日経メタバースプロジェクト

シンメトリー沼倉氏「新たなサービスの登場に期待」 日経メタバースコンソーシアム未来委員会メンバーに聞く

インタビュー メタバース

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日本経済新聞社が2022年3月に開始した日経メタバースプロジェクトにおける「日経メタバースコンソーシアム未来委員会」メンバーとして参加したシンメトリー・ディメンションズCEOの沼倉正吾氏は、空間・都市向けデジタルツイン構築及びプラットフォーム開発を担う企業トップならではの知見を随所で披露した。未来委員会に参加した感想と今後のメタバースの展望について聞いた。

社会課題解決の糸口となるデジタルツイン

――第2回未来委員会では、現実世界の情報をデジタル化して仮想空間に再現する「デジタルツイン」の概念や活用方法について議論がなされた。メタバースの中で、このデジタルツインがどういう意義を持つのか、改めて聞きたい。

「メタバースは一般的には仮想空間上に作られる非日常的な世界として語られることが多い。デジタルツインはその中で活用しうる技術の1つだ。現実世界にある物体や生き物の形状、動き、あるいは温度、湿度、ノイズといったものをデータにして集め、電子空間で再現する。デジタルツインを分析することで、現実空間にある課題を見つけ、それをどう解決するかを検討し、さらにはデジタルツインを使ってその効果を検証できる」

――メタバースは非日常的なエンターテインメント空間というイメージがあるが、それ以外にも現実空間を再現してシミュレーションに使い、現実空間の課題解決につなげるといった用途があると。

「シミュレーションのための使い方だけでなく、その場所を再現してイベントやゲームの舞台にする使い方もある。仮想空間に渋谷を再現した『バーチャル渋谷』などの取り組みはその一例だ」

――第2回委員会で紹介した土砂災害の状況把握の事例も印象的だった。

「21年に静岡県熱海市で土石流災害が発生した際、静岡県が独自に作成していた地形の3Dデータを利用し、当社の協力の下で土石流の被害状況を数時間で把握した。災害が起きる前の地形データと、起きた後のデータを突き合わせるという方法を使った。これにより、通常は1〜2カ月かかる調査・報告を即日行うことができた」

――デジタルツインの活用が進むのと並行して、都市の3Dデータを整備する国土交通省の「プロジェクト・プラトー」も着々と進行している。何が変わるか。

「スマートフォンが登場して、それ以前には考えられなかったようなサービスが続々と誕生した。当初、スマホは『何に使えばいいのか』とマニア向けのガジェット扱いだったが、今や地図アプリやそれを活用した口コミやレコメンド(推奨)機能、SNS(交流サイト)など、多くの人が日常的に活用している。プラトーでも同様に様々なサービスが生まれるだろう。事業者はどんな新しいサービスを創り出せるかが問われている段階だ。新しい発想をどう引き出していくか。プラトーでは、エンジニアチームがアイデアや技術を競い合う(コンテストの)ハッカソンを数多く実施している。こうした取り組みにも注目してほしい」

新しい働き方、人材雇用の在り方を模索

――第3回未来委員会では、メタバースによって働き方がどう変わるのかという議論があった。

「距離の制約がない仮想空間を利用することで、現実空間で困難を抱える方が働けるようになったほか、遠隔地の人や海外の人とも協業できるようになった。メタバースを活用することで、より魅力的な人材を雇用できるようになった。メタバースを活用できる事業者こそが、次の世代で大きく成長を遂げられる可能性がある」

――23年度の未来委員会ではどのようなテーマで議論したいか。

「エンタメ系の話題が多いメタバースだが、日経メタバースコンソーシアム未来委員会では、ルールメイクや産業への活用など、現実的で建設的な話題が多く、多くの事業者にとって参考になったのではないか。最近は画像や文章を生み出す生成AI(人工知能)が大きな話題になっており、当然メタバースにも活用されるだろう。生成AIの技術が一気に開花したように、どの技術からどのようなサービスが生まれるかまったく予測できない。生成AIなど新しい技術についても情報交換していきたい。新しい技術に臆せずに面白がる気持ちが、新たなサービスを生み出す糧となる」

(聞き手は池上輝彦、原田洋)

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