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成長領域を追い風に宇宙ベンチャー育む(3) 「NIKKEI宇宙プロジェクトフォーラム」トークセッション・パネルディスカッション・ショートメッセージ

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宇宙航空研究開発機構(JAXA)による、宇宙事業に取り組むスタートアップ支援の加速が追い風となり、国際競争力を持つ宇宙企業が続々と誕生している。奇しくも宇宙飛行士の選抜試験期間中に開催された本フォーラムでは、スタートアップ企業の経営者をはじめ官・民から様々な人材が登壇した。

日本経済新聞社と日経BPは2022年12月5日〜10日、様々な立場の人々や企業とともに、経営、投資、環境、ジェンダーなど多様なテーマについてSDGsの実現を議論する国内最大級のイベント「日経SDGsフェス」を開催しました。

このうち、12月9日に開催したトラック「NIKKEI宇宙プロジェクトフォーラム」のプログラムからトークセッション・パネルディスカッション・ショートメッセージをダイジェスト版でご紹介します。

◇     ◇      ◇

【トークセッション 】幅広い人材へ間口広げる

向井 千秋 氏 元JAXA宇宙飛行士
阿部 貴宏 氏 宇宙航空研究開発機構(JAXA)有人宇宙技術部門 宇宙飛行士運用技術ユニット 宇宙飛行士運用グループ グループ長
大森 陽生 くん 宇宙キッズ/福井県鯖江市神明小学校2年生
[進行]榎本 麗美 氏 宇宙キャスター

JAXAの宇宙飛行士選抜試験のさなかに行われたトークセッションは、同試験にエントリーした8歳の宇宙キッズ、大森陽生くんを交えて和やかなムードで始まった。

大森くんは、3歳の時に福井県自然科学館で宇宙関連の展示を見たことがきっかけで宇宙に興味を持った。大森くんの夢は、数学、科学の知識を生かして人類の役に立つこと。「地球外生命体を見つけ、宇宙エレベーターをつくりたい」と意気込みを語った。

アジア初の女性宇宙飛行士としてスペースシャトルに搭乗した向井千秋氏は宇宙飛行士に必要な資質として「チームの役に立つ得意分野を持つことと、チームワーク、コミュニケーション能力」との条件を挙げ、「自分なりの考えが求められる。互いを尊重した上での議論が、1+1から3や4を生む」との考えを示した。

JAXAで宇宙飛行士選抜試験を担当する阿部貴宏氏は「活動領域が、国際宇宙ステーションから月にまで広がる可能性があるため、心身ともに健康で強じんな人物像を描いている」と述べ、今回の選抜で応募資格を変更し、間口を広げた理由を説明した。

自然科学系などの経験、知識は試験を通じて資質を見極める方式に切り替えることで「まずは幅広い人材に応募いただき、その中から適した方を選定する方向に転換した」という。

選抜試験に挑戦する受験者に伴走してきた宇宙キャスターの榎本麗美氏は「挑戦を通じて顔つきが変わり、成長していくことに感動した」と評価した。

一方、SDGsと宇宙の関連性については、向井氏が「宇宙での活動は、地球を次の世代に渡すためのモデルケースとしての意味を持つ」と指摘。その理由として「宇宙では食糧や空気の量が限られるため、リサイクルは死活問題。その技術は災害時の隔離所や砂漠など、地球上のあらゆる場面に応用できる」と強調した。

◇     ◇     ◇

【パネルディスカッション】異業種との共創で新産業

伊達木 香子 氏 宇宙航空研究開発機構(JAXA)新事業促進部長
小玉 祥司 日本経済新聞社編集委員
[進行] 神武 直彦 氏 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科教授

神武 現在、衛星データは、地上のネットワーク、クラウドと組み合わせて、社会課題の解決に活用されている。高機能化とコモディテー化も進み、活用の領域はさらに広がる一方だ。私が直接関わった事例に、宇宙技術をラグビー選手のコンディション管理に生かした取り組みがある。GPSセンサーで取得した選手の動きや運動量のデータを練習計画に反映することで、劇的なけがの低減効果が得られた。この技術は、業種の異なる放牧管理にも応用された。

伊達木 従来、JAXAは主にロケットや衛星の研究・技術開発に取り組んできた。今はそれらを何に使うのか、何のために使うのかが重要だ。私が所属する新事業促進部は、宇宙技術の利用と産業振興の拡大を使命とする。スタートアップ、ベンチャーのほか、参入が増える非宇宙系企業とも組みながら成長をサポートすべく取り組む。JAXAが2018年に開始したパートナーシッププログラム「J-SPARC」では、多様なパートナーとの共創を重視している。宇宙事業と宇宙事業以外の掛け合わせによって化学反応を起こしていきたい。

 

小玉 官から民への流れが急加速し、多くの民間企業が良質な衛星データを提供している。一方で宇宙を縁遠いものと考えるユーザーもいまだ多い。自前で衛星を打ち上げなくても活用できる多くの衛星データがあり、これらを多くの市場、分野でビジネスに生かせるはずだ。水や空気の再生といった、宇宙の極限状態を生き抜く技術も、地球の社会問題解決に役立つだろう。

伊達木 衛星データの利用価値は、既に1次産業、2次産業にとどまらず、金融、保険などを含めた3次産業、および個人ユーザーにまで開かれている。顕在化しつつある宇宙人材の不足には、JAXAをはじめとする宇宙業界と他の業界の人材の流動性を高めることで対処できるはずだ。

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【ショートメッセージビデオ】

星出 彰彦 氏 JAXA宇宙飛行士

現在、米国を中心とする民間宇宙ステーションの検討や、国際協力のもと月面での活動を行うアルテミス計画、月周回軌道の宇宙ステーション等の様々な宇宙計画が進められている。太陽光発電や水・空気の再生、食物の生育などの分野で高い技術力を持つ日本には、宇宙のサステナビリティー分野での活躍が期待される。

山崎 直子 氏 元JAXA宇宙飛行士

宇宙から見る地球は美しく、守るべき存在と感じられた。国全体の成長戦略・実行計画のなかでは、宇宙を通じた社会課題の解決が求められている。宇宙産業は成長産業であるとともに、安全保障、防災、SDGsの達成にとって不可欠の存在。宇宙ビジネスをより活性化させ、着実に社会実装していく必要がある。

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