六銀行は、20年以上パートナーとして一緒に仕事をしてきた。中小企業は日本で約380万社ある。2025年には245万社の社長が70歳を超え、127万社が後継者未定といわれている。このままだと廃業に追い込まれる可能性がある。その中の60万社は黒字。これをなんとかする必要がある。昨年休廃業した会社の数は岐阜と愛知だけで4000社弱もあり、これを食い止めるという共通認識で合弁会社を作った。春慶塗や飛騨高山の木材を使った家具、金属加工の技術などのすばらしい技術を一緒に救いたい。

池田 飛騨高山で支店長をしていたころ、後継者不在の造り酒屋と、孫に新事業を経験させたい旅館を引き合わせ、事業承継が実現した。孫の若い経営者は飛騨牛レストランや土産店を併設し酒造店を観光複合施設に転換して成功した。また廃校になった小学校にウイスキー蒸留所をリニューアルオープンさせている。若い経営者のつながりから新たなビジネスの連携も生まれている。

森本 合弁会社設立の背景について聞きたい。

池田 地域の事業承継は待ったなしだ。企業戦略の一つである異業種との協業・合併のメリットは、質の高いサービスをスピード感をもって地域に提供できることだ。パートナーとの信頼関係も重要になる。

スター企業の育成を

森本 これからどのような会社を目指していくのか。

三宅 中小企業の事業承継だけを解決して企業を残したら、それで地方創生が成り立つかというとそんなことはない。地方の発展には中堅企業の成長がカギになる。スター企業をつくらないと優秀な人材は戻ってこない。優良企業に対しては上場支援をして岐阜県下でスター企業をつくっていきたい。また、若い力が安心して起業ができるように支援していく。M&Aは成功することが大事。買い手企業にとっては買収したときがスタートになる。

池田 地域の経営者と本気で向き合い、本気でこの会社を育てていきたい。

三宅 我々のパーパスは「最高のM&Aをより身近に」。地方の企業に寄り添い、最高のM&Aを実現したい。

 

【基調講演】万博とIRを起爆剤に

溝畑 宏氏 大阪観光局 理事長

持論は「Think Globally Act Locally」だ。常に夢と大義を持ち、周囲の共感を得て物事を進める、リスクを取り、リーダーシップを発揮して未知を恐れずに行動することを重視してきた。それには世界の動きを感じることが欠かせない。

私には東京一極集中が進むと国が歪んでしまうという危機感があり、1500年前から商業都市として栄えた大阪を「世界最高水準、アジアNo.1」とすることを目標に日本を変えたいと考えた。大阪を関西2府4県のハブ、瀬戸内、北陸などを含む半径2時間圈のハブとして機能させる。関西3空港は合わせて約5000万の集客だが、7000万を集めるチャンギ空港や仁川空港を抜きたい。観光業界に優秀な人材を確保するには日本の観光業の生産性、収益性を高め、そこで働く人々の賃金を上げなくてはならない。

GDPを見るとインバウンド消費は旺盛に伸びているので外需を取り込み、内需を喚起することが鉄則だ。起業家の皆さんには海外マーケットへの挑戦をお願いしている。コロナの影響でサービス産業は厳しい状況になったが、賃金上昇とサービスの質の維持の両立を目指さなくてはならない。

大阪観光局としては2030年、40年に向けて大阪の姿を示し、経済の成長を促す。インバウンドでの1人当たり消費額の拡大、観光アプリの稼働、中東やインドからの観光客の強化などを図る。このほか食関連のイベント開催、文化・芸術と観光との連携、プロスポーツ観戦促進なども行う。富裕層対策として、海外の顧客が日本の医療、美容などのサービスを受けられる仕組みづくりもしている。

また大阪から京都のほか、滋賀、和歌山などに足を伸ばす周遊、LGBTQ、高齢者、障害者への対応にも力を入れる。富裕層対策の一環であるIR(統合型リゾート)。その大部分は国際会議場、展示場、レストランなどでカジノはごく一部だ。大阪・関西万博とIRを都市、観光、地域振興の起爆剤にしたい。

 

【パネルディスカッション】八重洲起点に地方支援

岩田 真吾氏 三星グループ 代表
成田 智哉氏 マドラー CEO
上垣 和氏 三井不動産 八重洲街づくり推進室 主任
山本 雄生氏 ユーザベース NewsPicks ビジネスプロデューサー

