ヒットの軌跡

モンベル、有料会員100万人の引力 地域と持ち合う志 モンベル(下)

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「mont-bell」ブランドで知られる、アウトドア用品大手のモンベル(大阪市)はユーザーの裾野が広い。100万人を超える有料会員は共感度の高さを裏付ける。価格設定への納得感や、ユーザー目線で作り込まれた製品のクオリティー、創業者から受け継がれるヒューマンな「志」などがファンを呼び込む。アウトドア好きの輪を広げるモンベルの「引力」に迫った。<前回の記事「モンベル、全社員がアウトドア好きの強さ ウソのない商道歩む」>

国内で人口が100万人を超えているのは10市余りしかない。この大台をモンベルの会員制度「モンベルクラブ」は達成済みだ。無料ではない。入会金は不要だが、年会費は1500円(税込み)。スーパーや流通系サービスではポイントサービスを売り物にした無料会員制度が珍しくない中、年会費が有料の場合、相応のメリットが見込めないと、これだけの会員は集まらない。

購入金額に応じたポイント付与は一般的な会員特典だが、モンベルクラブの場合、「年4回発行の会報誌『OUTWARD』の人気が高い」と、常務取締役広報本部長の竹山史朗氏は明かす。写真家・岩合光昭氏の表紙からして、ありきたりの会員誌とは格が違う。魅力的な目的地の案内やアウトドアでの過ごし方、地球環境との向き合い方など中身は濃い。

モンベル製品の紹介も載せているが、ありがちな宣伝臭さは遠ざけている。創業者・辰野勇会長の対談をはじめ、モンベルの「思想」を伝える熱量が高いのも同誌の持ち味だ。自然と触れ合う意義を深く考察している点で、会員との結びつきを強める役割も担っている。

会員特典として毎年春・秋に開催している会員限定のイベントが「モンベルクラブ フレンドフェア」だ。著名人や識者を招いてトークイベントを開くほか、「フレンドエリア」と呼ばれるアウトドアフィールドも紹介。アウトレット品の先行販売にも人気がある。アウトレット店は各地にあるが、通常店舗では季節ごとのセールをしないモンベル製品をアウトレット価格で買えるチャンスだ。

商品カタログが届くことや、購入頻度が高めの人にとっては配送料無料だけでも年会費の「元」が取れそうだ。会員カードを提示すれば、各地の山小屋やキャンプ場、クライミングジム、アウトドアスクールなどの提携施設で割引・優待が受けられる。優待サービスを受けられるフレンドエリア・フレンドショップは2000カ所を超えていて、アウトドア業界で長年の実績があるモンベルならでは。年会費に見合うリターンを得ようと、出かける頻度が上がるという心理的な効果も生んでいるようだ。

写真集や旅行記を読んで、仮想トラベルを味わうのも旅の楽しみ方。モンベル製品を好む「モンベラー」たちにとって、アウトドアでの次回プランを練ったり、未踏の地に思いをはせたりする上で、定期的に届く『OUTWARD』は格好の入り口となる。そうした読者ニーズに応えるよう、いわゆる会員誌とはレベルの異なる作り込みが施されている。

100万部を超えるアウトドア専門雑誌は世界最大規模ともいわれる。編集プロダクションに外注せず、自社の社員が企画・編集を手掛けているのも異例の取り組み。山岳会の会報誌を思わせる自前編集にも「自分たちがユーザーだから、欲しいものが分かる」(竹山氏)という「モンベル・マインド」がにじむ。

 

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