ヒットの軌跡

チョコモナカジャンボは鮮度が命 常識破る出来たて仕様 森永製菓「チョコモナカジャンボ」(下)

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森永製菓の「チョコモナカジャンボ」は1972年の発売から半世紀がすぎたロングセラーのアイス(氷菓)だ。持ち味のパリパリ食感を支えているのは、高いレベルの鮮度管理。低温で保存されるアイスには、本来は必要ないはずの鮮度管理に、なぜ全社一丸で挑んだのか。世代や性別を越えて支持される理由に迫る。(前回記事<チョコモナカジャンボ、なぜ強い パリパリ伝説の秘密>)

アイスは面白い商品だ。たとえば、賞味期限がない。低温で保存される商品だから、劣化のリスクが低いからだ。食品衛生法の例外的な扱いとして正式に記載を免除されている。一方、購買タイミングは夏がメイン。だから、冬のうちにまとめて作って、流通在庫をためておき、夏にまとめて売るという生産カレンダーが成り立つ。工場の稼働を年間で平準化しやすい。国内で生産される、大半のアイスはこの手法を選んでいるという。合理的な判断だ。

しかし、「チョコモナカジャンボ」は「流通在庫をため込まない点で異例の取り組み」と、森永製菓のマーケティング本部冷菓マーケティング部アイスクリームカテゴリー担当の中村望ブランドマネジャーは明かす。他社の動向をすべて知るわけではないが、「アイス業界で類似の体制で臨んでいるケースは聞いたことがない」という。コストや手間の面で負担が生じるので、主流になりそうもない仕組みを、森永はなぜ選んでいるのか。

「製造から5日以内での工場出荷を目指している」と、中村氏は具体的な数字を挙げて説明する。半年先の夏に向けて在庫を積み上げていく他社の方式に比べると、スピード感の違いは明らか。ほとんど「受注生産」のような生産体制だ。実は同じ森永のアイス商品でも「アイスボックス」や「サンデーカップ」では、こうした徹底した鮮度管理を採用していない。「チョコモナカジャンボ」と「バニラモナカジャンボ」に限った例外的な取り組みだ。

生産、営業、物流が一体となったこの鮮度管理のシステムを、森永では「鮮度マーケティング」と呼ぶ。2000年代初めに導入し、20年以上をかけて細部まで練り上げてきた。「担当部署全てが力を合わせて、初めて成り立つ全社的な仕組み」(中村氏)で容易にまねはできない。このオンリーワンの一気通貫システムが「ジャンボ」シリーズの強みだ。

そもそもなぜこんな面倒な仕組みが必要なのかといえば、「ジャンボ」シリーズの売り物である「パリパリ」の食感を最大限に生かすためだ。モナカ皮はアイス側から出る水分のせいで、湿気を吸ってしまうリスクをはらむ。モナカの内側にチョコレートをコーティングしてあるから、簡単にはふやけないが、在庫期間が長くなれば、当然、湿気を吸いやすくなる。パリパリ食感を保つには、製造から販売までの期間を縮めるのが上策。「鮮度マーケティング」が求められる理由だ。

 

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