山本 POTLUCK YAESUという地域経済創発がテーマのプロジェクトについて、パートナーとともに話していきたい。

岩田 東海道新幹線の岐阜羽島駅周辺の尾州地域は高品質なウール生地を作る産地で、そこの5代目として生まれた。工場をものを作るだけでなく使い手と作り手が繋がる場と捉え、面で尾州を発信したいと始めたのが「ひつじサミット尾州」だ。

成田 北海道胆振東部地震を機に社会課題を解決し世界をよくするビジネスを起こしたいと思い厚真町に移住し起業した。共助型のプラットフォームを作っている。「えぞ財団」ではPOTLUCKと連携している。

上垣 東京ミッドタウン八重洲のオープンラウンジを拠点に人がつながる場と機会を提供するプロジェクトで、当社とNewsPicksの共同企画だ。POTLUCKは「持ち寄る」という意味。物だけでなく、全国の取り組みや意思を持ち寄り、混ざり合うことで新しいことが始まるという思いを込めている。八重洲は交通の中心にあり誰にでも開かれている。地域イノベーションの聖地にしたいと考えた。

山本 最初の印象を聞きたい。

岩田 友人の友人からスタートし、最初は信頼関係だけだった。

成田 信頼関係で生まれた付き合いには、その先があると感じる。

上垣 地域経済を本気で盛り上げたいという空気感をつくりたい。スタジオではリアルと動画配信のハイブリッドイベントも開催している。

山本 ここはゲストとキャストが入れ替われる場所になるといい。

上垣 POTLUCK BARは、地域の人に一日バーテンダーになってもらうイベントだ。

岩田 現在の集客一位は私が開催した岐阜バーで120人ほど集まった。「岐阜になら勝てるかも」と、別の地域がチャレンジしたらおもしろい。連携地域はどうやって選んでいるのか。

上垣 今は人の紹介だ。まだ発掘しきれていない。

成田 熱量が高い個人と企業という組織、両方の立場で接してもらえるとコミュニケーションがしやすくなる。

山本 企業のアセットを背負い、地域で掛け合わせをする人はまだ少ないイメージだ。

新幹線車内を貸し切り

岩田 POTLUCK CARAVAN×ひつじサミット尾州では、JR東海とのコラボにより東京駅から岐阜羽島駅までの新幹線を貸し切りイベントを行った。これは、別のプロジェクトで一緒にやっていた担当者と上垣さんが、偶然繋がったことで成立した企画だ。まったく想像すらしていなかった。

上垣 CARAVANは地方でイベントをやる企画だが、八重洲を起点に新幹線で地方へ行こう、というものだ。

岩田 登壇するゲストと観客が一緒に来るのも面白い。

成田 ローカルにいると、行政の誰々さんとか、会社の誰々さんというつながり方で一緒につくっていける。

岩田 適切なサイズ感の中でキーマンを見つけ、アクションできるのも地方の面白さだ。

上垣 地域経済の盛り上がりをより拡大させ爆発させていくことを、八重洲発プロジェクトとして支援していきたい。

 

【基調講演】縦横の連携が関西の強み

中野 智哉氏 i-plug(アイプラグ) 代表取締役CEO

リーマンショックで落ち込んだIPO(新規株式公開)の件数は景気の回復とともに増加。直近では日本全体で年間に100社前後のスタートアップが誕生している。関西もかつては年に数社程度だった起業が、近年は件数、シェアともに上昇基調にある。

企業経営に必要な条件は、ヒト、モノ、カネ、情報の4つの経営資源とされる。例えばヒト。企業経営には起業家、CEO(最高経営責任者)に加え、COO(最高執行責任者)、CFO(最高財務責任者)といった経営メンバーが不可欠だが、関西ではまだまだ経験者不足だ。一方、営業やマーケティングなどのビジネス人材については、関西は人口が多く、学生の多い地域ということもあり、採用しやすい環境にある。今の学生は大手志向が強いといわれるが、最近はスタートアップに対する関心も高まっている。

主な資金調達の手段としては助成金、借入金、株式発行などがあるが、関西における公的支援は手厚く、メガバンクや地銀による支援体制も充実。近年はエンジェル投資家も増えており、資金調達環境は着実に整ってきている。

