日経SDGsフェス

持続可能経営が深化 「次の一手」模索広がる

SDGs 脱炭素 パネル討論

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国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)達成へ向け、国内でも産官学による取り組みが加速している。経営にSDGsを戦略的に取り入れる企業が増え、実践する業種や事業も多様化。より実効性の高い計画策定など「次の一手」を模索する動きが広がる。このほどオンラインで開催した日経SDGsフォーラムシンポジウムで登壇者から「脱炭素社会の実現は待ったなし」との声が相次いだ。

[パネルディスカッション]

気候変動、経営陣が関与し対応を

【パネリスト】
CDP Worldwide-Japan 理事 ディレクター 森沢充世氏
キリンホールディングス 執行役員CSV戦略部長 野村隆治氏
MS&ADインターリスク総研 リスクマネジメント第三部フェロー 原口 真氏
【モデレーター】
東京大学未来ビジョン研究センター 教授 高村ゆかり氏

高村 企業の気候変動リスクへの対応や情報開示はどこまで進んでいるのか。

野村 気候変動リスクの対応では、当社は品質の良い原料を継続的・持続的に調達するため環境問題への取り組みからスタートした。気候変動が自然資本にも影響を及ぼすことが分かってきて、現在は様々な施策を展開している。

また、どの程度の財務インパクトがあるか把握することも経営で重要だ。今はすべて情報をオープンにしているが、今後は自分たちの競争優位性や差別化も考慮した上で開示の範囲を考えながら積極開示に努めなければならない。その難しさは課題の一つといえる。

高村 取り組みで企業の課題はあるか。

原口 リスクを単体で見ているため、それがバリューチェーンの中で総合的なリスクに関わってくることに気づいていない企業が多いと感じる。

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)はガイダンスで「気候関連リスクを既存の全社的なリスクマネジメントプロセスに統合すべきだ」としているが、TCFDの調査結果によると75%の企業は全社的なリスクマネジメントの仕組みに取り込めていない。

全社的なリスクマネジメントに統合する際、ESGに関わる事業部門の全社員がリスクを理解しておくのが理想的だ。以前からWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)などが指摘しているが、サステナビリティー部門と財務部門の考えるリスクとマテリアリティー(重要課題)が一致していない。この〝ズレ〟をどうすり合わせていくのかが重要だ。

こういった課題の解決にはトップマネジメントのサポートが必須であり、最も重要な成功要因だとTCFDは強調している。日本企業にとってはハードルが高いが、これを超えなければESGで会社を強くすることはできない。

高村 投資家もその点に着目しているのでは。

森沢 企業の環境対策を評価する英非営利団体CDPの取り組みは、財務と合わせて気候変動にどう取り組んでいるのかを開示してもらうのが発端だ。近年は、開示を進めている企業は取締役、社長などどのレベルまで関わっているのかという質問項目があり、経営陣が積極的に関与しなければCDPで良いスコアを取ることはできない。

オンラインで行われた「CDP 2020 Aリスト企業アワード」ではキリングループをはじめ、CDPの各部門で最高評価となるAリストに選定された50社超の日本企業のトップが自社の取り組みを語った。

高村 経営層と共に取り組みを進める秘訣はあるか。 

野村 CSV(共有価値創造)ガバナンスの体制を築いている。キリンホールディングスの役員と主要事業会社の社長をメンバーにしたグループCSV委員会を毎年開催しており、会議の内容を取締役会に上げて決定する。

一方で経営理念からマテリアリティーを特定し、CSVパーパスからKPI(重要業績評価指標)を設定したコミットメントに落とし込み、役員や組織長、事業会社とも共有する。そこで決めたことがグループ全体に行き渡る仕組みをつくり、PDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルを回していくことが重要だ。

我々は持続的に社会的価値と経済的価値の両立を達成するために中・長期と短期のトレードオンの実現を考えていく必要がある。

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