サバイバル経営Q&A

従業員がメンタル不調で休職 事業継続に必要な対処法は サバイバル経営Q&A 辻・本郷社会保険労務士法人 田中宏二氏

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SDGs(持続可能な開発目標)にデジタルトランスフォーメーション(DX)……。ビジネスの現場には次々課題が降ってくる。あなたの職場は持続可能ですか。今回は若手社員がメンタルの不調を理由に相次ぎ休職し、対応に悩む経営者に対して、特定社会保険労務士の田中宏二氏が助言します。

介護施設を運営する社会福祉法人を経営しています。今年に入ってメンタル面の不調を訴える若手の従業員が目立っています。産業医から休ませるように助言を受けましたが、2、3人休めば人手が足りなくなり、必要なサービスを提供できなくなります。新規採用も難しく即戦力は期待できません。必要な対処方法を教えてください。

いきなり「解雇」は困難 まずは療養

メンタル不調者に対して産業医から休職するようアドバイスがあった場合は、仕事を続けてもらうことはせず、療養に入っていただくのが良いでしょう。代替要員を確保しなければならないデメリットはありますが、メンタル不調の状態で仕事を続けること(プレゼンティーズム)による生産性の低下、ミスの発生、業務の中断、他の従業員への悪影響などのデメリットのほうが、損失は大きくなる可能性があります。

症状が悪化して最悪の場合、命の危険にさらされることもあります。社員が死亡したら、会社側が使用者責任を問われます。遺族から損害賠償を請求されたり、使用者責任を問われたりすれば社会的信用は失墜するでしょう。就業規則に基づいて休職期間を決め、当該従業員に休職期間中の服務(治療専念義務、定期報告、社会保険料等の負担等)について十分説明したうえで休職に入っていただくのが賢明でしょう。

この際、復職要件は重要なポイントとなります。休職期間満了によって退職とする規定がある場合、病気が完治しない状態でも「本人が働きたい」との意思を表示したら、担当医師は「労務可能」の診断書を作成する場合があります。会社はその従業員の業務内容を照らし合わせて本当に労務可能か復職の可否を判断することになります。復職した場合に休職前と同じ労働条件で働ければ良いのですが、労働時間を短縮したり、業務内容を変更したりする場合は、労働条件や賃金の見直しが必要となります。

経営者からは「辞めさせたい」という相談が多いのも事実です。ただ、基本的にはいきなり解雇するのは難しいと考えます。会社として雇用継続のための努力義務を果たさないと不当解雇になる可能性が高く、そもそも人手が足りない企業で辞めさせるのは矛盾します。大企業であれば配置転換するとか職種を変えるなどの方法もあります。会社が十分に努力義務を果たし、それでも本人が働けない状況となった段階で退職勧奨などを検討することになります。

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