スタートアップの誕生には、こうした経営資源環境や経営リソースが不可欠だが、成長するためには互いに切磋琢磨して刺激し合う起業家同士の強いネットワークが極めて重要だ。その点、関西には、先輩が後輩を支援し、その後輩が次の後輩を支援するという独特の文化があり、この文化が関西経済のエコシステムをより強固なものにしている。

さらに最近では、関西経済同友会が「関西ベンチャーフレンドリー宣言」を発表。2年前には京阪神3つの連携した区域として関西がエコシステムのグローバル拠点にも認定された。大手企業やスタートアップ同士の縦横の連携が、行政や経済界などの支援によって一気に広がり、関西が世界にも注目されるスタートアップエリアに成長する期待も高まっている。

 

【パネルディスカッション】変化を恐れずチャレンジ

永原 宏紀氏 ネクスタ 代表取締役CEO
三國 浩明氏 建設ドットウェブ 代表取締役
片山 裕之氏 Edeyans 代表取締役CEO
モデレーター 中野 智哉氏 i-plug(アイプラグ) 代表取締役CEO

中野 各スタートアップの事業内容、経緯などを伺いたい。

永原 学生時代に独学で工学を勉強し、キーエンスに入社。営業3年目で全国トップを取ったのを機に退社した。父親の会社で4年間、製造業向けシステムの受託開発を行い、2017年に工場の生産業務を一元管理するソフトをクラウドで提供するネクスタを立ち上げた。

片山 Edeyansは大学在学中に立ち上げたホテル向けデジタル清掃サービス会社。「ホテル業界の課題をテクノロジーとオペレーションで解決し、観光立国日本を支える」が事業ミッションだ。人材不足問題の根源は、紙や電話、ファクスといった生産性の低い作業にある。これが利益率を下げ、労働条件悪化で人材流出を生んでいる。弊社システムを通じ、観光DX化を推進したい。

三國 前職のコンピューター会社で建設業向け営業を担当する中、原価管理の必要性を痛感し、以来、システム化の支援を行ってきた。その実績を生かして01年、金沢で建設ドットウェブを創業。人手不足解消のための建設業向け原価管理システム「どっと原価シリーズ」を提供している。同分野における導入社数では現在、国内トップの地位にある。

中野 起業のきっかけは。

永原 経営者の父親の影響で「いずれ自分も」と。エンジニア経験もあり、製造業システムの営業も設計もできる強みを生かせば、業界にイノベーションを起こせると考えた。経営者仲間から「人の会社で成長しようと考えるようでは経営者失格」と叱咤されたことも大きい。

片山 教育者の家系で自分の好きなように生きろと常々いわれていたので、いずれは自分で事業や商売をするものと考えていた。高校の時通っていた塾の先生が大学生で起業、それを近くで見ていたことも大きい。

課題は人材確保

中野 直近で発生した課題、またそれをどう解決したか。

永原 カネとヒトに尽きる。資金の集め方に迷う中、仲間が行ったエクイティ調達が非常に刺激になった。人材は関西だけでなく全国から経験者を募り、オンラインとオフラインを共有しながら仕事を進めている。

三國 人材確保が課題だ。自前主義が基本も、限界がある。自分でしかできない分野と、誰にでもできる分野を見極め、外部の力で不足を補っている。

片山 ホテルが顧客なので、コロナショックが大きい。当初は数カ月で収束すると見ていたが、赤字は増す一方。そんなとき先輩経営者から「3〜5年は続く」といわれ、提案されたのが除菌・消毒事業。この言葉を信じてコロナを乗り越えた。

中野 どういう人がスタートアップに向いているだろうか。

三國 人がやっていないことにチャレンジできる人。時間や約束を守ることも基本だ。

永原 地方はコミュニケーション意識が強いが、どんなコミュニティーでも熱い思いを持ってトップを取れる人は強い。

片山 変化することにちゅうちょしない人。自分自身、常にそれを意識している。

 

◇ ◇ ◇

※本フェスティバルのアーカイブ視聴はこちらから

日経地方創生フェスティバル
DAY3:事業創造と事業承継〜伝統資産生かした起業促進と人材育成〜
【主催】日本経済新聞社
【後援】内閣府
【特別協力】三井不動産
【協力】よんなな会

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